• 検索結果がありません。

フィルタ処理

ドキュメント内 監視データを用いた航空交通の分析 (ページ 31-35)

データは,それぞれ固有の誤差を含んでいる.また,データを取得するハードウェア の能力から,異常値の混入を完全に防ぐことはできない.このため,データを解析する には,それ以前に何らかのフィルタ処理が必要である.

ここでは,本研究においてCARATS Open Dataに対し,時刻の丸め誤差および位置誤 差に関して解析前に行なったフィルタ処理の方法について述べる.次章以降では,フィ

ルタ処理を行なったデータを用いて解析を行なう.

機体固定座標系における3軸方向の加速度を求め,その大きさから異常値を判定する.

航空機はその構造的な制約から大きな加速度をとらないため,容易に異常値を抽出する ことができる.

具体的方法は,以下の通りである.

まず,連続する 3点の位置情報から,対地速度および加速度を求める.位置関係を,

図 2.4に示す.図 2.4におけるx,y,zは,機体固定座標系における各軸である.

図 2.4 連続する3点の位置情報

時刻tiおよびti1における対地速度VGSは,それぞれ式(2.1)および式(2.2)で求められる.

i i

i

i t t

r dt t dr

V   

1

GS( ) (2.1)

1 2

1 1

GS( )

  

i i

i

i t t

r dt t dr

V (2.2)

ここで,r2点間の距離である.また,式(2.3)より,真トラック角を求める.真ト ラック角とは,真方位で表した航空機の飛行経路方向のことである.式(2.3)の導出は,

Appendix Cに示す.

 

i i i

i i

i

i i i i

t

     

 

 

1 1

1

1 1

TRUE_TRK

cos cos

sin sin

cos

sin ) cos

(

tan (2.3)

加速度によるデータ処理方法

① 位置異常値(位置誤差の大きい部分)の除去 ② 時刻の丸め誤差の推定

③ 上昇率による高度異常値の除去 ④ 手動で異常値を抽出

ここで,

TRUE_TRK [deg]:真トラック角,

[deg]:緯度, [deg]:経度である.以 上より,x,y,z方向の加速度をそれぞれ以下のように求める.

 

i i

i i

i i

i

x t t

t t

t V t t V

a

 

1

TRUE_TRK 1

TRUE_TRK GS

1

GS( ) ( )cos ( ) ( )

)

(

 

 

i i

i i

i i

y t t

t t

t t V

a

 

1

TRUE_TRK 1

TRUE_TRK 1

GS( )sin ( ) ( )

)

(

 

i i

i V i i V

z t t

t V t t V

a

 

1

1) ( )

) ( (

(2.4)

ここで,ax(ti)ay(ti)az(ti)は,それぞれ

x , y , z

方向の加速度[m/s ]2 を表す.これ らの加速度が式(2.5)を満たすときに,3点目の位置情報を異常値として抽出する.

5 ) (i

x t a

5 ) (i

y t a

5 ) (i

z t a

(2.5)

①の段階においては,tiからtf にかけて連続的に行い,ti,ti1,ti23点を用いて判定 を行う.異常値として3点目を削除した場合は,次の処理をti1,ti3,ti4について行い判 定を継続する.

次に,時刻の丸め誤差について処理を行なう.CARATS Open Dataは時刻パラメータ を整数に丸めているため,各時刻に丸め誤差を含んでいる.このため,②の段階におい ては,位置誤差等を無視して時刻の推定を行う.方法としては,時刻誤差を考慮した閉 区間において,加速度が最小となる時刻を直線探索法[27]により求める.

③では,昇降率VV を式(2.6)により求め,しきい値によって昇降率の高い位置情報を 抽出し,高度パラメータに含まれる異常値を除去する.

i i

i i i

V t t

H H dt t dH

V

 

1

) 1

(

1 2

1 2 1)

(

 

i i

i i i

V t t

H H dt t dH V

(2.6)

④では,③までの処理を行なった上で,次章で説明する航空機間の干渉評価を行ない,

干渉が発生した場合に該当のフライトを抽出して異常値の判定を行なうものである.本 方法では,干渉発生の原因となっているデータの該当部分について全て確認し,通常の 運用の範囲ではありえないと考えられる位置情報を抽出し,元のデータの該当する位置 情報を削除する.今回の結果では,そのほとんどが高度パラメータの瞬間的な異常値で ある.例えば,他の航空機と1,000 [ft]の高度差を確保して交差する際に,一方の航空機 の位置データがもう一方の航空機に重なるもしくは非常に接近した位置に瞬間的な異

常値として現れるものであった.実際の航空機において以上のような挙動は極めて可能 性が低いので,手動での削除は妥当なものであると判断している.

3

干渉評価

航空交通量が増加した際に,最も大きな問題となるのは航空機同士の干渉である.干 渉の定義は,航空機同士が規則で定められた安全な空間的間隔を確保できておらず,異常 接近の危険性がある状態である.大きな問題となる理由は,航空機数の増加により特定 箇所に航空機が集中し,干渉の発生リスクが増加するためである.干渉の発生リスクが 増加すれば,航空交通の高い安全性が損なわれることになる.さらに,干渉を予測し解 消するための業務を行なうことで,航空管制官にかかる負荷も増大する.このように,

航空機間の干渉問題は,早期に取り組まなければならない課題である.

本章では,航空機間の干渉およびその解消方法の発見を目的とする.まず,CARATS

Open Dataを用いて,航空機間の干渉の現状について分析する.さらに,航空管制官が

実際にどのようにして干渉を解消しているのかをデータから抽出し,今後の干渉解消方 法提案の参考とする.

ドキュメント内 監視データを用いた航空交通の分析 (ページ 31-35)

関連したドキュメント