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第3節  蜜柑作とその他の経営部門との関係

第1項 土地の利用関係よりみたる蜜柑作  

調査地区における畑と水田の分化が主として用水関係に.よって規制され,また普通畑と果樹園とは,前老が農   家の自給食糧生産の為に比較的住居に近い平坦乃至綴傾斜地に残され,果樹園がより急傾斜地に.ある場合もある  

が,最近では水田の一都に菜園を設けるなど,宅地利用や果樹園の間作利用などと相まつて,普通畑を全くもた   ない農家も少くない 

また果樹園利用に.おいても土壌の性質とか,風当りなどによって,柿とか桃が一部に.植えられているものゝ,  

排水の良好な綾乃至急傾斜地はすべて満州蜜柑檻.よって利用されていること.は前述せる如くであり,このことは   蜜柑作が水稲その他の水田作と土地利用において一応非競合の関係に.あるといえよう(48)‖ また本地区における  

蜜柑園は主として一山林の関数による耕地の拡大 換言すれほ同地区虚家の経営耕地面槌規模拡大の形において造   成されたものであって,この点では普通畑作との競合も少いといえよう.もっとも近時における普通畑への蜜柑   儲の栽植はかなり顕著なものがあるが,これは本地区の普通畑利用においては収益性の高い作物が少く,近情の   蜜柑作の高い収益性乃至蜜柑フー・ムにのって小規模農家の普通畑利用をさえ圧倒しで樹園地化を促しているから  

であるなお代表的産地である静岡県庵原村における明治以後の変遷において,(1)製紙用の三種・照明月]の轟荏   栽培時代−>(2憐蚕・茶の時代→(3)茶時代→(4)蜜柑時代と特徴づけられているように,作物問の競合・代替の時代  

を経て,蜜柑園の拡大が山野の開墾と相まって才〕われた(49)ことゝ対比して興味がある 

なお,水田における水稲作及び麦作などは調査地区における主要な自給乃至商品作物として,蜜柑作と労働利   用その他の関係において密接な関連をもっているが故に,次にこの点について述べておこう 

ところで,調査農家における水田ほ,既に見たようにNo‖17農家の水田0.76反.,水田率14..7%を最低,  

No小3農家の6‖5反を最高とし,10戸平均3り54反,水田率40.1%となっているが,Noい20農家の如きは水田   面積3い91反ながら水田率84..2%を示し,農業経営としては水田主体経営となって:いることが注意されるべき   である 

次に調査農家における水田条件に.ついては,一毛作田は殆んどなく,また農地解放の行われた今日に、おいては  

小作地のある農家は調査農家中ただ1戸にすぎない.また水利条件に・おいては殆んど安定をみているが,水田に   おける耕作地の分散と圃場の細分状況を示す水偶の団地数と枚数においては,10戸平均4..1団地及び10‖1枚,  

従って,1団地当り乎均2.5放であり,また11瑚地及び1枚当りの面級では,それぞれ0り∂6反と0‖35反であ   って,水田は蜜柑園よりも一層耕地の分散が著しく,また1団地当面槌及び1枚当面積が′j\さくなっている・・し   かし住宅からの距離は127mであって,住宅の近くに所在していることを示している.これは水田が川の流域部   の平坦乃至緩傾斜地にあり,集落地域と■一・致しているからであるが,反面水田は長年にわたる所有関係の変遷か  

ら所有地の分散を甚しくすると共に湛水耕作の必要上耕土の均乎なることを要求する水田でほ,極めてゆるい綬   傾斜地に設けられる場合にも畑に比して造かに多くの睦によって仕切り細分することを要するので,地形が敏雄   で傾斜が急な処に設けられる水田ほど1枚当りの面掛ま小さくならざるを得ないことに・なる.この点蜜柑栽培地   区の中でも,谷が狭く傾斜の急な内野々川に沿う内野々部落の水田を耕作するNo.3やNo.14の水田が,前者   では5団地23枚,団地当り面積1.3反,1枚当り0.28反,住宅からの平均距離110m,また後者では団地数9,  

枚数16放でそれぞれの面積か0.49反と0..28反,および平均距離192mとなっていて,傾斜度の比較的経い井関   

−80一   

地区に展開する水田を主として耕作する調査鹿家に.比して水田枚数が多く水田1枚当り面績が小さいことを示   し,地形によって水田が細分化される事情が競えるであろう,なお井関地区でも,調査農家中戦前唯一の縮小作   農たりし(小作耕地率100%)No.20の水田が3団姐16放で1団地当り面桜1い3反,1枚当り面積0.24反,  

平均拒離153mと埠較的悪条件に・あり,内野々地区の小作兼眉作農家たりし(小作耕地率72%)No・14の水田  

条件が不良であることゝ共に注目されるところである 

次に水田の利用状況をみるとNo.3が水田に.煙草(黄色種)な作り,(.29年皮1.3反,30年皮1..6反)さらに  29年皮の煙草跡作に大豆0・5反を栽培していること,及びNo小1,No・・14,No・15,No・20農家などが睦畔や   水田の一部を利用して,夏作に壁苧,甘簾,冬作に蚕豆,菜種,玉葱,甘藍などを栽培しているが,他は総べて   夏作は水稲,冬作は麦となっており,大部分は米麦二毛作利用ということができる.   

なお水田における水稲の反収および稲作労働10時間当り収監をみると第54衷の如くであって,水田率が高く,  

こ.れに.重点をおくとみられるNo.20を始め,No.8,No一.11,No.15農家など,蜜柑作部門の生産性に.おいて,  

比較的劣った農家において逆に稲作における生産性が高いことが注目されよう〃 もっともNoい8やNo.11農家   では高い反収を挙げる為に.多くの労働が投下されており,従って労働生産性では平均以下となっている 

第54表 調査農家における水稲の生産性  

第2項 土地利用手段の利用共同関係からみたる蜜柑作  

次に調査農家の蜜柑作が,経営における(1)労働力や(2)農徴兵,(3)肥料その他の資本財等の所謂土地利用   手段の利用について,稲作や麦作その他の経営部門といかなる関係にあるかをみよう 

1 労働力利用共同関係よりみたる蜜柑作  

(1)家族労働の部門別配分   

まず各調査農家が果樹作(その殆んど総べてが蜜柑作である)に投じて−いる労働の鼠とその割合を他の経営部   門と.の関係においてみると(滞55衷),調査農家10戸の昭和29年皮および30年皮の2ケ年平均に.おける果樹作労   働は2,157時間(=215,7日)で農業労働投入鼠6,234時間(ゴ623..4日)の34..6%,また開墾労働や農外労働を  含めた総投下労働7,146時間(=714.6日)の30.2%に.当っており,最大の労働投入部門となっていることが   知られる.もとより果樹作労働の投入塩とその割合は,果樹作面積やその樹令構成の関夙 蜜柑作の管理集約度   とか労働手段の関係や経営組織の在り方などによって当然異るものである.従って個別農家についてみると,蜜   柑作部門の規模が大きく蜜柑園率の高い農家,即ちNo 1,No.3,No.7,No..11,No.17においてをま,果樹作   労働割合が10戸平均値を上廻り他の部門に比して著しく大きく,蜜柑作要点農家であることを示すのに対し,  

蜜柑作面積が小さく蜜柑園率の小さい農家,即ちNo.14(20〃6%)No.15(26い4%)Noい19(18.9%),No.20  

(17..7%)は平均値よりも低く,むしろ果樹作以外の部門への労働投下割合が大きくなっている..この点,経営  

規模において1町〜1.5町層にあり果樹園率に.おいて62,.2%とかなり高い比率を示すにかゝわらず,かなりの規   模の養畜及び読莱栽培を行い,調査農家中最も多角的経営組織をとるNo.8では,労働が各部門に配分されて,果   樹作部門,特に蜜柑作部門への労働投入割合が低くなっており,また煙草作をとり入れているNo.3では煙草作   労働に1,617時間(小計の17り6%)が投入され,養畜規模が比較的大きいNo.19では全体の25.7%に当る   

ー81−  

第55表 調査農家の年次別部門別労働投入時間とその割合  

1,019時間が沓掛こ投入されており,それぞれ経営組織の特徴を示している.   

なおこれと関連して農家の所得的総労働中にしめる農外労働の割合をみると10戸平均では657時間で総労働時   間の9・2%にすぎないが,経営規模1町未溝の農家,特にNoり17の1,897時間(総計33.6%)No.20の1,536   時間(総計の32・7%)は特に大きく,さらにNo,.14,恥15なども平均を上廻っており,経営規模が小さく柑   橘園面積の小さい農家では労働を農業外に投入する割合が高く,反対に経営規模が大きく柑橘園割合の高い農家  

ほど専業皮が高くなっていることが知られるであろう‖ もっともNo.7の如き規模が大きく,柑橘園率が高いに  

も拘わらず,29年度には848時間(総計労働の10一8%)の農外労働がみられ,またNoい3では昭和30年皮に   1,660時間(17・・1%)の罠外労働がみられるが,前者は「儲け山」に伴う兼光男働であり,後老は母屋の改築に   伴う労傲であって臨時的なものにすぎない..なおNo.19が経営規模が小さいにも拘わらず労働構成が小さい上   に,養畜部門の増強と開塾を行い全く農外労働を行わず完全な専業農家の姿を示していることは注目に値する.