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考察(2) 市場ニーズの探索・特定と製品開発プロセス

ドキュメント内 修 士 論 文 (ページ 118-128)

4 考察

4.3 考察(2) 市場ニーズの探索・特定と製品開発プロセス

さらに、今回の事例を分析することにより、市場ニーズの探索・特定を何に求めるかに よって、その後の市場導入までの製品開発プロセスが異なり、必要な活動に差異が生じ る ことが観測された。第 2 章で提示した製品開発プロセスの分析のための概念モデルに沿っ て分析し、詳細を説明する。

4.3.1 (a)経営者(従業員)自身または家族がターゲットユーザー

①製品コンセプト作成

【技術アイデア検討】

ニーズを解決するベネフィットを提供できる技術手段のすべてを自社で有していると は限らないが、できるだけ自社で開発可能なレベルでの技術アイデアを導く方が、製品の 具体化・生産準備の過程における負担を小さくでき、製品化の実現性を高めることにつな がる。伊吹電子の「クリアーボイス」においては、母親の使う補聴器の代替品としてアイ デアを検討したが、補聴器と同性能での代替品を構想したならば、自社製品としての実現 はよりハードルの高いものとなっていただろう。

【製品コンセプトの具体化】

生活者視点でのニーズであるから、ターゲットは消費者であり、BtoCの事業となる。

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図表 4-2 中小企業の製品開発モデル(a)

出所:筆者作成

先行研究にある「大企業が狙いにくいニッチ市場を狙う」という知見をもっとも押さえる ことが重要である。

基本デザインに関しては、ターゲットユーザーが自身または身近にいる人間であるゆえ に、今回の事例においてはデザイナーなどに依頼することなく経営者自らが行っている。

市場性の確認に関しては、自身が欲しい、という強い思いが市場性の最初の裏付けとな っているが、当然ながらそれが事業として成立する保証とはならない。経営者(従業員)

自身または家族がターゲットユーザーである製品を開発する場合には、経営者(従業員)

自身の製品ジャンルに対する関与度が高く、愛好家(マニア)と呼べるほどの嗜好を有し ていること、すなわち自身が当該市場における「リードユーザー」である方が成功する可 能性は高まると考えられる。大里化工の谷社長は写真撮影が趣味であり、自身で、購入者 の撮影上の困りごと、悩みに応える無料サポートを行っている。ナイトペイジャーの自動 車パーツは、もともと自動車が趣味だった横田社長が週末に父の会社の設備で自らが使う パーツを自作していたことが始まりである。

伊吹電子、大里加工では、製品の具体化・生産準備の段階で新製品開発のための行政か らの補助金(助成金)を受けている。大里化工の谷重樹氏は「補助金を受けられる企画内 容であることが、売れる商品になるための最低条件」と語っていた。補助金においては、

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事業の収益性、新規性などが審査されることになるので、市場性を確認することにつなが るからである。行政による補助金は目的に応じて多岐な種類が国レベルや地方自治体レベ ルでも展開されているが、多くの補助金における共通点は、助成を受けられる期間があら かじめ決定されている、という点である。従って、他の企業や団体と共同で進める製品開 発では、開発期間のコントロールが自社のみでは行えず結果的に開発期間が長くなったり、

開発内容を途中で見直しする可能性があるため、補助金の活用を行うことは難しく、単独 で製品開発を行う場合の方が、より活用しやすいと思われる。また、クラウドファンディ ングの活用も、補助金に近い活用が可能である。想定ユーザーからの評価を受けることが でき、市場性を確認できる機会であるとともに、評価者からのフィードバックを受けて、

製品の仕様やデザインを修正することもできる。

②製品の具体化・生産準備

【製品エンジニアリング】

試作品を作成したら、ターゲットユーザーである自分自身(あるいは身近な人間)の感 覚で現物を確認・評価し、改善点を抽出する。伊吹電子や大里化工では、初期には段ボー ルを筐体に使用した試作品を作り、製品の検討を行っていた。試作品の製作は、経営者(発 案者)の頭の中にある製品のイメージを具体的な形状によって開発メンバーに共有するた めに非常に重要である。また、伊吹電子のクリアーボイスでは、試作品を使った母親の感 動する姿が、その後の開発のモチベーションとして機能しているように、ターゲットユー ザーからの反応が、その後の開発を促進する効果も期待できる。

【工程エンジニアリング】

消費者ニーズに基づく製品アイデアであるため、自社内にすべての要素技術・製造技術 を有しているとは限らないので、自社の有する製造技術を可能な限り活用しつつ、外注先 を効果的に活用することが必要となる。

③営業・マーケティング

【販路開拓】

ターゲットのボリュームが大きくないので、既存の流通を利用することがそもそもふさ わしくない。4 社とも、量販店などでの販売も行っているが、自社での直接販売(インタ ーネットなどを通じた通信販売)の比率も高くなっている。

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【広告・宣伝】

このタイプでは、ニッチな市場での需要を獲得するため、ユーザーのコミュニティを新 たに生み出したり、すでにあるコミュニティに対して商品の存在価値をアピールしていく 必要がある。各社とも、ホームページやSNSに詳細な商品情報を掲載している。大里化 工では、「フォトラ」「ボトラ」を、営業上きれいな写真を撮影するニーズを有する店舗経 営者やネットショップ経営者に認知させるため、様々な展示会への出展し製品PRを行っ ている。田代合金所のTGメタルでは、オーディオ専門誌への広告を出し、オーディオフ ァンへの浸透を図った。ナイトペイジャーは、社長が自動車専門誌にコラムを寄稿してい る。伊吹電子では、「川崎ものづくりブランド」「かわさき基準」といったブランド認証を 用いた浸透を図っている。

また、ユーザーとの交流は、新たな商品展開の起点ともなる。伊吹電子では、福祉業界 とのつながりを元に商品ラインナップを拡大しており、大里化工は、フォトラユーザーや フォトラに関心を寄せる消費者からの「ビンもキレイに撮りたい」「ガラスがキレイに撮れ れば買いたい」という声に基づき、「ボトラ」を開発した。

4.3.2 (b)専門家との連携・専門家への密着

①製品コンセプト作成

【市場ニーズの特定・把握】

専門家からニーズを引き出すためには、まず、専門家と接点を持ち、交流する機会を持つ ための活動が重要となり、接点が得られたあとは、その交流を継続し、専門家とのコミュ ニケーションが十分に図れるだけの知識を、経営者自身あるいは専門家とコンタクトする 担当者が有していなければならない。高山医療機械では、そもそも下請事業者として医師 との接点がなかったところを、代理店の伝手を頼って外科医と接触を取った。さらに、臨 床医学に関する自学、手術現場の見学などの経験を重ねて、外科医と医学的な話題のコミ ュニケーションが取れるようになり、外科医のニーズを理解することができるようになっ た。田代合金所のたちばなでは、橘氏の技術に注目した田邊社長が橘氏のアトリエを訪問 して、協業を決めた後はお互いの技術を公開した。ファインでは、歯科系学会、介護系学 会への参加を通じて医師とコンタクトできる機会を持ったり、介護現場を実際に視察する などの活動も行っている。丸和繊維工業では、中澤教授を会社に招聘して勉強会を開き、

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図表 4-3 中小企業の製品開発モデル(b)

出所:筆者作成

関係者が教授の理論を学習する機会を設けた。このように、専門家との協業の第 1 歩には

「専門家と同じ土俵に乗る」ための努力が必要となる。

【技術アイデア検討】

専門家は、自分自身、あるいは日頃接している患者・顧客の問題の解決に資する製品を 求めており、自らの専門的知識や見解に基づいて解決策を要求する。したがって、要求さ れる技術レベルは非常に高いものになりうる。その一方で、専門家は、その問題に対して 専門知識を有しているので、自身のニーズについて具体的、論理的に説明することができ る。したがって、技術開発、製品開発の具体的なターゲットを設定すること自体は、比較 的行いやすいと考えられる。

【製品コンセプト具体化】

専門家が持つニーズを解決できる製品コンセプトが設定されるべき目標であり、専門家 が属する市場、または専門家が製品・サービスを提供する市場がターゲットとなる市場と なる。そこで、田代合金所の田邊社長は「コラボレーションするならば相手が一流でなけ ればならない」という。製品化した製品が普及するためには、その専門家のニーズ・要望 が、同じ専門家が共通で持つニーズ・要望である必要がある。すなわち、その専門家が業 界における「リードユーザー」であることが望ましく、業界において一流、トップクラス

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