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図5−6−6赤穂におけるNH4+/Ca2+の度数分布の比較

5.6 阪神地区におけるイオンの季節的変化

 既に2.2で説明したように、大気中のイオンが雨水に取り込ま れる過程には、降水時に大気中の浮遊イオンを洗い流しながら取り 込む場合(Wash・ut)と雨滴が成長し雲粒を作り移動していく過程で 取り込まれる場合(Rainout)との2種類がある。前者の場合、すな わち、Washoutの場合、降水自身は非常に清浄であるか、または、特 定のイオンをまったく含んでいないと考える。その場合、今回の実 験では、一週間ごとの採水であるので、大気中に蓄積した1週間分 の汚染物質が洗浄除去されることになる。もし、その汚染物質の発 生起源が季節などによらないで一定の割合で発生しているとすると、

大気中に浮遊している汚染物質の量は1週間あたり同じになる。こ の量をwmolとすると、その一週間の降水量VmLと、その期間に 採水される降水中の濃度Cの関係は、

  C=w/V

となる。すなわち、降水量が多いと濃度は小さくなり、降水量が少 ないと濃度は大きくなる。これは、その物質の濃度が降水量と逆数 の関係になることを意味している。また、濃度と降水量を掛けた量、

沈着量は、上記の式のwに相当するので、一定値になるはずである。

 一方、Rainoutの場合、その汚染物質は降水となる地点に雨雲が来 る以前に雨雲の移動の段階で吸収されていたものである。そこで、

雨雲がどのような場所を通過してきたかなどの雨雲の履歴により、

その汚染物質濃度は変わる。すなわち、降水申の汚染物質の濃度は

季節によっても変化するし、また、降水量に逆比例もしない。濃度

と降水量を掛けた沈着量は一定とならない。

 上記のことから、降り始めの雨や降水が少ない場合には、大気中 に浮遊している塩類が洗浄されながら落ちてくるためWashou‡の寄 与が大きく、降り始めてからしばらくした後の雨にはRainoutの寄 与が大きいと考えられる。以上のことを踏まえて、阪神地区で採水 された雨水試料中に含まれるイオンについて、それがRainout由来 の物質なのか、Washout由来の物質なのかについて、検討してみた。

以下に示す図5−8−1から図5−8−10 は、阪神地区で採集した雨水 における汚染イオンの沈着量(各イオン濃度に降水量を掛け合わせ たもの)と各イオン濃度の月変化を示したものである。上殺(a)

図には1週間降水の沈着量の月変化を、(b)図には一週間降水の濃 度の月変化を、(c>図には初期1ミリ降水の濃度の月.変化を示した。

また、月あたりの降水量の.変化を図5−7 に示した。

5.6.1 Washout由来の物質

 図5−8−1に示したNO3一、図5−8−2に示したnssSO42一、図5−

8−3に示したnssC a 2+が、このグループに属する。これらは沈着 量(降水量×濃度)の月変化がほぼ一定の値を示し、濃度が降水量 の月変化と逆相関になっているものである。また、初期1ミリ降雨 中の濃度の月変化も小さい。

(A> NO3}イオン(図5−8−1)

 図5−8−1にNO3一イオンの場合を示した。濃度の,月変化くb)は10

月に非常に高くなっており3月付近にもなだらかな山が見6れる。

ところが、この濃度を降水量で掛けて得た沈着量くa)は4月を除いて ほぼ一定の値を示した。すなわち、上記で説明した典型的なWashout

由来の物質の特徴を示している。図5−8−1(b)の濃度変化が10,月 に著しく高くなっているのは、図5−7からわかるように、1997年の 10月の降水量が著しく少なかったからと考えられる。また、同様に、

1998年の2月、3月における濃度の増加も降水量の減少から説明で きる。図5−8−1(c)に示された初期降雨の濃度の月変化も、1週間 降雨の濃度変化と同様の傾向を表しており、一週間降水の最初の1

㎜分を分取したものが初期降雨であると考えれば妥当な結果といえ る。4月の沈着量が特に多い理由については現在のところ定かでは

ない。

〈B) nssSO42一イオン〈図5−8−2)

 図5−8−2に示したnss S O 42一の場合も、1997年の12,月に濃度(図

(b))が若干高い他は、基本的にNO3一の場合と同様の傾向を示して

いる。

(C) nssC a 2+イオン〈図5−8−3)

 図5−8−3に示されたnssCa2+については、1998年の2月から4 月にかけての濃度(図(b))のなだらかな増加の仕方が少し違う以外 は、nssSO42一やNO3一と同様の傾向を示している。

 以上のことは、NO3一イオン、 nssSO42一イオン、 nssC a 2+イ

オンの3種類のイオンの発生が阪神地区のローカルな発生であり、

その発生量は季節によらずく1998年の4.月を除いて)ほぼ一定して いることがわかる。そこで、採取された雨水試料の濃度への影響は、

むしろ、降水量の月変化が大きく支配していることをしている。阪 神地区における雨水へのNO3一イオンやnss S 042mイオン、 nssC

a2+イオンの取り込みは、 Washoutのみでよく説明できる。

5.6.2 Rainout由来の物質

 図5−8−4に示したC「、図5−8−5に示したNa+、図5−8−6に示 したMg2+が、このグループに属する。これらのイオンは通常、海 塩由来の成分と考えられているものであり、同じ傾向を示す同じグ ループに属するというのは妥当である。これらの濃度は1998年の3 月に非常に高くなっており、前節のNO3一イオン等の濃度が1997年 の10月に高くなっているのと異なる月変化を示している。また、こ のグループに属するCl一、 Na+、 Mg2+の濃度に降水量を掛けて 沈着量を計算しても、(a)図に示すように大きな月変化を示し、前 節の場合にほぼ一定になったのと違いがある。

(D)C「イオン(図5−8−4)

 図5−sL4にC「イオンの場合を示した。降水試料中の濃度の月変 化(b)をみると、1998年の3月に最も大きくなっているが、1997 年の10月11月、1998年の6月7月にも若干、濃度が大きくなって いる。(a>の1週間降雨における沈着量の月変化は、濃度のH変化

とほとんど同じ変化を示しているといえよう。これは、沈着量は濃

度×降水量で決まるが、降水量の月変化より濃度の月変化の方が大

きな変化を示しているためと考えられる。初期降雨の濃度の月変化 は1週間降雨中の濃度のH変化と同じ傾向であると考えられる。

(E)Na+イオン〈図5−8−5)

 Na+イオンは、 C1一イオンとともにほとんどが海塩起源と言わ れている。図5−8−5にNa+イオンの場合を示したが、沈着量の絶対 値が違う以外は、C1一の揚合とまったく同様の傾向を示していると 考えられる。図5−8−5のく。)に示された初期1ミリ降雨における 濃度変化については、1997年10月から1998年1,月にかけて濃度変 化があまり認められない。

〈F)Mg2+イオン(図5−8−6)

 雨水に溶存するMg2+イオン量は、 C1一イオンやNa+イオンに 比べて少ないため、図5−8−6のすべての図の縦軸のスケールを図5−

8−4や図5−8−5に比べて小さくしている。Mg2+の場合も、図5−8−4 に示したC「の場合や図5−8−5に示したNa+イオンの場合と同様 の傾向を示している。しかし、図5−8−6の(b)に示した1週間降 雨における1997年10月の濃度が、C「イオンやNa+イオンの場 合に比べて大きくなっていることや、1998年の4月から7,月にかけ ての変化が異なっていることがわかる。これについては、濃度の絶 対値が小さいこともありはっきりとした原因はわからない。

 一方、初期降雨中におけるMg2+イオン濃度が1997年の10月か

ら12月にかけて、他の月に比べて高くなっているが、1週間降雨に

おける12,月の濃度は、10月と3Hを除く他の月とほぼ同じである。

これは初期降雨に特有なMg2+の補給源が存在していた可能性があ り、例えば、この時期は大陸からの季節風により黄砂の飛来が考え られ、その成分としてのMg2+イオンの補給をうけている可能性が

考えられる。

5.6.3 WashoutやRainoutに区別できないもの

 上記のWashoutやRainoutのグループに単純に当てはめることの できないイオンがある。

(G)NH4+イオン(図5−8−7)

 図5−8−7(b)に示した1週間降雨の濃度変化をみると、1997年 10月と1998年3.月.に高くなっている。10月は降水量が最も少なか ったために濃度が高くな.つたものと思われる。図.5−7より3月は降 水量が少一ないものの4月から5月にかけて降水量.は著しく増加して おり、図5−8−7の(a)に示した沈着量変化で、3,月が高くなり、4 月もほとんど変化がないのは、濃度度変化において2月から3月に かけて増加し、4Hは低いことによるものと考えられる。2月までは 主にWashoutの寄与が大きいと考えられる。

 3月以降は沈着量が変動しているが、図5−7の降水:量の変化と比較

すると、降水量が3月から5月にかけて増加している。これに対し

て、沈着量は3.月から4,月にかけては変化がなく、5.月から7月にか

けて減少傾向にあり、降水量の増加に伴い沈着量も増加していると

は言えない。3月以降は、図5−8−7〈b)の1週間降雨における濃度

も変動していることからWashoutとRainoutの両方が寄与している

可能性がある。

〈H)NO2一イオン〈図5−8−8)

 図5−8−8にNO2『イオンの場合を示した。雨水に溶存するNO2 rm イオンは、CrイオンやNa+イオンに比べて少ないため、図5−8−8 のすべての図の縦軸のスケールを図5−8−4や図5−8−5に比べて小さ

くしている。

 図5−8一一8(b)における1週間降雨の濃度変化をみると、9.月、10 月、11月に多い値を示しているものの、序々に減少している。

 これは、図5−7の降水量変化より、10月に降水量が最も少なく、

11,月は降水量が増加していること。また、図5−8−8(c)における 10月とli月の初期1ミリ降雨の濃度が高いことが原因と思われる。

図5−8−8(c)に示した3月の初期1ミリ降雨濃度が高いが、図5−

8−8〈a)から沈着量は他の月に比べるとそれほど多くない。以上の ことはWashoutの寄与を示している可能性を示す。

 図5−7の降水量変化を見ると、4,月から7,月にかけては降水量が比 較的多く、降水量の増加と減少にともない、沈着量も増加・減少し ている。これらはRainoutの可能性を示すものである、全体として、

WashoutとRainoutの両方の寄与がまざって働いている可能性が考

えられる。

(1)K+イオン(図5−8−9)

図5−8−9にK+イオンの場合を示した。雨水に溶存するK+イオン

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