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第6章 隣接細胞創傷時の二相性 PKCα トランスロケーションと細胞間情報伝達

6.3 考察

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6.3.2 細胞創傷時の二相性トランスロケーションと

Ca

2+

・ DAG の関係

本実験において,細胞外のCa2+を除去するとPKCαのnearにおいて1次反応 は見られたが 2 次反応は見られず,far においては 1 次反応も見られなかった

(Fig. 6-32).Thapsigarginによって細胞内の小胞体内Ca2+を枯渇させるとnearで のみPKCαの輝度上昇が見られた(Fig. 6-36).この輝度上昇はControlと比較し てピークまでの時間に有意差は見られなかったことと,Fig. 6-37 の反応速度定

数から Controlと同様に2次反応であると考えられる.従来研究により,ヘミチ

ャネルは伸展刺激により ATP を放出することが報告されており,ヘミチャネル を阻害すると伸展刺激による Ca2+伝播も細胞遊走もほぼ完全抑制されることか ら,ヘミチャネルからの ATP の放出は重要な役割を担っていると示唆されてい る[11].さらに,ヘミチャネルはCa2+の流入にも関与していると報告されている

[116].本実験では 18α-GA によってヘミチャネルを阻害すると細胞内の Ca2+

度がControlに比べ低くなり,PKCαの1次反応はみられたが2次反応はみられ

なかった.これらの結果から,PKCαの2次反応には細胞外からのCa2+流入が必 要であることが示唆された.

細胞外のCa2+を除去した実験において,nearで1次反応がみられたのは,隣 接細胞創傷に伴う力学刺激によって細胞のGPCRが活性化したことで,DAGが 産生されたからではないかと考えられる.または創傷した細胞から漏れ出たATP などの細胞内容液に反応した可能性も考えられる.細胞同士が接着していな状 態での物理的創傷実験ではPKCαの反応・局在は確認できていない(付録Fig. 8-12~13).Bryostatin によってPKCαのDAG結合ドメインを阻害すると Ca2+濃度 上昇はみられたが,PKCα の 1 次・2 次反応共にみられなくなったことから,

PKCαの1次反応にはDAGが必要であると考えられる.Bryostatin負荷の実験に おいて,細胞内のCa2+濃度がControlに比べ有意に低くなったのは,活性化され たPKCαがCa2+透過性であるTransient Receptor Potential Cation Channel Subfamily

V Member 1(TRPV1)を活性化することでCa2+の流入を引き起こすと報告があ

ることから[117][118],PKCα の活性化に伴う細胞外からの Ca2+流入が抑制され たことが考えられる.

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6.3.3 メカノセンサーと二相性トランスロケーション

PKCα 阻害剤である Go6976 を負荷すると,細胞内の Ca2+は増加し PKCα は near,far において 1 次反応は見られたが,nearにおける 2次反応は見られなか った.1次反応は他の条件よりも長く持続した.nearでは80 sまで輝度が上昇し たままであり,farでは緩やかに減少が見られた.また,Go6976はRTK 阻害剤

であり[108],RTKによるPKCαトランスロケーションはGPCRの活性化による

PKCαトランスロケーションよりも遅く反応すると報告があることから,今回観 察しているPKCαの2次反応はRTKの活性化が関与している可能性が示唆され た.

次に,Gd3+によって非選択的に Ca2+透過性 MS チャネルを阻害した.その結 果,細胞に創傷を与えると隣接細胞のCa2+濃度上昇が見られた.Ca2+の蛍光輝度

比をControlと比較したところ,有意な差があり細胞内のCa2+濃度が低いという

結果が得られた.SokabeらはGd3+によって伸展刺激時のCa2+伝播が抑制された と報告し,さらにMSチャネルであるTRPC6を阻害するとGd3+による阻害と同 様な結果になったことから,伸展刺激時のCa2+流入はTRPC6が重要だと報告し

ている[11].TRPC6は伸展刺激によって直接的に活性化することと[119],GPCR

によって生成される PLC によって間接的に活性化することが報告されている

[120][121].さらに,細胞間接着を形成しているカドヘリンなどと共局在し相互

作用しているとの報告がある[122][123].これらのことから,本実験において細 胞創傷による張力などの力学刺激によってMSチャネルが活性化し,Ca2+を流入 させていると考えられる.Gd3+負荷時のPKCα はnearにおいて 1 次反応がみら れ,この反応は細胞外の Ca2+を除去した場合と同様な反応であったことから,

GPCRが活性化されていることが考えられる.

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6.3.4 細胞遊走と PKCα の二相性トランスロケーション

成長した組織における細胞は遊走や分裂が抑制または行われない状態になっ ている.しかし,創傷を受けた場合は組織の恒常性を回復させるために様々な細 胞内および細胞間の経路を活性化し創傷治癒を行うことが報告されている

[38][39].細胞が遊走を開始するにはCa2+濃度上昇が必要と報告されており[11],

細胞の遊走実験において,遊走が促進される場合は細胞間接着に関わるタンパ ク質が減少するとの報告がある[19].PKCαの活性化は細胞間接着タンパク質で

あるVE-Cadherinを分解することが報告されている[124].本実験により,細胞創

傷時の PKCαトランスロケーションは 1 次反応と 2 次反応が確認されている.

farにおいてPKCαの1次反応が引き起こった条件(Go6976,suramin,GAP27,

18α-GA)のうち,Go6976と18α-GAでは細胞が全体的に収縮している様子が観

察されたことから,細胞間接着は弱くなっていると考えられる.suramin と

GAP27では細胞の収縮はみられなかった.これはfarでのPKCαの活性化が抑制

されているかと考えられる.2 次反応を引き起こした条件(suramin,GAP27,

Thapsigargin)のうち,suramin と GAP27 では創傷領域へ葉状仮足を伸ばす様子

が観察され,Thapsigargin では創傷領域に面していた仮足の収縮が観察された.

これらの反応はいずれも創傷領域に面している部位のみの変化であった.Tsaiら は細胞遊走の先端では RTKシグナリングによって DAG が産生されていると報 告し,PKC が活性化されることで遊走が促進すると考察している[125].また,

RTK シグナルは Ras に作用することが知られており,Ras は葉状仮足の構築に 関与している[126].以上のことから,PKCαの1次反応によって周辺細胞との細 胞間接着を弱め遊走しやすくし,PKCαの2次反応が遊走方向の決定に関与して いる可能性が考えられる.

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ドキュメント内 九州大学大学院 工学府 機械工学専攻 (ページ 113-117)

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