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英国公監査フォーラムによる発生主義と業績管理の関係性に関する指摘

第8章 地方自治体財務管理内部統制における業績管理

2 英国公監査フォーラムによる発生主義と業績管理の関係性に関する指摘

財務管理と業績管理を考える上で、財務情報をどのように利用するかが課題となる。英 国における発生主義導入の状況は、地方自治体が先行して1993年、中央政府は1999年に 導入している。中央政府の発生主義会計導入後、公共監査フォーラム(Public Audit Forum: PAF)は、2002年11月、報告書「ありのままの真実:なぜ発生主義会計は良いマネジ メントを意味するのか」(The Whole Truth: Or Why Accruals Accounting Means Better Management)を公表した。この報告書では、公共部門への発生主義会計導入について、

実例からその意義を整理し、対応策を示している。自治体やNHSなどの公共部門におけ る導入の実態と、その際に発生した問題点が示されている。特に、発生主義の長所につい て財務管理と業績管理について指摘があるので取り上げる。

(1)発生主義の5つの長所

PAFの報告書では、発生主義の5つの長所について5つの視点を示して、図表8-3 のように説明している 17。5つの視点は、「完全性」、「計画性、マネジメントおよび意思 決定機能の強化」、「変化に対応するための能力」、「業績管理」、「財務健全性に関する評価」

に分けられている。

1つ目の完全性では、発生主義会計の完全性を現金主義より優位であると断じている。

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期間取引の適正化は会計操作の可能性を抑制し、期間・組織間の比較可能性の改善につい ても可能であるとしている。

2つ目の計画・マネジメント・意思決定機能の強化については、正確で客観的な財務・

マネジメント情報がより良いマネジメントや意思決定のために必要不可欠であるとしてい る。

3つ目の変化に対応するための能力では、発生主義を導入すれば課題が自動的に解決す るわけでなく、変革のために、政策の変更や新規投資が重要であることを指摘している。

公会計改革においても新たな仕組みの導入により改善が図られるとする考え方が見られが ちだが、安易な制度導入を戒めている。

4つ目の業績管理では、効果的な業績測定により、良い業績管理が実現できると指摘し ている。ここでは、発生主義会計による確度の高い財務・マネジメント情報によって業績 測定を行うことで、より良い業績管理の実現が測られるとしている。3つ目の項目でも発 生主義会計からもたらされる経営情報の重要性が指摘されているが、業績管理においても 同様のことが言えることを指摘している。

最後の5つ目の財務健全性に関する評価については、財務報告によって過去に行った実 績に評価を行うことで、より適切な意思決定へとつながっていくことを示している。より 具体的には、将来キャッシュフローを予測し、回復力(レジリエンス)やリスクの評価を 行うことが、財務報告の目的の一つであるとしている。

図表8-3 発生主義に関する5つの視点

完全性 発生主義会計は、現金主義会計より完全である。取引を正しく認識 することは、潜在的な会計操作の可能性を減少させ、期間ごとや組 織間の比較可能性を改善する。

計画性、マネジメントおよび意思 決定機能の強化

正確で客観的な財務・マネジメント情報は、優れたマネジメント・

意思決定や良い資源配分計画の要諦である。

変化に対応するための能力 優れたマネジメントは、発生主義会計の採用で可能になるが、採用 すれば自動的に改善されるわけではない。変革を成功させるために は、政策の変更や財務的な要因が必要とされる場合がある。

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業績管理 優れた業績管理は、効果的な業績測定を必要とする。業績測定、あ るいは業績指標は、包括的で一貫性のある財務・運営データを基に 算出されなければならない。それゆえ、発生主義会計は優れた業績 管理の必須の構成要素なのである。

財務健全性の評価 財務諸表を公表する目的の一つは、利用者が将来キャッシュフロー を予測し、回復力やリスクの評価をできるようにすることである。

財務諸表は、完全な正確性をもって将来を予言することはできない が、財務報告の目的は、少なくとも、過去について公平でバランス の取れた全体像や将来の業績に関する指針を与えることである。

出所:Public Audit Forum, The Whole Truth: Or Why Accruals Accounting Means Better Management, 2002, pp.3-4.を基に筆者作成。

(2)発生主義の進展度評価

この報告書では、発生主義会計の導入進展度が示され、5段階での発展度が測られるよ うになっている。図表8-4に示すように進展度評価モデルでは、1~5段階に発展度を 分けて、その段階毎に実現できている長所について解説している。

一番低い第1段階は、現金主義による会計制度・予算・経営情報の段階とされている。

わが国で言えば、公会計改革以前の状態と考えることができよう。

第2段階は、会計に発生主義を導入している状態である。現金主義予算であるものの、

発生主義により財務諸表作成のプロセスを別にすることで、経営情報の改善を図っている 状態と言える。わが国の多くの自治体はこの段階かあるいはこの段階の入り口に位置して いると考えられる。

第3段階は、発生主義の記帳が日々定期的に行われる状態である。わが国でも東京都方 式のように日々仕訳に取り組む自治体もあることから、先進自治体はこの位置にあるもの もある。

第4段階では、経営情報は月次決算が作成できる段階を想定している。財務マネジメン トも、発生主義からもたらされる経営情報に寄ることとなっており、意思決定においては、

発生主義情報が基本とされている状態である。

第5段階は、貸借対照表とキャッシュフロー情報が月次情報に含まれる状態を言い、将 来の財務情報を含む、現有情報を確保している水準とされる。

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この進展度評価モデルを見る限り、わが国の公会計改革は第2もしくは第3段階に位置 し、進展度としては、中間付近に位置していることが分かる。このモデルによれば、わが 国の自治体は、さらなる公会計の整備を推進することが必要で、発生主義に基づく経営情 報を活用し、将来予測やマネジメント・意思決定に資するようにすることが求められる。

図表8-4 発生主義会計の長所の実現における進展度評価モデル

発展度 段階 内容

5 貸借対照表とキャッシュフロー情報が月次情報に含まれる。将来の財務をも含む、

現有データの情報が存在する。

4 月次の発生主義経営情報が、財務諸表を作るように、いくつかのプロセスで作成 される。コントロールの焦点は、発生主義基準の数値目標に移行している。意思 決定における良い財務・業績データを使用する。少なくとも四半期において、貸 借対照表情報を提供する。

3 完全発生主義経営情報を除く発生主義元帳は、月次ではなく定期的(四半期ごと)

に作成される。情報は、収入と支出に限定される。予算統制は現金主義と発生主 義のハイブリッドに基づいている。伝統的オプションは査定技術を使用する。

2 現金主義予算と経営情報;発生主義の財務諸表を作るプロセスを分離する。

1 現金主義による会計制度、予算、経営情報。

出所:Public Audit Forum, The Whole Truth: Or Why Accruals Accounting Means Better Management, 2002, p.57.に一部加筆。