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第4章から第8章に至るまで、JNSとMNSに見られた断りのコミュニケーションを包 括的に捉えることを目的とし、断りに至るまで、断り発話の特徴及び各断りの連鎖の様相、

断りの展開パターンに分けて分析してきた。本章では結果をまとめ、総合的考察を行った うえで、本研究の意義と今後の課題について述べる。

9.1 本研究のまとめ

研究Ⅰ 勧誘から「第 1 の断り」に至るまでにおいて

課題1 言語行動の有無について、JNSとMNSに差が見られるか。

断りに至るまでに言語行動が見られたのは、JNSが10組、MNSに12組に過ぎず、JNS とINSに差は見られなかった。また、断りまでに何の言語行動も表出せず、すぐに断りを 表出しないデータが、JNSは25組、MNSは23組であったことから、断りの表出までに 言語行動のない割合のほうが高いことが示唆された。

課題2 言語行動に見られる意味公式について、JNSとMNSにどのような特徴が見られ

るか。

JNSには【情報要求】【ためらい】【情報確認】が見られ、MNSは【情報要求】の占 める割合が高かった。断りに至るまでには、MNS は積極的に勧誘に応えようという態度 を表出し、JNSは積極的な態度を表出する時もあれば、時間稼ぎをして回避しながら断り の表出をすることがあるということから、JNS と INS では、心理的負担の表出のしかた が異なるということが示唆された。

研究Ⅱ 第 1 の断りについて

課題1 意味公式使用数に、JNSとMNSにどのような差違が見られるか。

意味公式使用数は、JNSは使用する意味公式数が少なく、MNSのほうが多いことが分 かった。JNSには使用数1、つまり単独使用が見られた一方で、MNSには使用数4以上 の会話例が多く見られた。

課題2 初出意味公式において

2-1 カテゴリーに差が見られるか。

初出意味公式については、JNSにもMNSにも共通して「直接的断り」はほとんど見ら れなかった。JNSには「間接的断り」と「付随表現」が見られ、MNSはほとんどが「付 随表現」であった。

2-2 意味公式には具体的にどのようなものが見られるか。

JNSは初出に【言い訳】が出現するデータが多く見られた。「付随表現」に関してはJNS には【ためらい】【願望】【繰り返し】などの種類が見られたが、MNS はほとんどが【た めらい】であり、直接性を軽減する方略に違いがあることが分かった。

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課題3 意味公式の出現パターンにおいて

3-1 どのようなカテゴリーのパターンが見られるか。

意味公式出現パターンは、JNSにもMNSにも「付随表現」+「間接的断り」が共通し て多く見られた。JNSには「間接的断り」の単独使用が多く見られ、MNSには「付随表 現」+「直接的断り」+「間接的断り」と、「付随表現」の連続使用が見られた。

3-2 意味公式は具体的にどのようなものが見られるか。

JNSの単独使用は、ほとんどが【言い訳】で、MNSは、すべて【ためらい】+【不可】

+【言い訳】であった。そして、「付随表現」+「間接的断り」は、JNS は【繰り返し】

+【言い訳】、【願望】+【言い訳】、【ためらい】+【条件提示】などのバリエーションが あったが、MNSはほとんどが【ためらい】+【言い訳】であった。

以上のことから、「第 1 の断り」においては、言葉少なく手短に、かつ間接的断りを多 用して断りを表出するJNSと、直接的断りを使用しつつも、付随表現や間接的断りをその 前後に接続させ多くの機能を使用して断りを表出するMNSの違いが明らかになった。

研究Ⅲ 第 2 の断り以降について

課題1 第2の断り以降の出現についてJNSとMNSで差が見られるか。

JNSは「第1の断り」のみの出現に留まるデータが32組(91%)で、第2の断りが出現 したデータは3組(9%)であった。一方MNSは「第1の断り」のみの出現から、第5の断 りまでの出現に至るまで様々なバリエーションが見られた。このことからJNSはいかなる 断りでも 1度断ったら、その断りは受諾されるとことが示唆され、MNS は断りを表出し ても、何度か再勧誘が起こり、断りが連続して出現するというコミュニケーションスタイ ルが示唆された。

課題2 第2の断りについて

2-1 意味公式使用数に、どのような差違が見られるか。

MNSの「第2の断り」における意味公式使用数においては、使用数1、つまり単独使用 の例が見られた。意味公式使用数が減少したことから、「第 2 の断り」では断りの際に使 用する機能が少なくなることが示唆された。

2-2 初出意味公式において

2-2-1 カテゴリーにどのような差が見られるか。

初出意味公式は「第 1の断り」ではほとんどが付随表現であったが、「第2の断り」で は、間接的断りの割合が増加した。

2-2-2 意味公式は具体的にどのようなものが見られるか。

「第1の断り」では、【ためらい】がほとんどを占めていたが、「第2の断り」では【た めらい】と【言い訳】が見られた。ただし、【言い訳】の使用が増加し、【ためらい】の使 用は減少した。

124 2-3 意味公式の出現パターンにおいて

2-3-1 どのようなカテゴリーのパターンが見られるか。

意味公式出現パターンは、「付随表現」+「間接的断り」と「間接的断り」単独使用の組 み合わせが多く見られた。

2-3-2 意味公式は具体的にどのようなものが見られるか。

単独使用は、すべてが【言い訳】で、その次に【ためらい】+【言い訳】の組み合わせ が多く見られた。それ以外でも【言い訳】+αや【将来の接触に言及】+αの組み合わせ が多く見られた。

以上のことから、「第2の断り」の様相は、「付随表現」の減少や「間接的断り」の増加 によって、JNSの「第1の断り」に近づくことが分かった。

課題3 第3の断りにおいて

3-1 意味公式使用数に、どのような差違が見られるか。

意味公式使用数は1,2が最も多かったが、「第2の断り」で見られなかった意味公式使 用数5以上のデータが出現した。

3-2 初出意味公式において

3-2-1 カテゴリーはどのようなものであるか。

「第2の断り」に比べて「直接的断り」の割合が増加し、「間接的断り」や「付随表現」

の使用割合にも変化が見られた。

3-2-2 意味公式は具体的にどのようなものが見られるか

第1、第2の断りでは、ほとんど見られなかった【不可】、【代案提示】、【説得】が出現 し、【ためらい】の使用と【言い訳】の使用は減少した。

3-3 意味公式の出現パターンにおいて

3-3-1 どのようなカテゴリーのパターンが見られるか。

第1、第2の断りと同様に、「間接的断り」単独使用、「付随表現」+「間接的断り」な どが見られた。第 2 の断りとは異なり、「直接的断り」+「間接的断り」のパターンが複 数見られることが明らかになった。また、付随表現の連続使用については、使用意味公式 数が5以上のデータに、3回もしくは4回連続使用しているものが見られた。

3-3-2 出現パターンの意味公式は具体的にどのようなものが見られるか。

間接的断りの単独使用については、第1、第2の断りに見られなかった【説得】と【代 案提示】が出現した。それ以外の「間接的断り」+α、もしくはα+「間接的断り」のよ うに、「間接的断り」を使用した出現パターンでも【説得】と【代案提示】が増加した。

課題4 第4、第5の断りについて

4-1 意味公式使用数に、どのような差違が見られるか。

第4、第5の断り自体は、全MNSデータから見ると割合は少なくなり、他の断りと比

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較して特に変化は見られなかった。「第4の断り」においては意味公式使用数1から5以 上までが見られ、「第5の断り」では、意味公式使用数1と2が見られた。

4-2 初出意味公式において

4-2-1 カテゴリーはどのようなものであるか。

「第4の断り」でも「第5の断り」でも、3種類のカテゴリーが見られたが、双方とも、

「間接的断り」が多く見られた。

4-2-2 意味公式は具体的にどのようなものが見られるか。

「第4の断り」においては、【不可】【代案提示】【説得】【願望】【困惑】などが、「第5 の断り」では、【不可】【言い訳】【謝罪】などが見られた。

「第4の断り」においては【代案提示】と【説得】の出現数が減少していないことが分 かる。また、【ためらい】と【驚き】に関しては、第 1から第5の断りに進むにつれて、

徐々に減少しているということが言える。

4-3 意味公式の出現パターンにおいて

4-3-1 どのようなカテゴリーのパターンが見られるか。

「第 4 の断り」については、「間接的断り」+「直接的断り」、「間接的断り」+「間接 的断り」など、すべてにおいて「間接的断り」を使用したパターンが見られた。また、「第 5の断り」では、「間接的断り」、「直接的断り」の単独使用、「付随表現」+「間接的断り」

が見られた。

「第1の断り」から「第 5の断り」まで共通して出現したのは、「間接的断り」の単独 使用と、「付随表現」+「間接的断り」の出現パターンであった。また、「付随表現」+「付 随表現」+「間接的断り」と、「間接的断り」+「間接的断り」+「付随表現」の出現パタ ーンは「第1の断り」から「第3の断り」まで連続して見られた。

4-3-2 出現パターンの意味公式は具体的にどのようなものが見られるか。

「第 4 の断り」では、【説得】+【言い訳】、【ためらい】+【説得】、【説得】+【言い 訳】+【驚き】+【言い訳】のように、【説得】を使用したものの割合が高かった。

「第 5 の断り」では、【言い訳】【謝罪】【説得】【不可】の単独使用と、【願望】+【言 い訳】が見られた。

全体的にみると、付随表現の出現率が減少してきて、間接的断りの割合が増えた。初出 意味公式でも付随表現の出現率が減少してきていることが言える。

以上MNSにおいては、第2の断りでは、付随表現の減少と間接的断りの役割が増加し、

第3では直接性増加、使用機能数増加、説得と代案提示が出現してくる。第4、第5では 付随表現の出現がほとんどなくなるというそれぞれの特徴が明らかになった。