• 検索結果がありません。

蓮池小学校における箏を使った授業実践取材

第2章  教育現場における箏を使った授業実践例

第2節  蓮池小学校における箏を使った授業実践取材

 2.《お江戸詰本橋》(4年生)について

 4年生は3クラスあり、1クラスは約40人である。元気のいい学年で、歌声 も大きく高音がよく出る。《お江戸日本橋》の大原教諭によるアレンジは、全体 が大きく「序の部」、「破の部」、「急の部」の3つの楽章に分けられ、「序の部」

は歌と箏を中心にした合奏、「破の部」は箏を中心にした合奏にケチャ(インド ネシア、バリ島のポリリズム合唱)を組み合わせた楽章、「急の部」は箏を中心 にした合奏にケチャと歌舞伎嚥子を組み合わせた楽章となっている。最後は合 奏とケチャと歌舞伎灘子が一体となってリズミカルかつにぎやかにクライマッ

クスを迎える。

〔写真1〕      〔譜例22〕は箏の調弦であ

り、〔譜例23〕は合奏譜で、箏・

締太鼓・長胴太鼓・チャンチキ・

木琴・鉄琴・グロッケン・ソプ ラノリコーダー・電子オルガ ン・ジャンベなどが使用されて いる。〔写真1〕中央に吊るされ ている楽器がジャンベで、ギニ アやマリなど西アフリカの伝統 的な打楽器である。両足で挟んで演奏し、皮の真ん中を手の平でたたくと低い ベース音、へりを指だけでたたくと柔らかい音、スナップを利かせて指先で打 つと高音が出る。たたき初めから音が出るまでに2ヶ月かかるといわれ、手も 痛くなるので、子供たちは細擾を使っている。小鼓の音は、カワイの学校用オ ルガンSD4000によるサンプリング音によって表現している。箏は8人の子供 たちが担当しており、昼休みにパート練習を行っていた。親指と中指に箏爪を はめ、薬指を竜角にかけて支えとしながら、手をいっぱいに広げて弾く。使用 する指はほとんどが親指であり、一二や五六のように隣同士の弦を一緒に弾く 時(掻手)や、楽器の向こう側から手前に向かって行うグリッサンド(引き連)

       46

の時以外は、中指は使わない。引き連、流し爪(親指を使用して楽器の手前か ら向こう側に向かって行うグリッサンド)、掻手(中指で隣同2本の弦を同時 に鳴らす)、半押し(左手で柱の左側の弦を押し、元の音より半音上げる)など の手法を使いながら、かなり速いテンポでも力強く自信を持って弾いていた。

〔譜表22〕《お江戸日本橋》箏の調弦

     一二三四五六七八九十斗為巾

      (紫、緑は竜脳と箏柱につけた目印の位置と色を示す。)

 〔譜例23〕は、合奏とケチャ、歌舞伎嘩子の共演である「破の部」から抜粋 したものである。ケチャのパート1.2.3,4.にある八分音符は「チャ」と発 声し、歌舞伎蔭子のパート「たたぼうスぽぼう」などの声による掛け合いとジ ャンベの軽快なリズムが重なり合って、大変迫力のある演奏となっていた。リ ズムの重なりは複      〔写真2〕

雑でも1人1人の

子供の受け持つリ ズムはシンプルな ので、子供たちも 音楽に乗って元気 よく楽しそうに演 奏できていた〔写

真2〕。

47

〔譜例23〕《お江戸日本橋》より抜粋 日本古謡、大原啓司編曲

  十   斗  十   斗  為   斗  十   七  八   為  斗   十九八七 八七六五

O

    箏

@ ソプラノ

@リコーダー

@グロツケン

@  鉄琴

@木琴 高

@木琴 低

d子オルガン

@  小鼓

σ じ

ツ  ツ ツ  ツ ツ  》 ツツツ ツ  7 ツ  ツ ツ  ツ ツツツ

7ツ  ツ

@ツツ

ツ  ツツ

茶c  ツ

 ツツ c  ツツ

ツツ  ツ

@ツ  ツ

ツツ  ツ

@ツツ

ヲ  ツツ

aツ  ツ

 ツツ

c  7ツ

ツツ  ツ

@ツ  ツ

  ケチャ1.2

@ ケチャ3.4

フ舞伎礎子1.2

フ舞伎噺子3.4

ツ  ツ7   7ツ   ツツ  ツ 7  ヲ   ツ  7ツ   ツツ   ツ 亨  ツ ツ  ツ

@      ツ

48

 3.《ダッタン人の踊り》(5年生)について

 5年生は1クラス35〜36人の4クラスから成る。落ち着いた学年で、授業

中も教師の指示をよく聞いて集中して取り組むことができる。 《ダッタン人の 踊り》は、静かな前奏に続き、有名な主旋律をソプラノリコーダーとアルトリ

コーダー、箏で演奏する第1部分、三拍子の舞曲風の第2頭身、四拍子に変わ り激しいクライマックスへと続く第3部分の大きく分けて4っの部分からなり、

大原教諭の編曲は壮大なオーケストラによる演奏を思わせるスケールの大きな

ものである。

 静かな前奏部は、三連符を含む短いフレーズを、箏、アルトリコーダー、鉄 琴、グロッケンが次々に演奏し、それをアコーディオン、木琴、オルガンがベ ース音とシンコペーションの静かなリズムで支える。子供たちは小さな音を丁 寧に出そうとしており、謎めいたしっとりとした雰囲気がよく出ている。

 〔写真3〕      〔譜例25〕は有名な旋

律が演奏される第1部分 からの抜粋である。主旋 律を演奏するソプラノリ

コーダーとアルトリコー ダーは、タンギングなし の奏法を指示されている。

大原教諭はこの曲の雰囲 気をより効果的に出すために、タンギングのある西洋的な音色(タンギングは 西洋の管楽器における重要な技巧である)ではなく、タンギングのないアジア 圏の音色(日本の篠笛や尺八、中国の横笛、インドの横笛バーンスリー、アラ ブの葦笛ネイなど、日本やアジアの笛は基本的にタンギングを行わない)を求 めているのだが、子供たちには何が西洋的で何がアジア・アフリカ的なのかと いうことは理解しにくいようである。西洋的なニュアンスやアジア・アフリカ 的なニュアンスが具体的にどのようなものなのか感覚的に理解するには、諸民        49

族の多くの音楽や文化に触れることが必要であるため、大原教諭は給食時のお 昼の放送、掃除の音楽、下校の音楽など、放送で音楽を流す機会を利用して、

さまざまな民族音楽に親しめるよう工夫している。

 箏は、9人の子供たちが親指と中指に箏爪をはめ、主旋律を弾く。4年生と 同じく、昼休みにパート練習を行っている。強押し(箏柱の左側を左手で押し て、元の音より1音上げる)が1箇所あり、この強押しは、ミの音を巾(ミ)

ではなく為(レ)の強押しで装飾霊的に表現するための手法で、リコーダーの タンギングなしの奏法と同様に、アジア・アフリカ的な「コブシ」のニュアン スを表現する奏法である。しかし、弦を強く押すにはかなりのカを必要とする ので、子供たちにとって1音上げるのは難しく、全員の音が一定に決まらない。

また、十六分音符を弾くのも弾きにくそうである。

〔譜例24〕《ダッタン人の踊り》箏の調弦        紫       緑    紫

    一二三四五六七八九十斗為巾

         (紫、緑は竜角、箏柱につけた目印の位置と色を示す。)

 第2部分、第3部分は前奏、第1部分とは雰囲気が変わり、次第に激しさを

増していくが、それを和太鼓、バスドラム、トライアングル、ジャンジャ、ジ

ャンベ、シンバルといった打楽器が効果的に演出している。ジャンジャはイン ドから東南アジアにかけて広く使われているという小さな鐘のような楽器であ るが、音が大きくよく通るので大変効果的な楽器である。それらの楽器を必要 な箇所に的確に配置することによって、音楽が多彩になり大きく盛り上がる。

また、第2、第3部分を通して全体的に半音進行が多いため、演奏の難易度が 増している楽器が多い。特にリコーダーはファ#、シレ、ミb、うわ、レbな

どの派生音それぞれに指使いを覚えなければならないので、きちんと吹けてい ない子供もいる。しかし、全体的に技術的に難しい大曲を聴き応えのある演奏 に仕上げた集中力は素晴らしかった。

       50

〔譜例25〕《ダッタン人の踊り》より抜粋 ボロディン作曲 大原啓司編曲

プラノリコーダ

アルトリコーダ

      ))

繼纓R一為オ斗十九 十斗為一巾十九八 六六九r十九八七 八七六一一七八十 九九巾一一為オ斗十九 十斗為一為オ十九八

      箏

@  グロッケン

@    鉄琴

@    木琴1

@    木琴2

Aコーデイオン

Aコーヂィオン

@バスオルガン

@   、        

@   ソンハル

@  バスドラム

塔Oル・ジヤン

ρ

D

ρ

ヤンジヤ・和太

ジヤンジヤ

51

 4.《子どものための組曲〜第5章》(6年生)について

 6年生は1クラス32〜33人の4クラスより構成されている。音楽会の練習

の合間に修学旅行があり、それに伴う代休や創立記念目が重なって他の学年に 比べて練習時間が少ない中、箏と三味線を使った合奏曲に取り組んでいた。《子

どものための組曲》は長澤勝俊作曲の尺八、箏、三味線等の和楽器による合奏 曲である。和太鼓による前奏の後、テンポの速い第1字分が始まり、中間にリ コーダー3パート(ソプラニーノ、ソプラノ、アルト)による静かで緩やかな 第2部分が演奏され、再び第1部分を繰り返して終わるというように、大きく 分けて4つの部分から成る。十六分音符が多く使われ、リズムが細かい上にテ ンポも速い、大変リズミカルな合奏曲である。途中四分の二拍子、四分の三拍 子、四分の四拍子が1小節ごとに現れる変拍子の箇所もあり、おそらく楽譜を 理解するのも容易ではないであろう。しかし、子供たちは生き生きと楽しそう に演奏しており、筆者の「この曲難しくない?」という質問に、ある子供は「出 来上がってくるにつれてどんどん幸しくなってきた。」と答えてくれた。

 第1部分の箏と三味線は希望者が演奏しているが、6年生にもなると毎年音 楽会で箏や三味線を担当している生徒が希望する場合が多いので、テンポが速 い曲でもしっかりと音を出して自信を持って弾いている。箏は10人、三味線

〔写真4〕       は13人が担当しており、

三味線は放課後に行われ ている三味線クラブにっ ている子供が多いという ことである。大原教諭に よると、この三味線パー

トはとても難しいという ことであった。三味線を 弾く時は、歌舞伎の大薩

52