対象地での生物多様性保全や地方政府による土地利用管理改善への貢献可能性

5.3 対象地での生物多様性保全や地方政府による土地利用管理改善への貢献可能性

のようにQGISにのせるかについてのマニュアルを作成している。メキシコでも同 様の例がみられる。

2) 生物多様性保全等のREDD+プロジェクトのコベナフィットへの貢献

本FSでは、地上モニタリングにGPS機能付デジタルカメラを活用して位置情報と 写真データをで記録し、そのデータをQGISに取り込むことを行った。これにより プロジェクト活動であるカカオ栽培のエリアの農地の位置等の情報を把握するこ とができる。GPS とデジタルカメラを使用した地上モニタリングは操作が簡単な ため、高度な知識を持たない住民等の参加による地上モニタリングにも活用でき るものと思われる。本FSでトレーニングを行った際にも、GPS機能付カメラの使 用は村人でもできるものであった。この方法では、農地以外のモニタリングにも 活用できるため、既存のGISデータ等の地理情報との組み合わせで、REDD+プロ ジェクトによるコベナフィットのモニタリングにも活用できうるものである。

ゴロンタロ州開発企画庁（BAPPEDA）や県のBAPPEDAでは基本的な地理情報（土 壌、傾斜、河川、地形、土地利用、農業等）のGISデータを整備しており、これを もとに地上モニタリングと合わせて、REDD+による様々なコベナフィットを生み 出しうる可能性のある場所を検討できる。また、こうしたマッピングデータは森 林減少のドライバーと生物多様性や生態系サービスとが位置的にどのように関係 しているか、また、土地利用形態と生物多様性との位置的関係ついて明らかにす ることに役立てることができる。また、REDD+プロジェクトのセーフガードや環 境上の様々なコベナフィットで優先すべき側面が何であるかを検討することにも 活かせる。同様の可能性はタンザニアにおけるREDD＋セーフガードのモニタリン グでも地理情報の活用可能性について述べている¹³。図5.3-1はその一例で、天然 林及び保護区区域内の森林バイオマスの炭素蓄積量（茶色、緑色）と野生動物の コリドー（オレンジ色）をマッピングしており、野生動物の移動とこれらがどう 関連しているかの検討に役立ている例である。こうした地理情報とその他の関連 情報は、土地利用計画のモニタリング評価や各セクターの計画策定プロセスでの 意思決定に役立てられるものであり、REDD+のセーフガードのモニタリング計画 においてもモニタリング指標の検討に活かすことができる。

13 “Using spatial information to support decisions on safeguards and multiple benefits for REDD+ in

図 5.3-1：タンザニアにおける主要野生動物移動コリドーと森林バイオマスの炭素 蓄積量のマップ（出所：タンザニア・天然資源観光省林業局）

【マダガスカル】

マダガスカルは約13百万haの森林面積を有し、年間の森林消失面積（減少率）は、

約6万ha（0.45%）である（FAO,2010）。ただし、1990から2000年の森林減少

率は8.6%にのぼり、原生林は国土の15%まで減少した（Haper et al.,2007）。希少 価値のある樹種はすでに1970年代以前に伐採されているため、現在の森林伐採の 主な原因は、農地転換と焼畑による森林伐採である。また、マダガスカルは生物多 様性のホットスポットとされ、80%以上が固有種と言われている。そのため、森林 伐採を食い止めることは生物多様性保全につながるため、他の地域に比べREDD+

のコベネフィット効果は大きい。

森林伐採の主なドライバーである焼畑は、“Tavy”や“Hatsake”と呼ばれる小規 模移動式焼畑である。森林は 100~数 100m程度の範囲を伐採し、陸稲とトウモロ コシを混ぜて植える。収穫後は二次林が生育するまで休耕地としておき、翌年は周 囲の森林を新たに伐採する。近年、このサイクルが短くなり土地の栄養分が不足し ている。そのため作物が十分育たない状態になっている。

近年、マダガスカル政府は、森林減少の状況を改善するため、保全区を1.7百万ha から6百万haに拡大し、国土の10%を保全する考えを示した。また、Wendland et

al.(2009)は生物多様性保全のための資金調達のツールとして PES(Payments for

Ecosystem Services)が有効であるとしている。

図5.3-2：焼畑で伐採したあとの様子（概ね100-200mの範囲を伐採）

図5.3-3：Landsat-8画像上の焼畑の規模。緑色が伐採された個所（幅200m以下）