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図5−5 降水量とpHの関係
5.5 酸性化・アルカリ性化物質の影響について
雨水を酸性化する物質は主に硝酸と硫酸であり、アルカリ化する 物質はカルシウムの酸化物や炭酸塩とアンモニアである。6)都市部
では人間の生活活動からこれらの物質が放出されている。それらは 雨水に溶けNO3一、 SO42一、 Ca2+やNH4+イオンを生成する。
そこで、これらのイオン濃度を調べることにより雨水の汚染物質と 汚染過程を知ることができる。ここでは、酸性化物質として硝酸と 硫酸のどちらの影響が強いかを、また、アルカリ化物質としてカル
シウムとアンモニアのどちらの影響が強いかを調べてみた。
(1>NO3一とSO4 2一について(図5−6−1、図5−6−2)
図5−6−1と図5−6−2は阪神地区と大学で採水した初期1ミリ降水、
及び1週間降水の試料中におけるNO3一/SO42一の比の値を相
対度数で示したものである。1.0より小さな左側はS O 4 2merichの 状態を示し、1.0より大きな右側はNO3−richの状態を示す。
図5−6−2の上図を見た場合、阪神地区で採水された降雨中のSO
42一 フ溶存量はNOゴより大きく、下図に示されたように、大学に おいて採水された降雨試料中ではNO3一とSO4 2}の寄与がほぼ
同じであった。
通常、都市部においてはディーゼルエンジンを使ったトラックや
工場などの排出ガス中には硝酸を生成する窒素酸化物の含有量が
多いといわれている。しかし、阪神地区の沿岸部は工業地帯であり
発電所や工場の煙突が林立しており、それらから排出される硫黄酸
化物の影響が無視できない。化石燃料の使用による酸性雨への影響 という点では、阪神地区において硝酸だけでなく硫酸の影響も大き いと考えられる。
硝酸は大気中の放出されたNO2が光化学反応により生じたOH ラジカルと反応し生成する。この反応は主に気相反応で進行し、早 い反応である。そのため、放出後、速やかに酸化された硝酸分子が 大気中に浮遊し、降水によって捕捉される。そこで、降り始めの雨 の中に多量:に存在する可能性がある。一方、硫酸も大気中に放出さ
れたSO2がOHラジカルと反応し生成するが、この反応は主に液 相反応で進行する。このような反応様式の違いのため、硝酸は降り 始めの雨に多く、後続降雨で減少するが、硫酸は降り始めの雨と後 続の雨で同じように含まれると考えられる。その結果、降水量の多 い一週間降水の場合には、雨水に溶存しているNO3一濃度よりも
SO42一濃度の方が大きいものと考えられる。
初期降雨と1週間降雨におけるそれぞれのイオンの濃度を比較 した場合、阪神地区、大学、両地区ともSO42一の濃度が、初期降 雨より1週間降雨で高くなり、NOゴは逆に初期降雨で大きくな
っている。このことは図5−6−1と図5−6−2の比較より明らかである。
(2)Ca2+とNH4+について(図5一一6−3、図5一・6−4)
図5−6−3と図5−6−4は阪神地区と大学で採水した初期1ミリ降水、
及び1週間降水の試料中におけるNH4+/Ca2+の比の値を相対
度数で示したものである。1.0より小さな左側はC a 2+richの状
態を示し、1.0より大きな右側はNH4+richの状態を示す。
阪神地区で採水された降雨では、Ca2+の溶存量がNH4+より大 きい。建設現場などから生じる土壌粉塵やコンクリート、自動車が 道路を削り取ることなどにより巻き上がる粉塵などの主成分はC
aCO3である。CaCO3や土壌から供給されるCaOは、硝酸
や硫酸などの酸に出会うと、中和反応により遊離されCa2+が生
じる。
阪神地区では、全体的に交通量が多く、あちらこちらで建設工事 が行われているためであり、都市部特有の傾向が表れている。初期 降雨により、浮遊していたCaCO3が洗い落とされると、後続の 雨に溶け込むCa2+は少なくなる。そのため1週間降雨における
Ca2+の三三量の比率は少ない。
一方、NH4+は農地や家畜などから出る排泄物申のアンモニア や肥料として散布される硫酸アンモニウムなどが起源とされる。ア
ンモニアや硫酸アンモニウムも雨水に取り込まれ、酸と反応すると 中和反応が起こり、NH4+を生成する。図5−6−3の下図より大学 の初期1ミリ降水にNH4+が多く見られるのはこれが原因と考え
られる。
しかし、図5−6−4に見られるように農地が少ない阪神地区におい ても、1週間降雨ではかなりのNH4+が見られる。このことから、
農業以外からの発生起源の存在が考えられる。近年、NH4+の起 源として、自動車の排気ガス対策として導入されている三元触媒が 大気中のN2から次のような反応でNH4+を発生させることが報告
されている。2)
ドキュメント内
兵庫県尼崎市周辺における雨水の調査と化学的特徴についての研究
(ページ 33-36)