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第2章では、先行研究を概観し、本研究での立場や着目したい分析観点について述べた。

本章では、各研究を分析していくのに必要なデータについて、その収集方法から分析方 法、分類の基準となる分析枠組について詳述していくこととする。

3.1 調査方法

3.1.1 データ収集地と期間

本研究ではロールプレイの手法を用い、データを収集することとした。日本におけるデ ータ収集地は北関東の某大学で、収集は2008年2月から3月にかけて行った。一方イン ドネシアにおけるデータ収集地は北スラウェシ州の某大学で、2008年3月から 4月にか けて収集を行った。

3.1.2 調査対象者

日本語母語話者とマナド語母語話者を比較対照する場合には、同じ属性の者同士の会話 データが必要であると考えた。また性差による影響を排除し、年齢や条件がある程度統制 された環境でデータ収集する必要があると考え、調査対象者を大学で学ぶ女子学生に設定 した。また、会話データは同等関係や上下関係など様々な関係でのデータを比較すること も考えたが、待遇関係だと年齢差や親疎を統一することが難しい。仮に「親しい先輩に話 すようにロールプレイをしてください」あるいは「親しくない同等の知り合いに勧誘する つもりで話してください」などの指示を出したとしても、それで得られたデータは、現実 からかけ離れる可能性も出てくる。現実の会話により近いデータを収集することを考え、

今回は同等関係のデータにした。以下調査対象者を、日本語母語話者の女子学生(以下

Japanese Native Speaker JNS)と、マナド語母語話者の女子学生(以下 Manado-Malay

Native speaker MNS)に限定する。

調査対象者の詳細は、以下表3-1と3-2の通りである。JNSが70名(35組)、MNSが 70名(35組)で、属性は全員大学生、年齢は18歳から24歳までである。JNSは北関東の 某大学でデータ収集を行い、調査対象者の出身地は、群馬県が最も多く、新潟県、秋田県 などもいた。MNS は北スラウェシ州マナド市やマナド市周辺のミナハサ県の出身者でマ ナド語を母語とする者である。MNSは第2外国語の日本語のクラスに在籍者であったが、

データ収集当時の MNSは学習歴が短く、日本語能力は簡単な挨拶ができる程度で、文字 は定着していなかった。また、学生全員渡日経験はなく、第2外国語としての日本語の授 業を担当する講師は全員インドネシア人であるため、普段日本人との接触は皆無に等しい。

以上のことから、MNSは日本語の知識や日本文化の影響はないものとする。

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表 3-1 JNS 調査対象者の構成 データ番号 勧誘者A/

断り手B

出身 学年

JNS1 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS2 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS3 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS4 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS5 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS6 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS7 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS8 A 秋田県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS9 A 群馬県 大学1年

B 群馬県 大学1年

JNS10 A 新潟県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS11 A 群馬県 大学1年

B 群馬県 大学1年

JNS12 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS13 A 群馬県 大学1年

B 群馬県 大学1年

JNS14 A 栃木県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS15 A 群馬県 大学1年

B 群馬県 大学1年

JNS16 A 栃木県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS17 A 群馬県 大学1年

B 栃木県 大学1年

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JNS18 A 群馬県 大学3年

B 新潟県 大学3年

JNS19 A 群馬県 大学2年

B 群馬県 大学2年

JNS20 A 新潟県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS21 A 群馬県 大学2年

B 新潟県 大学2年

JNS22 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS23 A 群馬県 大学2年

B 埼玉県 大学2年

JNS24 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS25 A 群馬県 大学2年

B 群馬県 大学2年

JNS26 A 群馬県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS27 A 栃木県 大学2年

B 群馬県 大学2年

JNS28 A 新潟県 大学3年

B 群馬県 大学3年

JNS29 A 群馬県 大学4年

B 群馬県 大学4年

JNS30 A 群馬県 大学4年

B 新潟県 大学4年

JNS31 A 群馬県 大学4年

B 群馬県 大学4年

JNS32 A 群馬県 大学4年

B 秋田県 大学4年

JNS33 A 群馬県 大学4年

B 群馬県 大学4年

JNS34 A 栃木県 大学4年

B 群馬県 大学4年

JNS35 A 群馬県 大学4年

B 群馬県 大学4年

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表 3-2 MNS 調査対象者の構成 データ番号 勧 誘 者 A/

断り手B

出身 学年

MNS1 A ミナハサ県 大学1年

B マナド市 大学1年

MNS2 A ミナハサ県 大学3年

B ミナハサ県 大学3年

MNS3 A トモホン市 大学3年

B ミナハサ県 大学3年

MNS4 A マナド市 大学3年

B マナド市 大学3年

MNS5 A マナド市 大学1年

B マナド市 大学1年

MNS6 A マナド市 大学3年

B 北ミナハサ県 大学3年

MNS7 A マナド市 大学1年

B ミナハサ県 大学1年

MNS8 A ミナハサ県 大学3年

B ミナハサ県 大学3年

MNS9 A ミナハサ県 大学2年

B トモホン市 大学2年

MNS10 A トモホン市 大学3年

B ミナハサ県 大学3年

MNS11 A マナド市 大学2年

B ビトゥン市 大学2年

MNS12 A マナド市 大学3年

B マナド市 大学3年

MNS13 A マナド市 大学2年

B トモホン市 大学2年

MNS14 A マナド市 大学3年

B ミナハサ県 大学3年

MNS15 A ミナハサ県 大学2年

B マナド市 大学2年

MNS16 A 南ミナハサ県 大学3年

B マナド市 大学3年

MNS17 A マナド市 大学1年

B マナド市 大学1年

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MNS18 A ビトゥン市 大学3年

B マナド市 大学3年

MNS19 A ミナハサ県 大学1年

B ミナハサ県 大学1年

MNS20 A マナド市 大学3年

B ミナハサ県 大学3年

MNS21 A マナド市 大学1年

B マナド市 大学1年

MNS22 A トモホン市 大学3年

B マナド市 大学3年

MNS23 A トモホン市 大学1年

B マナド市 大学1年

MNS24 A マナド市 大学3年

B トモホン市 大学3年

MNS25 A マナド市 大学1年

B トモホン市 大学1年

MNS26 A マナド市 大学3年

B ミナハサ県 大学3年

MNS27 A ミナハサ県 大学1年

B 南ミナハサ県 大学1年

MNS28 A ミナハサ県 大学3年

B マナド市 大学3年

MNS29 A ミナハサ県 大学3年

B ミナハサ県 大学3年

MNS30 A マナド市 大学2年

B 北ミナハサ県 大学2年

MNS31 A マナド市 大学2年

B ミナハサ県 大学2年

MNS32 A ミナハサ県 大学1年

B マナド市 大学1年

MNS33 A ミナハサ県 大学1年

B マナド市 大学1年

MNS34 A ミナハサ県 大学1年

B ミナハサ県 大学1年

MNS35 A マナド市 大学1年

B 南ミナハサ県 大学1年

40 3.1.3 調査手順

本調査前に、2008年1月から 2月にかけてパイロット調査を行った。まず筆者が作成 したロールカードを使って、JNS同士のペア、MNS同士のペア数組にロールプレイをし てもらった。ロールプレイ終了後に、場面の適切性、ロールカードの内容や指示の与え方 などについて、分かりにくかったり改善したほうがよかったりする箇所についてコメント をもらって調整し、最終的に本調査のものを決定した。

本調査では、JNSにもMNSにも、調査開始前に本研究の目的や内容を説明して、録音 データは研究にのみ使用する旨を伝えた上で、ロールプレイの協力者を募った。研究内容 の説明の際には、断りについてということは明言せず、大学生のコミュニケーションスタ イルについて、日本語母語話者とマナド語母語話者を比較する研究であるとだけ伝えた。

調査について理解を得られた学生を調査対象者とし、ロールプレイ会話の録音に対する同 意を得た。同等関係の自然な会話を録音したい旨を伝え、普段よく話すクラスメート同士 でペアを組んでもらい、一組ずつ部屋に呼び出してロールプレイ会話の録音を行った。

調査協力者にはなるべく自然な会話を録音したい旨を伝え、普段友人同士で話している のと同じ雰囲気で話すように指示をした。言葉遣いで丁寧さの度合いを測ったり、方言で 地域差を見たりするものではないことを説明したため、方言使用に関しては一切制限を行 わなかった。JNSもMNSもロールプレイ会話はICレコーダーにすべて録音した。

3.1.4 ロールプレイの内容

ロールプレイの内容については、日本語母語話者とマナド語話者、インドネシア人学生 数名に相談して、日本とインドネシア両国の大学生活で起こりうる「映画への勧誘」に設 定した。またロールプレイに慣れていない学生が調査対象者となる可能性も高いため、慣 れるために練習する必要があると判断し、練習場面として「食事への勧誘」も設定した。

断る理由としては、両国で起こりうる「用事で田舎に帰る」という状況に設定した。断 る理由の候補には「(授業やアルバイトで)忙しい」というものもあった。パイロット調査 の対象者であったJNSによると、日本の学生は、学生毎に履修科目も異なり、アルバイト やサークル活動の予定が入っていることもあるため、「忙しい」というのは容易に想像でき るとのことだった。しかしパイロット調査の対象者のMNSによると、インドネシアの学 生はほとんどアルバイトをする習慣がなく、クラスメート同士なら履修している科目もほ とんど同じなので、忙しさの度合いが違うという状況が考えられにくいというコメントが あった。そして日時については、次の日である「明日」に設定した。日時の設定の候補に は、来週の日曜日、あるいは週末というのも上がったが、MNS によるとインドネシアの 学生にとって、友人を映画に誘うのはたいてい当日や次の日などで、1週間後や週末など、

少し先に誘うということがほとんどないため想像できないというコメントがあった。一方、

JNSによると、日本の学生にとって1週間後や週末などの誘いは想定しやすいが、当日や 次の日の誘いというのは唐突な印象があり、友人同士でも多くはないと言うコメントがあ