随伴性/強化スケジュール
⑤一・一・
⑤・一・一・一・一・
(行動■■一i.〉結果)
(行動一一一一一レ結果)
⑪ ⑪
芝野(2002a)p.83の図をもとに作成
よって、階層の下にある出現頻度が低い行動でも、結果事象と先行刺激との随伴性を適 切に操作することにより変化を与えれば(強化されれば)、出現率が上がり階層の上方にな
りうるし、逆に階層の上にある出現頻度が高い行動でも、その行動が強化されている結果 事象と先行刺激を不十分にすれば、出現率は下がり階層の下方になり潜ませうる。これを、
今顕在化している問題行動とこれから出現させたい好ましい行動にあてはめてみると、そ れぞれの随伴性に変化を与えることで好ましい行動が問題行動にとって代わることができ
ると考えられるのである(図2−4)。
この理論にある結果事象と先行刺激の随伴性を先の補綴的環境の概念にあるオペラント のパラダイムに照らし合わせてみると、人と環境の交互作用のなかで、人は環境により環 境に自分を合わせたり自分に合うように環境を変えたりしながら、環境にうまく適応する 力をもっている様をみてとることができる。さらに、ニッチは潜在的に存在し、人と環境 の交互作用に変化を与える(補綴的環境を創り出す)ことで、それを引き出すあるいはか み合わすということがより解かるのである。
図2・4 プロセティック関係のプログラミング
プログラムミンク
行動出現の順位
r一 ・一・.一I一.一I ・
、 一一一
@「L一…一」
順 位 が
弁別刺激 上.一 げ
る
問題行動 結果
弁別刺激 I 一. 一 好ましい行動 結果
誘発力を持たせる 随伴性/強化スケジュールの調整
順位が下がる芝野(2002a)p.96
Go1diamondのもう一つの理論的特徴は、今ある行動の状況すなわち三項随伴性を時間 の経過のなかでみて、行動をどのように強化しどのように抑制するかをプログラミングす るということである。図2・3のダイアグラムにみられるように、一枚のカードに行動の状 況すなわち三項随伴性の関係が示され、そのようなカードが重なっている。この複数のカ ードの重なりは、時間の流れを表している。カードの重なりの右肩の2つの矢印のように、
カードを左手前方向にみていけば、過去へ向かってカードの連なりをみるということであ り、それはすなわちその人が過去に経験した三項の随伴関係にある歴史(ヒストリー)を
みることになる。また逆に、右上の方向にカードの重なりをみるということは、未来へ向 かってこれから先に起こりうる三項の随伴関係が示されたカードが並んでいるととらえら れる。ソーシャルワークの援助あるいは介入においては、援助目標を達成するために、先 行刺激・行動・結果事象からなる三項の随伴関係をどのように操作するかを1枚1枚のカ ードに記入し、援助プログラムを作成していく(プログラミングする)というように考え るわけである。
このGo1diamondの理論は、芝野のケース・マネジメントの実践(芝野・山田、1991)
や、子ども虐待対応のためのケース・マネジメント・マニュアルの開発的研究(芝野、2001;
2002a)に反映されていることがみうけられる。2002年の『社会福祉実践モデル開発の理 論と実際』のなかでは、プロセティック・アプローチにもとづくケース・マネジメントと
して、その概念が整理され紹介されている(芝野、2002a)。さらに近年では、先にふれた
「人と環境のインターフェイス・マネジメント(person−en凶。nmentIinte曲。e management:PEIM)」として、その理論と手続きの体系化を図りつつある(芝野、2005b;
2007)。
3.ThomasのDR&UとD&D
芝野がわが国で開発的研究を紹介したのは1980年代半ばのことである(芝野、1984a)。
自身がシカゴ大学社会福祉大学院の博士課程時代に携わったPinkstonとFriedmanによ る親子関係の問題に対する介入モデル開発プロジェクトを、Thomas(1978)のDR&U にしたがって紹介し、わが国のソーシャルワークにおける開発的研究の必要性を主張した。
1980年代末からは自身の研究においてDR&Uを採用し、以下のような特定の問題に対す る介入プログラムの開発的研究をいくつも行っている。
○市の総合児童センターにおける「親と子のふれあい講座」(神戸市総合児童センター、
1990;1992;1994;1996;2000;桑田・芝野、1990;中川・芝野、1993;芝野、2002a)
グループ・ペアレント・トレーニングを開発し、「0歳児と親」「1歳半児と親」「3歳児 と親」「おねしょが疑われる小学校低学年児と親」版がある。市内全児童館に普及を図り、
研究会メンバーによる実施と各児童館による実施が現在も続けられている。
○市の健康開発センターにおける喫煙者対象のスモーキング・コントロール・プログラム (木村、1993)
○介護専用型有料老人ホームでの介護スタッフによる要介護高齢者の 尊厳ある生活 へ の環境調整プログラム(芝野、1995)
○老人保健施設での介護スタッフによる頻回な要求行動を示す高齢者に対する環境調整プ ログラム(遠藤・芝野、1998)
○児童養護施設における早期家庭復帰援助プログラム(遠藤・芝野、1998)
Thomas(1978)のDR&Uは、①問題の選択と分析(ana1ysis)、②介入手続きの開発
(deve1opment)、③手続きの試行と評価(evaユuation)、④手続きの宣伝・普及(雌sion)、
⑤採用・実施(adoption)の5つのフェーズから構成されていた。さらに、これらの開発 的研究の手順をより詳細にし、②開発のフェーズと③評価のフェーズの間に新たな援助技 術をデザインする概念をとり入れ、その手続きを示したものが、「デザイン・アンド・ディ ベロプメント」(design and deve1opment:D&D)である(Thomas,1984)。そして、
芝野(2002a)が「後期D&D」と称するRothmanとThomas(1994)のD&Dは、分析
のフェーズが2段階に具体化され、宣伝・普及と採用のフェーズが「普及(dissemination)」
にまとめられた5つのフェーズとなっている。各フェーズの名称が具体的でわかりやすく され、各フェーズがそのプロセスにおいて重なりながら並行することが図示された。D&D を採用している芝野の研究では、子ども虐待対応ケース・マネジメント・マニュアルの開 発的研究(芝野、2001;2002a)がある。
以上のように、芝野はThomasのDR&UとD&Dを自身の研究に活用しながら研究し
つづけ、その開発手続きにより研究と実践の統合を可能にし、その有用性を実証してきた。また、ThomasのD&Dにあたっては、解決すべき人の問題状況に対する新たな介入方法 を創出するデザインの概念に関し、その創出の過程には「問題の把握と既存の介入方法の 精査という理性的プロセスに加えて、想像力を駆使し、新たな援助方法を創り出す創造的 プロセスがあることを教えてくれる」(芝野、2002:124)と、目標を定めたイノベーショ
ンにおける芸術性を重視している。その一方で、RothmanとThomasのD&Dは日常の
実践のなかで活用するには複雑すぎ、そのプロセスをより簡素化できるのではないかと芝野は感じてきた(芝野、2002a)。こうした経緯をもって、RothmanとThomasのD&D
をより実践で活用しやすくする視点から、芝野は開発的手続きに修正をほどこし簡略化し た。それが、M・D&Dモデルとなったのである。4.まとめ
開発的研究の必要性は、第3節でみてきたように、ソーシャルワーク実践の有効性を高 めることであり、理論と実践を統合することにあった。それを具現化する開発的研究のモ デル、手法や手続きがさまざまな研究者により考案され、活用されるようになった。芝野
(2002a)のM・D&Dモデルも、開発的研究の先駆者であるThomasの手続きが基盤とな っている。しかしながら、M−D&Dは、 社会福祉固有 の実践モデルとして、新たなテク ノロジーの創造とイノベーションの過程というThomasの工学的発想に、より「社会福祉 の心を吹き込む」(P.143・144)ものである。それが指すのは、「人と環境の一体性の中で、
人のポジティブな能力を損なう環境が問題をもたらしており、そのポジティブな能力を補 綴する環境、すなわちポジティブな能力が育まれるプロセティック環境を創り出す」
(p.131)というプロセティック・アプローチの視点である。
①人の成長過程において、②問題解決(適応)能力すなわち「コンビテンス」を高める ために、③オペラントのパラダイムにもとづいて、④プログラミングすることが、プロセ ティック・アプローチの特徴であり、本質である(芝野、2002a)。人の生活を包括的にと
らえる、すなわち人と環境の交互作用を時間の流れを考慮してみていくという視点には、
生活の過程において「成長する」という意味が含まれている。そのなかで、コンビテンス をプロセティック環境のなかではぐくみ高めることがプロセティック・アプローチの目標 であり、それを実現させるためにオペラントのパラダイムを用い、援助計画をプログラミ ングするのである。
芝野のlM−D&Dモデルは、プロセティック・アプローチの視点をもってその開発的研究 の手続きを具体的に提示している。しかしながら、その手続きは実践家をガイドしてくれ るものであって、それに則って研究をすすめれば良い実践モデルができるというものでは ない。それに加えて大事なものは、新たな環境を創りだすための実践家の想像力と創造性、
さらに芸術性(artiStiCSenSe)であると考えられており、それゆえ、実践家の感性と自由 裁量を重視した援助活動を尊ぶ姿勢が示されている(芝野、2002a)。