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補助動詞用法の授与動詞を含む構文の出現数の分析結果

第 4 章 日本語における授与動詞の多機能性

4.4 日本語の授与動詞における意味拡張に関する分析結果及び考察

4.4.1 補助動詞用法の授与動詞を含む構文の出現数の分析結果

コーパスから得た補助動詞用法の授与動詞のデータを、4.2、4.3 で述べた基準で構文に 分類した結果を表4-2に示す。

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4- 2 日本語の補助動詞用法の授与動詞を含む構文の使用頻度と割合

授与恩恵 構文

対象恩恵 構文

恩恵 構文

行為強調 構文

自然恩恵 構文

その他* 合計

テクレル 166 (0) **

33.2%

75 (3) 15%

169 (0) 33.8%

0 (0) 0%

87 (0) 17.4%

3 (0) 0.6%

500 100%

テアゲル 168 (1) 33.6%

153 (2) 30.6%

132 (0) 26.4%

19 (0) 3.8%

0 (0) 0%

28 (0) 5.6%

500 100%

テヤル 127 (9)

25.4%

184 (64) 36.8%

87 (13) 17.4%

97 (0) 19.4%

0 (0) 0%

5 (0) 1%

500 100%

(上段は度数、下段は%)

「その他」に属するものは「NP1がNP2に何でもしてくれる/あげる/やる」のよう

なその行為が特定できない実例であり、その行為の内容によって構文が変わる。

**( )内の数字は各構文の全ての件数の中で悪意を表す実例の数を示す。

表4-2から分かるように、動詞によってそれぞれの構文の使用頻度が異なる。この使用 頻度の異なりから、3つの授与動詞の拡張の方向が異なることが指摘できる。「~てくれる」

では、「恩恵構文」169 件 (33.8%)、「授与恩恵構文」166 件 (33.2%)、「自然恩恵構文」87 件 (17.4%)、「対象恩恵構文」75件 (15%) という順番で使用されている。「~てくれる」は、

恩恵に関わる用法のみ観察され、特に「~てあげる」と「~てやる」にない「自然恩恵構 文」も見られることから、恩恵に関わる用法への拡張が進んでいるということができる。

これに対し、「~てやる」は、「対象恩恵構文」と「行為強調構文」として用いられる割 合が3つの授与動詞の中で最も高く観察された。そのうち、「行為強調構文」は恩恵に関わ らない用法であり、「~てやる」の最も頻度の高い「対象恩恵構文」においても184件のう ち、64 件を不利益や危害を表す実例が占めている。このことから、「~てやる」は恩恵に 関わらない用法への拡張が進んでいることがわかる。

「~てあげる」では、「対象恩恵構文」が153件 (30.6%)、「行為強調構文」が19件 (3.8%) 観察された。このことから、「~てあげる」は、「~てやる」と同様に恩恵に関わらない用 法への拡張が見られるが、「授与恩恵構文」と「恩恵構文」の使用頻度は「~てやる」より 高いことから、「~てくれる」と「~てやる」の中間的な位置にあると考えられる。これら

123 の構文間の関連性に関しては4.4.2で述べる。

次に、表4-2を構文ごとに観察すると、各授与動詞の実例のうち「対象恩恵構文」が占 める割合を比べると、一番その割合が大きいのは「~てやる」であり、「恩恵構文」では「~

てくれる」であることが明らかになった。このように、授与動詞の実例のうち各構文が占 める割合の多寡が一定でないことから、この差が統計的にも有意なものであるかを検討す るためにカイ二乗検定を行った。なお、表4-2に示した生データの中で「行為強調構文」

と「自然恩恵構文」の生データには、度数が0のところがあるので、これら2つの構文は 検討対象から除外した26。また、「その他」についても、構文が行為の内容によって変わる ものであるため、検討対象から除外し、「授与恩恵構文」「対象恩恵構文」「恩恵構文」の3 つの構文についてのみ検定を行った。カイニ乗検定を行った結果、「授与恩恵構文」「対象 恩恵構文」「恩恵構文」の使用頻度は、「~てくれる」「~てあげる」「~てやる」間におい て1%水準で有意差が認められた (χ2 (4) = 77.842, p<.01) 。Cramer’s Vの連関係数の値は

0.176であり、補助動詞と構文の使用頻度の関連性はやや弱く関連していることが明らかに

なった 27。これにより、3つの構文の使用頻度は補助動詞によって統計的にも有意に異な ることが明らかになった。また、どのように有意差が出たことについて具体的に残差分析の 結果を以下の表4-3に示す。

26 カイ二乗検定の適用が不適切な場合には、代わりの手段として「フィッシャーの直接確率検定」を用い ることもある。今回のデータについても、R Programを利用し、「授与恩恵構文」「対象恩恵構文」「恩恵 構文」「行為強調構文」「自然恩恵構文」の5つの構文すべてについてフィッシャーの直接確率を求めよ うとしたが、データ量が大きすぎたため手元の環境ではエラーが出て処理が完了しなかった。そこで、本 研究では、カイ二乗検定が適用できる範囲に限定して統計処理を行った。

27 Cramer’s V は連関係数の一つである。この連関係数の値は0から1までの範囲で、値が大きいほど、変

数間の関連性が強いということになる。

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4- 3 日本語の補助動詞用法の授与動詞を含む構文の使用頻度

授与恩恵 構文

対象恩恵 構文

恩恵構文 合計

テクレル

166 40.48%

*

75 18.30%

**

169 41.22%

**

410 100%

テアゲル

168 37.09%

ns

153 33.77%

ns

132 29.14%

ns

453 100%

テヤル

127 31.91%

*

184 46.23%

**

87 21.86%

**

398 100%

χ2(4)= 77.842 、p <.01、Cramer's V = 0.176; *: = p<.05、**: = p<.01、

残差分析の結果、まず、「授与恩恵構文」をみると、「~てくれる」の使用頻度が 5%水 準で有意に多いのに対し、「~てやる」の使用頻度が 5% 水準で有意に少ないことが明ら かになった。すなわち、「授与恩恵構文」は、「~てくれる」で最も多用される一方、「~て やる」では使用が最も少ないといえる。次に、「対象恩恵構文」に関しては、「~てやる」

の使用頻度が 1% 水準で有意に多いのに対し、「~てくれる」の使用頻度が 1% 水準で有 意に少ない。これは「授与恩恵構文」との逆のパターンである。すなわち、「対象恩恵構文」

は、「~てやる」で最も多用される一方、「~てくれる」では使用が最も少ないといえる。

最後に、「恩恵構文」に関しては、「授与恩恵構文」と同様のパターンになり、「~てくれる」

の使用頻度が 1% 水準で有意に多いのに対し、「~てやる」の使用頻度が 1% 水準で有意 に少ない。すなわち、「恩恵構文」は、「~てくれる」で最も多用されるのに対し、「~てや る」では使用が最も少ないといえる。「~てあげる」では、どの構文でも有意差が認められ ないことから、「~てくれる」と「~てやる」の中間的な位置にあるということがいえる。

上述の結果から、「授与恩恵構文」「対象恩恵構文」「恩恵構文」は、補助動詞によって使 用頻度が統計的にも有意に異なることが明らかになった。また、観測度数に 0 のところが あることから検定の対象から除外した「自然恩恵構文」と「行為強調構文」についても、

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「自然恩恵構文」は、「~てくれる」でのみ観察されたのに対し、「行為強調構文」は、「~

てあげる」と「~てやる」でのみ観察された。つまり、「自然恩恵構文」と「行為強調構文」

も、補助動詞によって使用頻度が異なることが分かる。これらの使用実態がどのように授 与動詞の拡張に反映されているか、また、これらの構文間の関連性に関しては4.4.2で述べ る。