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第3節 考察

 本試行は、里親、専門職者、研究者と大学生を対象に、フェーズIで創出された学習ツ ールを3ヵ月の間に利用してもらった。その評価は、里親と大学生それぞれの「アセスメ ント・シート」の事前と事後の変化による効果測定と、全対象者の「実用性アンケート」

の量的および質的分析により行った。しかしながら、本試行評価の結果は、参加者数の少 なさと対象者層の偏りのために一般化はできない。試行に参加した里親は、さまざまな年 齢層の子どもや被虐待児の受託経験もある熟練した里親であり、豊富な養育経験をもって みた学習ツールの評価としては、貴重なデータといえる。しかしながら、18人という数の 少なさでは、専門里親や専門里親希望者の代表性にはとぼしい。専門職者、研究者にあた っても、サンプリング方法は統計手続きによったものではなく、数もきわめて限られてい る。一般人として対象とした大学生は、「アセスメント・シート」の事前・事後のt検定で 有意差をみることのできる人数であったが、年齢層と性別に偏りがある。このように、本 試行評価の結果の一般化には限界があることに注意を払いながら、本学習ツールの有用性

と改善点について、以下考察していく。

1.学習ツールの有用性

 学習ツールの試行評価において、事前事後アセスメントの変化に大きな効果は確認でき なかった。その一方で、「実用性アンケート」では、内容の豊富さ・量や、モジュールの構 成とそれに準じる【ワーク】・【解説】などで、おおむね良い評価が得られた。多くの知識 を得ることができ、専門里親について体系的に構成された学習ツールの重要性を認識する 評価、自分の(時間的)都合や目的に合わせて使うことができるとの評価や、客観的に自 己をふり返り、見つめ直しながら、それに応じて学習ができるという評価は、本学習ツー ルの意図した目的と学習方法の工夫や効用に合致する、肯定的評価である。

 サイトデザインの良さもあるが、実用性アンケートで最も高い評価を得たのは、モジュ ールの構成であった。これは、「順序立って分類されていて、見やすい」ことにおける評価 であるが、自分自身や自分の里子にあてはめて【ワーク】を行い、【評価】を受けて自分の 関心事や二一ズを明らかにし、それらに該当する【解説】箇所へすすむ仕組み等をさして いると思われる。また、この一連の流れにある【ワーク】の評価が高かった。【ワーク】の 本来の意図は、中立的質問法によるユーザーの二一ズをしぼり込むための工夫であった。

しかしながら、ユーザーにとっては、チェックシートに答える方式がわかりやすい、ある いは答えやすいものであり、そのモジュールの学習に入るところでの取りつきやすさの効

用があったのではないかと考えられる。

  【解説】における評価も概して高かったのであるが、解説の豊富さ、丁寧さ、わかりや すさだけでなく、「実践上のアドバイス」「里親の体験談」「里子・養子からのメッセージ」

等で、具体的な事例や対処法を提示している点が、評価されている。「実際の里子の状態・

状況は様々だと思うけど、もしかしたらこのような事も起こるだろう、このように里子は 思っているのかもしれないと、モジュールごとに感じることが出来て良かった」というよ うなことは、里子の養育経験をある程度積んでいる里親にとっても、委託を受けたことの ない年齢層の子どもの場合といったことや、これまで委託を受けた子どもには経験のなか った徴候や問題の場合にもあてはまるであろう。新たな委託に際し、あるいははじめて直 面した問題に際しても有用であると考えられる。

 しかしながら、対象層で評価の相違があった面で、とくに大学生でコンテンツの豊富さ とわかりやすさ、「実践上のアドバイス」や「里親の体験談」等の有用性の評価が、他の対 象層より低かったということでは、この学習ツールの啓発的な利用は効果的でないといえ るかもしれない。実際に里子の養育にあたっていない層にとっては、各モジュールの学習 内容は現実的にとらえることが難しい面があるであろう。一般の人びとやこれから里親に なろうとする人びとに対する利用も視野に入れていくとすれば、実用性アンケートの大学 生の自由記述に多く見うけられたように、里親の全体像がわかるようなコンテンツ等が入 口段階により必要である。

 里親層でも大学生層でも事前事後のアセスメントで大きな変化が得られなかった理由と しては、次の点が考えられる。まず里親に関しては、上述したように里親のサンプル数の 少なさとその代表性の問題がある。統計による検定を実施するにはきわめてきびしい数で あり、参加里親の里子養育経験は似通っていた。すでにさまざまな養育経験をしてきた少 人数の里親では、(後述するが、短期間の試行でもあった)学習ツールでの変化をみること はむずかしかったと推察する。二つ目に、試行期間が短いために、すべてのモジュールを 学習できなかった、すべてのモジュールを丁寧に学習するほどの時間がなかったために、

多くの面での変化を感じられるほどではなかったことが考えられる。実際、この学習ツー ルは、里子の委託を受ける事前の学習だけでなく、養育過程において長く使ってもらうも のである。大学生層においては、若干平均点が上がり有意差が認められたのであるが、里 親に関する知識がほとんどない大学生にとっては、短期間にせよ知識面での収穫は大きか ったのであろう。最後に、このアセスメント項目はオリジナルのもので、その妥当性と信

頼性の検出を行っていないということがある。今後は、この尺度の妥当性、信頼性を検証 し尺度を精査することや、妥当性や信頼性が検出されている別の尺度を併用することなど を検討すべきであろう。この研究における専門里親支援モデルの評価方法について、最終 章でさらに考察を深める。

2.学習ツールの改良点

 前節において、実用性アンケートの改善点や他に知りたいこと、取り上げてほしいこと であげられた項目をもとに、学習ツールの改良点について検討する。

(1)物理的・精神的な負担の軽減

 まず、改善点にあった「物理的・精神的な負担に配慮し、サイトヘのアクセスのしやす さを工夫する」に関し、登録制による個人情報の入力等による精神的な抵抗を感じる人は 少なくないと想像する。しかしながら、本研究で採用しているM−D&Dは、EBPすなわ ち実証的研究を通じた実践にもとづくモデルであり、リサーチと実践のサイクルにより実 践理論や実践モデルを演繹し、その実践から得られた結果を実践理論に帰納させるモデル である。データを取り、それを分析しながらモデルの有効性を検証し、またそれをモデル に活かすことが必要になる。それゆえ、フェーズ皿の試行と改良段階では少なくともデー タ収集は必要である。将来的には現場での普及にともない、この学習ツールの充分な有用 性が検証される段階に入った際に、登録制をやめ、属性アンケートやアセスメント等をは ずし利用することを考えてもよいかもしれない。

 このことと関連し、実用性アンケートの自由記述で物理的・精神的な負担としてあがっ ていた「一人で行うにはかなりのエネルギーを要する」との意見に対し、学習者の学習支 援を行うチュータリング注3)やメンタリング注4)を導入することが考えられる。その場合、

このようなサービスはユーザーにとってメリットとなり、登録制やユーザー情報の提供に 納得が得られるかもしれない。

 この「一人で行うにはかなりのエネルギーを要する」に関するコメントのなかには、里 親の勉強会などで集団で行う提案がある。この背景には、学習意欲の維持や、コンピュー ターあるいはインターネットの操作に対する不安からくる負担といったものもあるかもし れない。そのような問題の軽減には、集団学習が有効であろう。実際、PCユーザーがPC を学んだ方法としては、PC関連の本や雑誌、購入したPCのマニュアルやヘルプ機能で 独学するよりも、知人、家族や学校の授業、会社の研修などにより人からおしえてもらう 方法をとることが多いようである(橋元・石井・三上ほか、2006)。PCの操作方法の習

得に限らず、不慣れなものを習得するに人の手を借りるというのは、多くの生活場面であ ることであろう。この点は、学習ツール自体の改良点というよりは、利用の仕方について のものであるが、今後の試行において集団学習による評価も行う必要がある。

 携帯電話等モパイル機器での学習は、携帯電話の性能もあがっており、性能上は可能で あろう。実際、この試行でも携帯電話で閲覧することができたという大学生もいた。しか しながら、eラーニングのプログラムをモパイル機器で行う方法は一般的ではなく(たと えば、NTTレゾナント・慶磨義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構、2007)、

モパイル機器でのeラーニングの普及とその効果についての動向をみていきながら検討し ていくべきであると考える。

(2)【ワーク】→【評価】→【解説】の動作

 まず、チェックシートの自動採点化については、非常にコストがかかるという問題があ る。叩き合デザインの段階で思考したことであったが、開発費用の事情で搭載しなかった。

それゆえ、学習を展開する【ワーク】→【評価】→【解説】の動作を使いやすくするとい う点で改良をはかりたい(資料13)。

 これについて、試行した叩き台学習ツールでは、トップページに「【ワーク】のチェック シート」と「【評価】→【解説】」のメニューがあるが、チェックシートをクリックすると チェックシートは別画面で表示される。チェックシートを実施し、評価を閲覧するには、

開いたままのトップページ画面の「【評価】→【解説】」のメニューをクリックすることに なり、チェックシートが評価画面に切り替わる。そして、【評価】画面では、評価の項目か ら自分の閲覧したい項目をクリックすると、別画面で【解説】の該当個所が表示される。

このように、自分で不要な画面を閉じない限り、モジュールのトップページ画面と、評価 画面と解説画面、3つの画面がモニターに開くことになる(資料13A)参照)。これだけ でも紛らわしいが、3つも画面が開いた状態でさらに画面どうしが重なり合っていたり、

画面タイトルが見えなくなっていると、画面間を行き来しているうちに、どこを閲覧して いたのか、どの画面を閲覧したいのかわからなくなってしまうということが起こる(資料 13B)参照)。さらに、別のモジュールに行きたい場合は、3つの画面の一番下になってし まっているモジュールのトップページ画面に戻る必要があり、画面右のメニューにある「マ イページ」で移動するか、トップページ下のモジュールを移動するボタンを使わねばなら ない。評価や解説画面を閲覧してそれらの画面が開いたままであれば、それらがトップペ ージを覆ってしまい、メニューやボタンがトップページにあることを覚えていなければ、