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第1項 「しらけ」の中核的因子の抽出

(1)寄与率による主要因子の検討

  15分類において行った因子分析で得た各因子の寄与率の総和を求め,平均値と  標準偏差を算出した.そして,M+1/2SD以上の値を示した因子を主要因子とした.

(2)出現率による主要因子の検討

 出現率は,因子の出現した回数/15分類×100で表し,9因子の出現率の平均値及 び標準偏差を算出し,M+1/2SD以上の値を示した因子を主要因子とした.

(3)因子構造による主要因子の検討

 15分類の因子分析で得た各因子を構成する項目の合計点を算出し,その平均値(以 後因子の得点)を求め,それぞれの因子の得点を従属変数,独立変数とする増減法 による重回帰分析を適用した.重回帰式で得た標準偏回帰係数のもっとも大きい値 を用いて構造化を行った.因子構造における主要因子は,他の因子に影響を与え中 心的な位置にある因子とした.標準偏回帰係数の有意性の検定は,F検定を用いた.

データの処理は,エクセル統計97のプログラムを使用した.「しらけ」の中核的因 子は,これらの3つの観点から総合的に検討した.

一32一

第2項  「しらけ」と中核的因子の関連性の検討

(1)群の設定

 寄与率,抽出率,因子構造において検討して得た3つの中核的因子が「しらけ」と関 連しているかどうかを検討するために,中核的因子についてそれぞれの因子の得点を算 出し,その合計点の平均得点を算出した.続いて平均得点の平均値,標準偏差を算出し,M

±1/2SDによって中核的因子の得点の高群・中群・低群を設定した.分析は,高群一 中群一低目の3群を比較した場合と高群一低群の2群を比較する場合とした.

 「しらけ行動」のレベルとして「よくある」「ときどきある」「ない」の3群を設定

した.

(2)分析方法

 1.認識の程度の違いによる3群と「しらけ行動」のレベルの違いの3群がら3×3 の集計表を作成し,κ2検定を行った.

2.「しらけ行動」のレベルの違いを群問とし,因子の得点の合計点の平均点を群内  として1要因分散分析21)を行った.さらに,主効果が有意になった場合はその誤  差項の値を用いて多重比較の検定66)を行った.

第3節結果

第1項 「しらけ」の中核的因子の検討結果

(1)寄与率による主要因子の検討

  15分類の因子分析で得た各因子に対する寄与率の平均値を算出し,さらに9因 子の平均値と標準偏差を算出した.そして,M+1/2SD以上の値を示した因子は,「課 題の難しさ」「楽しさの未体験」であった.

一33一

(2)出現率による主要因子の検討

  出現率は,因子の出現した回数/15分類×100で表し,9因子の出現率の平均値 及び標準偏差を算出し,M+1/2SD以上の値を示した因子は,「課題の難しさ」「楽  しさの未体験」「人間関係の不成立」であった.

寄与率と出現率の2条件において共通して高い値を示したものは「課題の難しさ」

と「楽しさの未体験」の因子であった.(1),(2)の結果は表3−1に示した.

表3−1 下位要因の「しらけ」要因の寄与率と出現率(%)

因子名 寄与率 出現率

 課題の難しさ  楽しさの未体験

人間関係の不成立   自分勝手

 まとまらない集団    未達成

学習内容の理解不足  存在感のなさ   あきらめ

8.3*

8.3*

6.9 7」

6.3 5.3 5.6 7.0

5.1

100*

80*

100*

27 47 27 27

6 6

 M

1/2SD M+1/2SD

6.7 0.6 7.3

47 19 66

(3)因子構造による主要因子の検討

 15分類ごとの因子分析で得た各因子の得点を従属変数,独立変数とする増減法 による重回帰分析を適用した.重回帰式で得た標準偏回帰係数の最も大きな値を 示した因子を用いて構造化を行った.そして,因子構造における主要因子は,因 子構造の中心的位置を占めている因子から検討した.

 全被験者の因子構造を図3−1に示した.他の分類による因子の構造は,巻末の 資料に示した.

      数値は標準偏回帰係数を示す

         0.393**      0.333**

 課題の難しさ     楽しさの未体験    人間関係の不成立

  図3−1 全被験者(Nニ969)の因子構造    **P<.01        −34一

 図3−1の全点験者における「しらけ」要因の構造では,「課題の難しさ」と「楽し さの未体験」が互いに影響しあい,「楽しさの未体験」が「人間関係の不成立」に影 響を与えていた.このことから「課題の難しさ」と「楽しさの未体験」の因子が主要 因子となっていると判断した.

 「しらけ行動」がよくある被験者を対象にした因子分析によって抽出した因子によ る因子構造を図3−2に,「しらけ行動」がない被験者を対象にした因子分析によって 抽出した因子による因子構造を図3−3に示した.

0.332** 0.354**

学習内容の理解不足

あきらめ ◆ 自分勝手

0.295**

課題の難しさ

0.212*

まとまらない集団

α242**

人間関係の不成立

図3−2 「しらけ行動」のよくある被験者(N=136)の因子構造 **p<.01,*p<.05

α313**

課題の難しさ

人間関係の不成立

0284** 0276**

楽しさの未体験 まとまらない集団

図3−3 「しらけ行動」のない被験者(N=209)の因子構造  **p<.01

 「しらけ行動のよくある被験者と「しらけ行動」のない被験者の因子構造のちが いはその中心となっている因子であった.「しらけ行動」のよくある被験者では,「あ きらめ」が中心となっていた.「しらけ」の中核的因子の検討を行う上で「しらけ行 動」がよくある被験者の因子分析結果は,「しらけ」因子としてもっとも信頼できる 因子であるために重要視しなければならないと考えた.そこで,「あきらめ」因子を 主要因子とした.その他の12分類において因子分析を行いその因子構造をみると,「課 題の難しさ」が中心となっているものが一番多かった.そこで,因子構造による主要 因子を「課題の難iしさ」「あきらめ」とした.

 寄与率,出現率及び因子構造で主要因子になったものから,「課題の難しさ」「楽       .35一

しさの未体験」「あきらめ」を中核的因子とした.

第2項  「しらけ」と中核的因子の関連性の検討

 3つの中核的因子の因子得点の高さが「しらけ」を引き起こすことにつながってい るのかを確かめるためにその関連性について検討した.

1.3つの中核的因子(「課題の難しさ」「楽しさの未体験」「あきらめ」)の程度と「し らけ行動」のレベルについての3×3の集計結果を表3−2から表3−4に示した.

表3−2 「課題の難しさ」と「しらけ行動」のレベル  (単位:人数)

課題の難しさ 「しらけ行動」のレベル

なし ときどき よくあり

高群(N=280)

?Q(N=397)

瘡Q(N=292)

43 V5 W6

173 Q72 P79

59 T0 Q7

高群一中群 λr2=8.71,p<.05,中群一低群

島君羊一{氏君羊  λr2=22.02, p<.01,df=2.

λゴ2=11。30,p<.01,

表3−3 「楽しさの未体験」と「しらけ行動」のレベル (単位:人数)

楽しさの未体験 「しらけ行動」のレベル

なし ときどき よくあり

高群(N=367)

?Q(N=242)

瘡Q(膳360)

50 S3 P16

238 P71 Q15

79 Q8 Q9

高群一中群 λ12ニ9.53,p<.01,中払一回忌 高群一低群 λ12=50.53,p<.01,df=2.

λr2=23.06, p<.01,

一36一

表3−4 「あきらめ」と「しらけ行動」のレベル (単位:人数)

あきらめ 「しらけ行動」のレベル

なし ときどき よくあり

高群(N=346)

?Q(N=359)

瘡Q(Nニ264)

57 V7 V5

219 Q49 P56

70 R3 R3

高群一中群 λ12=14.40,p<.01,中二一二二 高群一低群 λr2=17.82, p<.01,df=2.

λr2=8.90, p<.05,

 表3−2から,「課題の難しさ」の程度が高くなるにしたがって,「しらけ行動」が有 意に多くなった.このことは,児童が課題に対して難しいと感じるほど,「しらけ行 動」をよく起こしていることを表している.

 表3−3から「楽しさの未体験」の程度が高くなるにしたがって,「しらけ行動」が有 意に多くなった.このことは,児童が楽しさを体験できていないと感じるほど,「し

らけ行動」をよく起こしていることを表している.

 表3−4から「あきらめ」の程度が高くなるにしたがって,「しらけ行動」が有意に多 くなった.このことは,児童が「あきらめ」を強く感じるほど,「しらけ行動」を起 こすことを表している。

2.「しらけ行動」のレベル別の因子得点の平均点及び標準偏差,1要因分散分析のF 値,多重比較の結果を表3−5に示した.

表3−5 「しらけ行動」のレベルと因子得点   しらけ行動

?j的因子

なし m=209

ときどき

@Nニ624

よくある

@N=136

1要因

ェ散分析 多重比較

M SD M SD M SD

F値 (LSD)

課題の難しさ yしさの未体験

@あきらめ

2.3(0.65)

Q.2(0.62)

Q.2(0.63)

2.4(0.61)

Q.5(0.59)

Q.3(0.60)

2.6(0.64)

Q.8(0.67)

Q.5(0.72)

11.54**

R9.19**

P0.26**

なしくときどきくよくある ネしくときどきくよくある ネしくときどきくよくある

**P<.01

一37一

 表3−5から,「しらけ行動」のレベルが高くなるにしたがって,3つの中核的因子の 得点が有意に高くなった.「しらけ行動」のレベルと中核的因子の得点の間には正の相

関があることを表している.1,2の結果から3つの中核的因子「課題の難しさ」「楽し さの未体験」「あきらめ」が「しらけ行動」と密接に結びついていた.

第4節考察

 体育科の学習における「しらけ」の中核的因子は「課題の難しさ」「楽しさの未体験」

「あきらめ」であった.本章で求めた中核的因子について授業の構成要素の観点から考察

を加えた.

 「課題の難しさ」因子は,児童にとっては教師の提示する課題から適切な目標設定がし にくいことや,運動に対しての価値意識の低さから「できない」ととらえてしまうことに 起因するものであった.多角的な視野から15分類の因子分析の結果,「課題の難しさ」因 子の抽出率は100%でどの分類においても出現していたことは,児童の学習の中で教師の 提示する課題の難しさを感じていることを表すこの因子が「しらけ」の中核的因子である

ことを示すものであると考えた.北尾25)は,小学生の約17%が授業内容を理解できてい ないと報告し,その教師側の原因について,「教授内容の難しさ」「教授方法の不適切さ」

を挙げた.さらに,児童にとって授業がわからないことが不快感を抱かせ学習意欲を減退 させていると論じた.一方教師の立場に立つならば,児童の様々な個人的資質の違いから,1 つの課題に集約し提示することは極めて困難なことであると考えた.従ってできるだけ多

くの児童にあてはまるように配慮した課題は曖昧性を帯び,いかようにも解釈できる表現 になると推察した.例えば器械運動のマット運動で「自分が今できる技を練習しよう(め あて1)」「練習すればできそうな技に挑戦しよう(めあて2)」のような課題を提示した

ときに,児童が自分の力を正しく認識できていなければ適切な目標設定ができず練習する 技は難しすぎたり易しすぎたりしてしまうのではないかと考えた.本研究の結果は教師の 提示する課題の如何で児童が「しらけ」を起こすということから,教師は課題の内容を十 分吟味しなければならないことを示唆するものであった.

 「あきらめ」因子は,「しらけ行動」がよくあると答えた被験者の因子分析の第1因子 として抽出したものであった.そして,児童の不適切な目標設定から未達成に終わったり,

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