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自社ブランド商品開発のプロセス

ドキュメント内 修 士 論 文 (ページ 37-40)

3 事例分析

3.2 事例企業(1) 株式会社伊吹電子

3.2.5 自社ブランド商品開発のプロセス

①社長の旺盛なアイデア発想力と商品開発への意欲

自社ブランド商品の開発にあたっては、まず社長がアイデアを出し、商品の具体的な構 想は社員の意見を聞きながら進める。クリアーボイスの販売が伸びてからは、購入者から 多くの声が寄せられ、色々な使われ方があることが分かった。また、実際納入した施設に 行って、使っている様子を見たり、話を聞いている。そうした中でたくさんのエピソード を聞くので、新しいアイデアのネタが尽きることはない。

そのため当社では、商品ラインナップを続々と拡大させている(図表 3-3)。イヤホンや ヘッドホンで使えるような使い勝手の進化、鼓膜の弱い方でも使用できるように骨伝導に よる音の伝達を可能にするような機能進化、本人と家族が離れていても会話できる発信機 と受信機のセット商品や、テレビの傍に受音機、使用者の傍に発音器を置くことでテレビ

6川崎市と川崎商工会議所が共同でつくる「川崎ものづくりブランド推進協議会」が、川崎の誇る技術と 技能とから生まれた優れた工業製品を発掘し、「川崎ものづくりブランド」として認定し、市内の工業製 品の優位性や潜在能力の高さを市内外へ情報発信し、市内製造業の販売促進・競争力向上に力を尽くし ている(「川崎ものづくりブランド」ホームページ http://www.k-monobrand.com/index.html)

7 かわさき基準とは、利用者にとって最適な福祉製品のあり方を示した川崎市独自の基準であり、「高齢 者・障害者を含め、あらゆる利用者の日常生活の活性化を促す製品・設備・建物・サービス類」を認定 している(「かわさき基準」ホームページ http://www.k-kijun.jp/index.html)

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図表 3-3 商品ラインナップの拡大

出典:当社ホームページを参考に筆者作成

の音が聞き取りやすくなるセット商品のような使用シーンの拡大、拡聴器以外の福祉分野 への進出、というように、ニーズ、ターゲット、使用シーンに対応したきめ細やかな商品 展開を行っている。

常に新商品の開発について思いを巡らせている松田社長は、時代のトレンドに対する感 覚も鋭い。自社ブランド商品の1つである「骨伝導クリアーボイス」は、見た目にインパ クトのあるワインレッドをまとった商品である。大手化粧品メーカーのシャンプーの赤い 容器を見て魅力を感じ、是非この色を使おうと思った、とのことであった。補聴器という のは大体肌色など地味な商品が多いので目立つのがいいと思ったからとのことであったが、

日頃から、自分の業界以外の商品にも注意深く目を配っているからこその気づきである。

筆者も大手電機メーカー在籍時に女性向けの小物家電の商品企画をしている際には、カラ ーリングの検討のために百貨店に足を運んで化粧品売り場や宝飾品売り場を回ったもので あった。おしゃれな商品を作りたい、という社長の強い意志が感じられるエピソードであ る。

また、これまで、近隣の複数の大学から新商品開発のアイデアや打診があり、取り組ん だ例もいくつかあるものの、まだ商品化に至った商品はない。また、大学病院、医療機関、

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福祉施設などから新商品開発に関する依頼が複数あり、開発に取り組んでいるとのことで あった。

②下請事業の利益、技術をベースにした商品開発

筐体や電子部品は社外からの仕入れで、国内企業から仕入れている。筐体の製造は江東 区、葛飾区などの成型企業に委託し、金型費用は当社が負担している。自社での工程は、

下請事業で培ったはんだ付けの技術を用いた手作業で可能な回路の実装、組立、検査、梱 包、出荷である。また、回路のパターン設計ができる(回路図を読み解ける)能力を有す ることは、自社商品として考案したアイデアを実際に「形」にしていくうえでの設計力・

開発力につながっているものと考えられる。

自社商品の生産は下請業務の合間で行う。1 年分の予定数(1 機種平均 2,000 台程度)を 1 機種当たり 1 週間程度で製造している。そのまま在庫を当社で保有し、販売業者に注文 の都度、直接納入を行っている。また、商品原価は部品の仕入費用と社内での加工費であ り、金型償却費用は原価に含めていない(図表 3-4)。さらに、新商品の開発時期には川崎 市の補助金をたびたび利用し、1回につき数百万円単位の補助を受けて開発費用に充てて いる。

図表 3-4 当社の原価構成

出所:筆者作成

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松田社長は、自社ブランド商品の最大の強みを価格だと考えていると言い、「工数の多 い大企業でこの価格はまず実現できないだろう」と話していたが、価格を抑制するために、

在庫保有リスクと金型投資負担リスクを自社で負っていることになる。

下請事業については、現在は大手電機メーカー1 社のみの液晶回路を手掛けており、下 請事業と自社商品販売の販売比率は6:4程度とのことであった。下請事業での利益を内 部留保し、商品の金型投資ができる程度まで蓄積できると、商品開発に着手するというス ケジュールを繰り返している。下請事業の安定した売り上げがあるから、継続的に自社開 発ができており、「新商品を開発するために、下請事業をしている」とのことであった。な お、2008 年のリーマンショックの際には3か月ばかり業績が低迷したが、自社商品が有っ たので大きな損失はなかった。

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