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第 3 章 共同注視と意図的主体性の形成

3.5 自己受容感覚を持った共同注視

3.3節と同様に,子エージェントが視覚定位を足掛かりにして共同注視を学習する過程 を調査する.共同注視のシステムは図3.16に示したように,自己受容感覚が子エージェ ントの感覚情報として追加されるだけである.また,実験の設定と手順は3.3.2節と同様 にする.

3.5. 自己受容感覚を持った共同注視 59

実験結果:

共同注視の学習曲線は図3.19のようになる.図3.19は,横軸がトレーニングフェーズ の試行回数,縦軸がトライアルフェーズでの1000回の試行に対する注視の成功比率であ る.トライアルフェーズは,トレーニングフェーズを100回行なう毎に実施した.

0 20 40 60 80 100

0 1000 2000 3000 4000 5000

対象の注視成功比率[%]

頻度分布の更新回数[回]

親からオブジェクトの 注視(共同注視)

オブジェクトから親の 注視(参照視)

1.

2.

1.と2.の和

自己受容感覚がない 場合の成功比率

図 3.19: 自己受容感覚がある場合の共同注視・参照視の学習曲線:

頻度分布の更新回数に対して,視界外に配置されたオブジェクトや親を 注視する成功比率の推移を表わしたもの.

自己受容感覚がない場合の学習曲線(図3.11)と比べると,参照視の失敗がなくなって いることが分かる.連想時に使用される確率分布を確認すると,図3.20のような特性が 得られる.

図3.20は,親の注視からオブジェクトを想起する場合(共同注視:左列)と,オブジェ クトの注視から親を想起する場合(参照視:右列)の連想情報の確率分布をそれぞれ表わ している.

親の注視からオブジェクトを想起する場合(左列)には,親の視線方向に対するオブ ジェクトの配置方向(左上)が明確な構造を形成している.これは,親の視線方向の先に 必ずオブジェクトが配置されている状況を頻度分布が取り込んだ結果である.親がどの方 向に見えたかという情報(左中)や自己受容感覚(左下)には,オブジェクトがどこに配

60 第3章 共同注視と意図的主体性の形成

0 180 360

90 270

90 270

0 180 360 0.0 0.5 1.0

オブジェクトの 配置方向

[deg]

選択確率

親の視線方向[deg]

0 180

360

90 270

90 270

0 180 360 0.0 0.2 0.4

オブジェクトの 配置方向

[deg]

選択確率

親の配置方向[deg]

0 180 360

90 270

90 270

0 180 360 0.0 0.5 1.0

オブジェクトの 配置方向

[deg]

選択確率

自己受容感覚[deg] 0 180

360

90 270

90 270

0 180 360 0.0 0.5 1.0

親の配置方向

[deg]

選択確率

自己受容感覚[deg]

0 180 360

90 270

90 270

0 180 360 0.0 0.2 0.4

親の配置方向

[deg]

選択確率

オブジェクトの配置方向 [deg]

1 2 3

90 270

0 180 360 0.0 0.5 1.0

親の配置方向

[deg]

選択確率

オブジェクトの形状

特徴情報配置方向自己受容感覚

親の注視からオブジェクトの想起 オブジェクトの注視から親の想起

s*t

st

s*t

st

s*t

st

s*t

st

s*t

st

s*t

st

図 3.20: 自己受容感覚がある場合の連想情報の確率分布:

親やオブジェクトを注視したときの感覚情報(st)から連想される連想 情報(s+t )の確率分布.

置されているかを指し示す分布は形成されていない.

オブジェクトの注視から親を想起する場合(右列)には,自己受容感覚に対する親の配 置方向(右下)が,親のいる方向を指し示す情報を形成している.これは,自己受容感覚 の正視位置に親がいる状況を頻度分布が取り込んだ結果である.オブジェクトがどのよ うな形状だったかという情報(右上)では,確率分布は一様になっている.これは,オブ ジェクトの形状に親の位置を指し示す情報がないためである.オブジェクトがどの方向に 見えたかという情報(右中)に関しては,環境内でオブジェクトの見えた方向の反対側に 必ず親がいるようになっているので,その状況を取り込んだ分布になっている.しかし,