3 事例分析
3.5 事例企業(4) ファイン株式会社
3.5.6 事例のまとめ―業界における当社のポジショニング
清水社長が考える当社の強みは、「小回りが効くところ」である。専門家でも大手メー カーでも消費者であっても、商品化の要望があればまず話を聞く。製品の検討にあたって は、介護業界、歯科業界を中心に日々の営業活動、学会の出展などで築いてきたネットワ ークから、様々な方々の声を集めることができる。自社で歯ブラシ製造の設備を有してい るので、スピーディに試作品を作って、介護現場の方や歯科医に試してもらうということ もこまめにできる。大手メーカーでは大量・低価格生産のためのハイテクな機械をどんど ん導入しているが、そのような機械は、1個の試作品を急に作る、ということはできず、
むしろ当社のローテクな機械の方が向いている。だから、結果的に大手メーカーで断られ た仕事が当社に来ているのだと考えている。
こうした細やかな活動ができることで、今、当社は「駆け込み寺」としての存在価値が あるのではないか、と清水社長は考えている。「ほかの歯ブラシは使えない」とかユーザー にとってもそうであるし、こういう歯ブラシ作りたいけど、他で全部断られてきた、とい う専門家や、同業他社にとってもそうである。PB(プライベートブランド)商品やOD M商品の依頼も、色々な業者を当たった結果ファインさんにたどり着いた、とか言われる ことも多い。「細かい仕事、面倒くさい仕事はファインに行け、というところが業界内でど うもあるらしい」と清水社長は笑っていたが、特殊なニーズに対応する背景には、大手メ ーカーが提供しないような商品こそ提供したいという、社会貢献に根ざした当社の理念が ある。
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また、歯ブラシや衛生用品という商品特性を考えたとき、清水社長を中心に女性社員が 商品開発を行っていることのメリットもあるだろう。清水社長は「女性が多いからといっ て何がいい、というのは自分たちでは分からないが、女性ならではだね、と言われること はある」とのことであった。また、商品のデザインや仕様を決定する際に「売れそうかど うか、という観点では選んでいない」という。このときの清水社長の視点は、経営者とし ての視点よりも、1人の女性、1人の生活者としての視点の方により近い、ということな のだろうと思う。そして、そういった視点は、生活必需品である歯ブラシや衛生用品を検 討する上では、消費者にとって使いやすく、日常生活に取り入れやすい商品を選択できる 適当な視点であるように思われる。
すなわち、ファインには「機動性の高さ」「コンセプト作成力」「特殊ニーズへの対応力」
といった強みが形成されており、その強みによって、業界における「大手ができない仕事 を受けてくれる駆け込み寺」としてのポジショニングを確立し、安定した受注・生産を獲 得しているものと考えられる。(図表 3-10)
図表 3-10 当社の強みとポジショニング
出所:筆者作成
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【ファイン株式会社に関する参考情報】
ファイン株式会社ホームページ http://www.fine-revolution.co.jp/
中小機構 中小企業ビジネス支援サイト J-Net21 「闘いつづける経営者たち」
http://j-net21.smrj.go.jp/establish/sougyou/entry/948/20131210.html
公益財団法人 東京都中小企業振興公社「アーガス 21」No.372 2009 年 11 月 10 日発行“シ リーズ第 38 回キラリ企業の現場から”
https://www.tokyo-kosha.or.jp/topics/kirari/files/0911kirari_38.pdf 経済産業省関東経済産業局電子広報誌「いっとじゅっけん」2012 年 5 月 22 日 企業情報「女性経営者が活躍する創業 50 年の老舗歯ブラシメーカー」
http://www.kanto.meti.go.jp/webmag/kigyojoho/1205kigyou_chishin.html
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