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第3節  考 察

1 学級目標づくりの授業

 学級目標づくりの授業のねらいは、①生徒一一人一人の学級に対する思いや願い を十分受け止め、それらを生かした学級目標を作り、さらに②下位目標や具体的 活動内容まで決定することによって、学級目標達成へ向けての生徒の活動意欲を 高めることであった。先の結果からわかるように、実験組の方が他の5学級より、

生徒個々人の思いや願いが学級目標に生かされており、授業後の振り返りの結果 を見ると、生徒の活動意欲も高まったといえる。このように、学級目標づくりの 授業のねらいは、ほぼ達成できており、実験組の方が他の5学級よりも丁寧な目 標づくりであったことがわかる。

 先に挙げた授業後の振り返りの結果に注目すると、「自分もクラスのために何 かできそうだという気持ちが出てきましたか」という質問では、出てきたと答え た生徒の割合が高かった。このことから、この授業が生徒の自尊感情に何らかの 影響を与えていることが予想できる。しかし、実験の結果では何の影響も見られ

なかった。これは、このような授業が生徒の自尊感情に与える影響が小さいから か、またはこの時の自尊感情の高まりが単に一時的なものであったからか、のど

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ちらかの理由によるものであろう。また、授業後の感想から判断して、このよう な授業が学級雰囲気に良い影響を与えていることがわかる。その感想のいくつか を拾い上げてみる。

 ・この学級で良かったと思いました。

 ・みんな同じ気持ちみたいだから、うまくやっていけそう。

 ・いろんな意見があることに気づき、一緒に頑張ろうと思った。

 ・みんな仲間のことを考えている。

 ・このクラスにはいい人が沢山いると思った。

 ・仲間っていいなあ。(他資料3−1参照)

このように生徒は級友や学級集団を肯定的に受け止め、受容している。このこと から、学年はじめの時期にこのような学級目標づくりの授業をすることは、学級 雰囲気を良いものにする一つの手だてとなり得るといえる。

 ところで、学級目標は日が経つにつれて忘れられ、単なる飾り、ものになり易い が、学級目標を生きたものにするためには、その目標が次の三つの条件を満たし ておく必要がある。

  ①具体的な活動内容が明確であること

  ②実行可能であること

  ③評価可能であること

学級目標の下位目標や具体的活動内容を設定する際に、目標達成のために「何を しなければならないか1ではなく、「自分には何ができるか」という視点で考えさ せることは、上の三つの条件を満たす上でも有効なのである。

2 朝の会・帰りの会での肯定的評価

 朝の会・帰りの会での肯定的評価については、自尊感情には影響がみられなか ったが、学級雰囲気の参加的雰囲気に有意な影響がみられた。参加的雰囲気の項 目内容は、①勉強に熱心、②掃除に熱心、③行事や学級の活動に熱心、④けじめ のある、⑤落ち着いている、の5項目であり、これらの実験学級における評価が 統制群の5学級の評価よりも有意に高くなっていたのである。実験学級で、第1 学期の学期末に、学級目標の評価を実施してもらった結果(生徒による5段階評 価、資料3−6参照)では、ほとんどの項目で平均点が4点以上になっており、ほ ぼ学級目標が達成できているといえる。また、「クラスのためによく頑張った人」

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を記入してもらったところ、36人中24人の個人名が、よく頑張った内容ととも に挙げられていた。これらのことを合わせて考えると、実験学級では実際に学級 の諸活動によく取り組んでいる生徒が多く、それらの生徒の活動が級友に評価さ れ、認められており、実験学級の参加的雰囲気得点が統制群の5学級より高くな

ったのだといえる。

 学級雰囲気のもう一つの因子である親和的雰囲気の得点については、実験学級 と他の5学級に有意な差がみられなかった。このことについては、その内容項目 が「明るい」「楽しい」「仲がよい」などのやや漠然としたものであり、参加的雰囲気 のようにある程度具体的な形で感じられるものではないので、あまり大きな変化 はみられなかったのであろう。ただ、親和的雰囲気については、何か大きな出来 事(例えば、いじめやグループ間の対立など)があったときには、その得点が有意

に低くなるであろうことは予想できる。

 最後に、自尊感情について考察する。高木3は、中学生を対象とした研究にお いて、ポジティブ・フィードバックが生徒の自尊感情を向上させること、またそ れは、自尊感情の高い生徒よりも低い生徒により効果があることを明らかにして いる。ポジティブ・フィードバックとは、生徒行動について生徒相互に評価させ、

そのポジティブな結果を ウ師が生徒に伝達するというものである。このように生 徒による肯定的評価が生徒の自尊感情に有意な影響を与えることが報告されてい

るのであるが、本研究においてはそのような影響がみられなかった。その原因は 何であろうか。樽木の研究方法と本研究の方法を比較してみると、次のような違 いがあることが分かる。

①肯定的評価の内容や方法の違い

  樽木の研究における肯定的評価の内容は、生徒の行動特性であり、しかも、

 それは、学級全員を対象としたゲス・フー・テストによって評価されたもので  ある。いわば、それは生徒自身を直接評価したものであり、学級集団全体によ  る評価なのである。しかし、本研究における肯定的評価の内容は、生徒の活動  が主なものであり、さらに、それは個人(班長や学級委員、日直、教師など)

 による評価である。

②肯定的評価の伝達方法の違い

  樽木の研究においては、教師が個人面談によって生徒全員に肯定的評価を伝  達している。しかし、本研究では、主に生徒が、朝の会・帰りの会の中で発表  するという形で、肯定的評価を伝えている。しかも、肯定的に評価される回数  も生徒によってまちまちである。何回も評価されている生徒もいれば、中には

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 一度も評価されていない生徒もいたかもしれない。

③自尊感情の測定時期の違い

  樽木の研究では、自尊感情の測定時期は、肯定的評価の前と直後、及び一週  間後である。しかし、本研究での自尊感情の測定時期は、学年はじめの4月と  5月及び7月であり、肯定的評価の時期を基準にすると、それは生徒個々人に  よって異なっている。測定の時期が、肯定的評価の直後の生徒もいれば、一週  間後、あるいは二、三週間後の生徒もいるのである。

以上のように、本研究の方法と樽木の研究方法とではかなりの違いがあり、この 違いのために、本研究では、樽木が明らかにしているような結果を見出すことが できなかったのであろう。しかし、少なくとも樽木の研究結果からみれば、この ような肯定的評価が生徒の自尊感情に何らかの良い影響を与えていることは確か であり、肯定的評価の内容や研究方法を工夫しながら、今後さらに研究を深めて いくことは有意義なことであろう。

瓦坂本正明  『学級の人間関係に関する研究〜中学校における学級活動を中心にして〜』

    兵庫教育大学大学院修士論文 1992 p73

2遠藤辰雄編『セルフ・エスティームの心理学』ナカニシや出版1992p33、 p264 3樽木靖夫  『学級集団行動に及ぼすフィードバック効果に関する研究』

    上越教育大学大学院修士論文 1991

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