• 検索結果がありません。

1.「しらけ」の中核的因子を,寄与率,出現率,因子構造より検討した.その結果,「課 題の難しさ」「楽しさの未体験」「あきらめ」を「しらけ」生起の中核的因子であると判

断した.

2.「しらけ」の中核的因子であると判断した「課題の難しさ」「楽しさの未体験」「あき らめ」と児童の「しらけ」のレベルとの関連を検討した.その結果,3つの中核的因子が

「しらけ」と直結していた.

.40一

第4章 「課題の難しさ」「楽しさの未体験」「あきらめ」因子に     影響を及ぼす下位要因の検討

竪臼目的

 「しらけ」の中核的因子である「課題の難しさ」「楽しさの未体験」「あきらめ」に影 響を及ぼす下位要因についての関連性について検討することを目的とした.

 本研究の具体的検討内容は次に示す5点とした.

 1.3つの中核的因子と学習意欲の関連性

 2.3つの中核的因子と学習意欲,目標設定の関連性

 3.3つの中核的因子と学習意欲,目標設定,感動体験の関連性  4.3つの中核的因子と学習意欲,目標設定,自律的な態度の関連性  5.3つの中核的因子と学習意欲 目標設定,社会的な態度の関連性  上記のことを検討する理由については以下に示したとおりであった.

 第1に,学習意欲との関連性について,本研究では「やる気」「有能感」を広義に「学 習意欲」ととらえることにした.この「やる気」は,達成動機づけ理論に基盤を置き,外 発的動機づけの要因を含めた概念であった.達成動機づけ理論は1960年代にマックレラ

ンドらによって研究がはじめられ,達成動機づけを①卓越基準を設定し,これに挑むこと.

②独自なやり方で達成しようとすること.③長期間かかる達成を期すること.と定義づけ た.その後多くの研究者によってこの理論が確立され発展した14)32)56).一方,この達 成動機づけを支える要因としてとらえられる概念として「有能感」がある.ホワイト71)

は,この概念を「コンビテンス(competence)」と表現し,「有機体が,その環境の中で効 果的に相互作用する能力」と定義づけた.バーター13)や桜井48)は,具体的な有能感の概 念として「有能さの認知」「自己決定感」「他者受容感」の3つを提示した.そして,岡 澤ら44)は,桜井の報告を参考にして体育科の学習における児童の有能感を「身体有能さ の認知」「統制感」「受容感」の3つに規定し,体育科の学習において児童が自ら積極的 に参加するために自己決定する能力としての「有能感」の重要性を論じた45).

 高野64)は,一般に「しらけ」を表している三無主義(無気力・無関心・無感動)とい

.41一

う言葉について,「三無主義の本質は無気力である.(中略)気力の欠如が無関心や無感 動を誘発することは理解にかたくないであろう.」と述べた.これは,「しらけ」が児童 の「気力」いわば「やる気」に代表される「学習意欲」と密接な関係があることを示唆し ているものであった.本研究では,外発的動機づけを含めた達成道動機づけを測る尺度と

して千駄の「やる気」尺度53)を用いた.さらに,「有能感」を測る尺度として二二らの

「有能感」尺度44)を用いた.これらの尺度を用いて3つの中核的因子との関連性を検討

した。

 第2に,学習時に児童の設定する目標と「しらけ」に関わる先行研究を探った16)20)41).

中谷41)は,学習活動において児童の設定する目標が学習に対する意欲や関心大きく影響 を及ぼしていると報告した.また,高橋63)は,体育科のよい授業の条件の1つに「学習 目標が明確であること」をあげた.これは,児童が授業において教師から提示された課題 を租借し,適切な目標が設定できることの重要性を述べたものであった.もし,「しらけ」

が学習意欲に影響を受けているならば,「しらけ」は児童の設定する目標からも影響を受 けているはずであると考えた.そこで,児童の設定する目標と「しらけ」「学習意欲」の 関連性を検討した.

 第3に,児童の学習における感動体験や成功体験と「しらけ」に関する知見を探ってみ た.すると児童の学校生活において,学習中の感動体験や成功経験が,児童の成長発達に

とって重要であり,学習の際の意欲喚起に必須のものであると述べられた論説は数多い26)

0)64).児童の学習場面で,北尾26)は「『わかった』という体験は快感を伴うもので意欲 喚起の前提条件である.」と述べ,スポーツ場面で,千駄54)は,「初心者には,多くの成 功体験が必要である」と述べた.つまり,児童にとって,一番大切なのは「自分ができる」

という実感であり,感動体験や成功経験によって得られるものであると推察した.したが って感動体験が少なければ,学習に対する意欲は喚起されないであろうと考えた.また前 章において,「しらけ」と感動体験の量に関連性があることを予想した.そこで,児童の 感動体験の量と「しらけ」の関連性を「学習意欲」「目標設定」と関わらせて検討した.

 第4に,児童のふだんの生活態度に関わる要因を探ろうと試みた.1つは,自律的な態 度に関することがらであり,もう1つは社会的な態度に関することがらであると考えた.

石井19)は,自律的な態度を学習意欲の前提条件にあげ,学習する際に自己統制できる力 の必要性を論じている.また,辰野69)は学習意欲の内容として「人にいわれなくても自 分から進んでする」自発性と「人に頼らず自分のことは自分で解決する」自主性をあげた.

      一42一

もし「しらけ」が学習意欲との間に何らかの関連性があるならば,これらの態度が学習意 欲に影響を与え,「しらけ」が起こっていると予想した.また,学校生活においては,児 童や教師との間の相互作用によって児童が成長発達を遂げていくものとすれば,その発達 課題としての社会的な態度との関連性も見逃せないものであると考えた.玉瀬67)は,社 会的なルールや決まりを守る児童を育てるためには,自律的な態度の育成をはかるべきで あると述べ,自律的な態度と社会的の態度の関連性を示唆した.そこで自律的な態度及び 社会的な態度と「しらけ」の関連性を,学習意欲と目標設定と関連させて検討した.

第2節方法

1群の設定

 (1)中核的因子の因子得点の高・中・低群,高・低群の設定

 第2章で抽出した「課題の難しさ」「楽しさの未体験」「あきらめ」の3因子につい てその因子の得点の合計を算出し,その合計点の平均得点を算出した.続いて平均得 点の平均値,標準偏差を算出し,M±1/2SDで区切って因子得点の高群・中群・低群 を設定した。分析では,高群一中群一低群の3群を比較した場合と高群一低群の2群 を比較する場合とした.

(2)目標設定

 児童の目標設定について,体育の学習をするときにどのような目標をたてるのかを たずねた.「すぐできるめあて」「練習すればできそうなめあて」「友だちと同じめあ て」「めあてはたてない」の4つのうちから1つを選ばせた.このうち,「練習すれば できそうなめあて」を「適切な目標設定」群とし,「すぐできるめあて」「友だちと同

じめあて」「めあてはたてない」を「不適切な目標設定」群とした.

(3)感動体験

 感動体験については,児童に「学習中にできなかったことができるようになって「や った」と感じたり,「わかった」と思うようなことがありますかとたずね,「よくある」

「ときどきある」「ない」の3っのうちから1っを選ばせた.感動体験が「ない」と回

一43一

答した児童が少なかったので,「ない」と回答した児童と「ときどきある」と回答し た児童を合わせて「感動体験少群」とし,「よくある」と回答した児童を「感動体験 多群」と設定した.

(4)「しらけ」経験

 「しらけ」行動の経験については,児童に「体育の学習をしているとき学習とはち がうこと(例えば,『友だちとふざけたり』『土いじり』など)をしたことがあります か」とたずね,「よくある」「ときどきある」「ない」の3っのうちから1つを選ばせ,

「しらけ行動」のレベルとした.群の設定については次の3つを設定した.

①「しらけ行動よくあり」群と「しらけ行動なし」群の2群を設定し比較した.

②「しらけ行動」のレベルの「よくあり」群と「ときどきあり」群と「なし」群の3  群を設定し比較した.

③「よくある」群と「ときどきある」群を合わせて「しらけ行動」経験あり群とし「な  い」群を「しらけ行動」経験なし群として比較した.

(5)自律的な態度

 児童の自律的な態度をとらえる観点として「身辺の自立ができている」「自己抑制 力」「意思表示ができる」「責任ある行動ができる」を設定した.これらの4つの観点 を表す項目は次の4つを用いた.

   身のまわりのことは自分でできます.(身辺の自立)

   欲しいものがあっても我慢しようと思えばできます.(自己抑制力)

   自分の意見を言うべきときにははっきり言うことができます.(意思表示)

   面倒だと思うことでも自分の役割ならきちんとできます.(責任ある行動)

これらの項目について,それぞれ次のような得点を与えた.

1.いつもできない・・・・・・・・・・…

2.どちらかといえばできない・・・・・…

3.どちらかといえばできる・・・・・・…

4.いつもできる・・・・・…   ・●・ ●

1点 2点 3点 4点

.44.

関連したドキュメント