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自社ブランド商品の開発

ドキュメント内 修 士 論 文 (ページ 83-86)

3 事例分析

3.8 事例企業(7) 丸和繊維工業株式会社

3.8.4 自社ブランド商品の開発

このプロジェクトのあと、この技術を一般消費者向けの商品に活用するように社長から 指示があった。しかしながら、従来の裁断方法の約3倍の型紙が必要とされる動体裁断を 用いた衣類は、それだけ裁断・縫製の手間が多く、高い縫製技術も求められることから、

OEM取引をしているアパレルメーカーで扱ってもらえるような価格で生産することは難 しい。そこで、自社ブランドを立ち上げ、商品を発売することに決定した。

現在の百貨店で、アパレルメーカーの商品が高価格の値付けができないのは、夏季や年

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末年始のセールへの対応を行うためのものである。セール時に低価格で商品が販売できる ように、セール以外の時期では内部留保を蓄えなければならないのである。もっとも、ア パレルメーカーは広告費も削減できず、材料費(反物の値段)は決まっているから、結局、

縫製部門に対してコストを削減が要求され、縫製を担当する当社は、利益が出せなくなっ てしまうのだ。一方、西川氏を始めとする営業部門には、「メイドインジャパン回帰」の風 潮があり、世間消費者は必ずしも安いものを欲しがっているわけではないのでは、という 感覚があった。

動体縫製を用いたアイテムを作るに当たり、何を作るのか検討された。宇宙船内被服に 採用されたポロシャツは当社の得意商品であり、年間何十万枚も作っているが、それらは 全てOEM先のブランド商品であるから、自社商品を出せばそれらのブランドと競合する ため、販売はできない。現在、カットソー素材で大抵のアイテムがあるが、Yシャツ(ド レスシャツ)は市場にほとんど存在していなかった。市場にないという新しさから、取引 先に迷惑を掛けることもなく、消費者にも新しさを評価してもらえるのではないかという 判断から、開発に着手した。ニットでも動体裁断によりドレスシャツが作れるということ を啓蒙するため、オーセンティックなデザインを選択した。

開発当初、「カットソーでドレスシャツは作れない」と生地販売業者にも言われたとい うが、実際、開発は大変だった。カットソーは伸縮性のある生地であるが、Yシャツの袖 口や襟部分には芯地と呼ばれる硬さや厚み、強度を出すために使用される布地を入れなけ ればならない。芯地は伸縮性のない生地である。こうした生地を組み合わせて縫製しても、

当初の試作では1回洗濯すると形崩れが起こり、使い物にならなかった。また、通常生地 を決めるのはアパレルメーカーである。これまで自社商品のために生地を購入したことが ない当社は、そもそも生地販売業者からなかなか相手にしてもらえなかった。そうした労 苦もあったが、布帛に比較的性質の近い生地を見つけ、123 枚の試作を経て、完成に至っ た。

販路開拓も課題であったが、伊勢丹メンズの Discover Japan のバイヤーに見せたとこ ろ興味を持ってくれ、キャンペーン分を買い取ってもらえた。ただし、価格設定は難航し た。当初は 19,000 円で提案した。日本の百貨店のシャツ平均売価は 6,800 円、伊勢丹メン ズでも 8,800 円である中、最終的には 15,000 円で設定することとなり、細かな縫製や仕上 げ部分を手間の少ない方法に簡略化したものの、製造は福島工場で行った。「日本の技術力 を見てもらう」というのが社長のコンセプトであったといい、パタンナーとのやり取りを

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繰り返して、形にしていった。動体裁断では、1mm単位での修正でも、膨大な量の型紙 を作成しなおさなければならず、パタンナーに大きな負担を掛けながら、それでもより良 いものを目指してのやり取りであった。

こうして発売した「INDUSTYLE(インダスタイル)」のドレスシャツは、2011年3月 以降、伊勢丹メンズ館のシャツの売上で大手ブランドを抑えて6週間連続で1位となった。

西川氏も伊勢丹での販売応援に従事したが、お客様が試着して、動作してもらうと、動き やすさが違いから思わず表情が変わり、微笑む姿を目の当たりにして、いいものなら評価 してもらえるということを実感した。

半年間に渡り伊勢丹メンズ館限定で販売したのち、大手の百貨店でも販売を開始した。

さらに、「すみだモダン」15にも採用されたことで、各種メディアからの取材が相次ぎ、さ らに話題を集めることとなった。第 1 弾商品の成功により、ラインナップ拡大に向けた開 発が進められている。生地製造業者と共同開発で、新しい生地の開発を行っている。また、

2012年からは当社本社ビルの1階に直売の店舗をオープンさせた。消費者の反応を直 接見ることができる場所となっている。

OEM 取引先にも動体裁断を採用した商品を発売したいという意向を持つメーカーもある ものの、価格面で折り合えず、まだ実現には至っていない。ただし、2014年10月か らデザイナーズブランド“YOHJI YAMAMOTO”とのコラボレーションによるジャケットの販 売が開始された。この商品には「動体縫製」という商標タグが付されているが、これは動 体裁断による複雑なパターンを、よりしなやかで美しい服に仕立てる丸和繊維工業の縫製 技術を表現したものである。実際、「INDUSTYLE」のヒット後、動体裁断のコンセプトをま ねた商品が大手メーカーより発売されたものの、縫製技術が不十分な製品であったため、

品質が悪く市場に受け入れられないということがあったという。動体裁断を用いたジャケ ットについては、自社ブランドでも 2015 年から発売予定である。

自社の商品が市場で顧客から評価されていることが実感できると、社員のテンションが 上がり、仕事へのモチベーションが上がり、社員が仕事にプライドが持てるようになる、

ということを、西川氏は目の当たりにしている。

15 墨田区が、すみだという地域をイメージできその魅力を高めることのできる商品を「すみだモダン認 証商品」として認証する制度

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