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航空管制負荷解析

ドキュメント内 監視データを用いた航空交通の分析 (ページ 68-71)

空域構成を検討するためには,航空管制官のワークロードを定量的に求めて再構成時 に考慮する必要がある.しかしながら,航空管制官にかかるワークロードは多種多様で あり,数式を用いて正確に表現することは非常に困難である.そこで本節では,航空管 制官にかかる負荷として考えられる複数の項目を抽出し,その線形結合で航空管制官の 負荷を表すことを試みる.

参考文献[49]および[58]-[60]では,航空管制官にかかる負荷をいくつか定義している.

また,わが国において現行の航空交通流管理を行なう際には,管制作業量という指標が 用いられている.この管制作業量について,参考文献[72], [73]から引用し紹介する.

現行の航空交通流管理は,管制作業量とよばれる指標値を計算し,その値がしきい値 を超えた場合に実施される.実施内容は,主に該当航空機に対する出発空港での出発遅 延である.管制作業量は,航空機の出発前に各空域の飛行時間を求め,航空管制官の作 業内容を表す管制負荷係数によって重み付けされ計算される,航空管制官の予測作業量 である.管制作業量は,以下の式(4.2)によって求められる.

N

1 T

T( ) ST ( , )C

TASK

i t i ij

t





other

) OT T , (IT

T) OT

(IT

) OT T IT

(

T) OT

, IT (

0 T OT

IT T

IT OT

) , ( STT

i i

i i

i i

i i

i i i i

t t

t t

t t

t t

t t

i t

(4.2)

ここで,TASKT(t)は管制作業量,tはある時刻 [分],Tは管制作業量を求める時間 区間

t,tT

で定義される時間,Nは時刻tにおいて該当のセクタを飛行している航空 機数,iは各航空機に与えた番号,STTT分間におけるセクタ内の飛行時間,Cijは各 セクタの各航空機を飛行フェーズによって4つに分類したときの管制負荷係数,ITi 航空機iのセクタ入域時刻,OTiは航空機iのセクタ出域時刻である.なお,4つの飛行 フェーズとは,出発機,到着機,通過機および域内機である.現在の航空交通流管理で は,飛行計画情報を用いて,T30とし管制作業量を求めている.飛行計画情報には,

各航空機の通過予定地点名,各地点の通過予定時刻および通過予定高度,管制セクタ名,

出発および到着空港等が含まれている.本方法は,運用実績があり,しきい値によって 容易にセクタ容量を制御することができる利点がある.しかし,その時々の天候,交通 量,パイロットの要求等によって状況が変化する.また,管制負荷係数はあらかじめ決 められる係数であるため,その決定には実際の航空管制業務の解析が必要であり,膨大

な労力が必要になるという課題も指摘されている.

以上を踏まえて,我々の研究では,航空管制官にかかるワークロードを,機数ワーク ロード,密度ワークロード,密集ワークロード,調整ワークロードおよび高度変更ワー クロードの5種とした.これらは,航空管制官のワークロードを構成すると考えられる ワークロード要素の一部である.また,5種のワークロード要素は,任意の時刻の航空 機位置情報から計算される,その時刻のワークロードである.それぞれのワークロード の詳細は,次節において述べる.

4.3.1 機数ワークロード

機数ワークロードは,セクタ内に在空する航空機数である.これは,航空管制官のワ ークロードを定量化するにあたり,基本となる考え方である.機数ワークロードは,式 (4.3)によって表される.

B

1

C( ) 1

C i

t

W (4.3)

ここで,WCは機数ワークロード,CBはある時刻においてセクタ内を飛行する航空機 数である.

航空管制官が同時に取り扱うことができる航空機数には限界があり,その値はセクタ や航空機の状況および航空管制官の個人的能力によって変化する.そのため,実際には 限界値が存在しているが,値を確定することはできない.

4.3.2 密度ワークロード

密度ワークロードは,セクタに存在する航空機数とセクタ面積から求めた在空する航 空機の密度である.セクタによって面積が大きくばらついていることから,このワーク ロードを導入する.密度ワークロードは,式(4.4)のように表される.

 

1

1

1 1

0 2 B

D cos

2 ) 1

(



 

 

n

i

i i i

iΔ Δ Δ

Δ R

C t

W

    

0

iiΔ

0

iiΔ

(4.4)

ここで,WDは密度ワークロード [(機/m2)],Rは地球半径,nは該当セクタの頂点の 数,

iおよび

iはそれぞれ緯度 [deg]および経度 [deg]を表す.また,添え字のiは頂点 の番号,0はセクタの重心位置を表す.

4.3.3 密集ワークロード

密集ワークロードは,セクタ内を飛行している航空機がどれくらい密集しているのか,

定量的に求めるものである.密集ワークロードは,式(4.5)によって求められる.

 1

) 1 (

spr

CNF t I

W (4.5)

ここで,WCNFは密集ワークロード,

I

sprは第3章で述べた間隔指標である.WCNFは,

式(3.3)によって得られるCB(CB1) 2通りの全ての組み合わせの合計である.正規化の 際の基準値は,3章で取り扱ったときと同じとする.

密集ワークロードは,セクタ内の航空機が密集するほど,航空管制官に負荷をかける 状態を表すために導入する.間隔指標の逆数をとっていることで,航空機同士が基準値 を超えて接近すると,急激に値が大きくなるようになっている.

4.3.4 調整ワークロード

調整ワークロードは,航空機がセクタに入出域するとき,航空管制官にかかる負荷で ある.調整ワークロードは,式(4.6)により表される.

in out

1 out, 1

in,

v( ) ( ) ( )

C j

j C

i

i t t

t

W

 

(セクタ入域時)



    

 0

) 30 30

( ) 1

( in, in,

in,

i i

i

T t t T

(セクタ出域時)



   

 0

) 0 30 (

) 1

( out,

out,

t

t T j

j

(4.6)

ここで,Wv:調整ワークロード,Cin:セクタに入域する航空機数,Cout:セクタを 出域する航空機数,t:ワークロードを求める任意の時刻,Tin:入域時刻,Tout:出域 時刻である.ここで,時刻および時間は秒で表す.

調整ワークロードを導入した目的は,航空機がセクタに入出域する際に必要な航空管 制官と航空機パイロットの音声交信を表現するためである.特に,航空機の入域時は,

入域のための音声交信と入域後の飛行経路の予測等を行なうための負荷が航空管制官 にかかる.出域時は,出域のための音声交信があるが,担当するセクタを航空機が出て しまえば,航空管制官に対して負荷になることはない.そのため,調整ワークロードは,

入域前後の30秒間および出域前の30秒間に負荷がかかるようになっている.

4.3.5 高度変更ワークロード

高度変更ワークロードは,高度変更を行なう際にかかるワークロードであり,式(4.7) によって与えられる.

AC AC(t) C

W  (4.7)

ここで,WACは高度変更ワークロード,CACはある時刻においてセクタ内に在空する 航空機のうちセクタ内で高度変更を行なった航空機の機数を表す.

高度変更ワークロードは,高度変更を行なうために航空管制官の承認が必要であるこ とから導入したものである.

ドキュメント内 監視データを用いた航空交通の分析 (ページ 68-71)

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