本研究では、対流併用型放射空調の効果を設計や運用において考慮するために、微気流併用型 放射空調を対象として実測調査及びシミュレーションを行い、気流を併用させることによる快 適性向上効果と設定温湿度緩和効果を明らかにした。また、天井放射パネルの熱量測定において、
2枚の放射率の異なる熱流計を用いて測定する汎用的な方法の提案を行い、放射熱量と対流熱量 を精度よく分離測定することを可能とした。以下に結論を示す。
第3章では、汎用的な天井放射パネルの熱量測定方法の提案を行った。熱流計は自動車部品の 測定に使用されてきた半導体からなるセンサを使用する。アルミ蒸着したセンサと通常センサ の 2 枚の異なる放射率のセンサを同時に使用することで値の線形補間を行い、各部材の放射熱 伝達量と対流熱伝達量を分離測定する。精度よい分離測定が可能であることで、設計段階でのパ ネル処理熱量予測を可能とし、機器能力決定などの知見となる。
第4章では、夏季冷房検証結果を示した。
天井放射空調に気流を付加することには、パネル付近における冷気溜まりの居住域空間への 対流を促進させる効果あり、気流のない一般放射空調と比較して低い室内温度が形成できるこ とが明らかとなった。気流は人体の皮膚表面を対流冷却するため、ASHRAE と比較して快適範 囲を拡大させる効果をもつ。ただし設定温度緩和効果が大きく設定湿度緩和効果は小さい。
併用する気流は、室温同温の0.1m/s~0.18m/s程度の変動微風とすることで、多くの執務者か ら風温、風速共に適切だという意見が得られた。従来空調と異なる室温程度の穏やかな気流が執 務者の快適感を与えることから、放射空調に気流を併用させる有用性が明らかとなった。
以上より微気流併用型放射空調の快適性向上効果と設定温湿度緩和効果が明らかとなった。
第5章では冬季暖房検証結果を示した。
冬季運用方法は一般的な天井放射暖房と同じである。天井放射暖房であっても高さ100mmか
ら1600mmにおける上下温度差が1K未満の空間に温度調和することが可能である。室温中央値
が23.4°Cであっても執務者の温冷感申告値は低く、主にペリメータ付近での不快申告が多かっ
た。放射空調の適切な運用には外皮性能やペリメータ空調の運用方法が重要であると考察でき る。また、湿度調和の立ち上げに時間がかかったことから、夏季には良好であった天井上で吹き 出すデシカント空調の冬季運用方法の検討が必要である。
第6章ではシミュレーションにより省エネルギー効果の検討を行った。
26°C50%設定で運用を行う一般水式放射空調と比較して微気流併用型放射空調は微気流ファ ンにより空気搬送動力が増加するものの、27°C55%設定温湿度緩和によるデシカント空調のエネ ルギー消費量削減効果から、7.4%の省エネルギーとなる。また、AHUを用いた従来空調と比較 して搬送動力の低減、EHPチラーの送水温度緩和効果から、39.4%省エネルギーとなる。以上の
結果から微気流併用型放射空調の省エネルギー効果が明らかとなった。
本研究より、微気流併用型放射空調の快適性向上効果および設定温湿度緩和に伴う省エネル ギー効果が明らかになった。よって、対流併用型放射空調の有用性もまた明らかであると同時に、
その気流が変動微風であることの重要性も明らかとなった。