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第 2 章 研修の実施

2.5 緊急被ばく医療専門講座Ⅰ(救護関係者コース) 〔専門講座Ⅰ〕

専門講座Ⅰは、原子力施設が立地・隣接する全ての道府県の搬送関係者を対象として、

参加者を一堂に集めるセンター型として4地域において実施した。

専門講座Ⅰの開催にあたっては、原則、2日目の実習を原子力施設で実施することとし、

開催地域の消防機関および原子力事業者と協議・検討の上、開催日を決定した。専門講座

Ⅰのカリキュラムは下記の通りである。

なお、1回目の唐津/玄海での開催は、実習 1のうち防護服の着脱方法について放射線 管理要員が指導したが、2 回目以降は教授方法の平準化を図るため、同じ講師が毎回指導 を行った。また、実習についても1 回目の唐津/玄海での開催は、3つの想定で実施した が、2 回目以降は、アンケート結果等を踏まえ、活動時間が長く、適正な隊編成が組める よう、2つの想定で実施した。

緊急被ばく医療専門講座Ⅰ(救護関係者コース)カリキュラム

【1日目】

8:30~ 8:40 開会

8:40~ 9:10 講義1 救助のための危機管理総論 -我々に必要なリスク認知と判断-

9:10~11:20 講義2 救助活動特論 -活動の困難性と放射線リスクを踏まえて-

特論1)放射線災害の危険

特論2)覚知と出場「放射線対応が要るのか?」

特論3)発生現場の特徴

特論4)現場到着「周囲の状況」

特論5)現場活動「時間管理の重要性」

特論6)終結「活動の放射線学的評価」

11:20~12:00 実習1 空間線量率計の取り扱い方法と防護服の着脱方法 12:00~13:00 休 憩

13:00~16:40 机上演習 放射線災害における救助活動と指揮判断 16:40~17:40 原子力施設における消防活動(実習2)ガイダンス 17:40~17:55 質疑応答・意見交換

17:55~18:00 まとめ

【2日目】

実習:3想定 実習:2想定 8:30~ 9:00 実習準備 8:30~ 9:00 実習準備 9:00~14:20

実習2 原子力施設における消防活動

・想定1:転落事故

・想定2:宙吊り事故

・想定3:下敷き事故

9:00~12:40

実習2 原子力施設における消防活動

・想定1:宙吊り事故

・想定2:下敷き事故

(11:40~12:40)休憩 12:40~13:40 休憩

14:20~16:00 検証 13:40~16:00 検証

16:00~16:30 まとめ・閉会 16:00~16:30 まとめ・閉会

(1)開催実績

開催日 開催時期 開催場所 受講者数

1 927日(木)

~928日(金)

1日目:唐津市消防本部

2日目:九州電力株式会社玄海原子力発電所 20 2 111日(木)

~112日(金)

1日目:岩内地方文化センター

2日目:北海道電力株式会社泊発電所 20 3 115日(月)

~116日(火)

1日目:敦賀美方消防組合消防本部

2日目:関西電力株式会社美浜発電所 23 4 1120日(火)

~1121日(水)

1日目:松江市消防本部

2日目:中国電力株式会社島根原子力発電所 25

合 計 88

(2)実施内容

専門講座Ⅰの講義、実習に関する実施内容は以下の通り。

講義1:救助のための危機管理総論―我々に必要なリスク認知と判断―

危機発生時の一般公衆と危機対応者がなすべき行動に基づき、それぞれのリスク認知の あり方(判断、思考過程、因子、認知方法)を実際に認知行動の傾向について例題を用い て、着目する視点・傾向について説明を行った。

講義2:救助活動特論―活動の困難性と放射線リスクを踏まえて―

救助活動特論では、放射線災害において、通常の活動に付加してどのような対応が必要 となるかを救助活動の時系列に沿って説明を行った。具体的な項目は以下の通り。なお、

「発生現場の特徴」については、昨年度までは各地域の事業者が説明を行っていたが、教授 方法の平準化を図る観点から、全地域共通の内容とし、原安協が説明を行った。

・放射線災害の危険

・覚知と出場-放射線対応が要るのか?-

・発生現場の特徴

・現場到着-周囲の状況-

・現場活動-時間管理の重要性-

・終結-活動の放射線学的評価-

実習1:空間線量率計の取り扱い方法と防護服の着脱方法

2日目の実習でも使用する空間線量率計(電離箱サーベイメータ、NaIシンチレーショ ンサーベイメータ)の使用方法および防護服(タイベックスーツ)の着脱方法について実 習を行った。

机上演習:放射線災害における救助活動と指揮判断

受講者を2班または3班に分け、転落事故のケースについて、覚知(119通報)から出 場、現場到着、救出活動、傷病者引き渡し、帰隊までの一連の活動について、救助隊、救 急隊、指揮隊、放射線管理要員が連携して検討を行った。また、昨年度のアンケート結果 も踏まえ、演習問題を5問から3問に減らし、検討時間を長くとった。

原子力施設における消防活動(実習2)ガイダンス

2日目に実施する実習の内容、実習場所、注意点等について説明を行うとともに、2日 目の実習時の役割分担については、中隊長を中心に受講者同士で相談し、決定をした。

実習・検証:原子力施設における消防活動

実習は、1回目(玄海原子力発電所)においては、机上演習の実践として、事故状況の 異なる 3 ケース(転落事故、宙吊り事故、下敷き事故)について、ダミー人形等を用い て設営し、救助活動は、消防、原子力施設で保有している救助資機材、放射線測定器等を 用い、指揮隊を活用して行った。また、実習は机上演習時と同じ班構成で行い、どの班も 3ケースを通して、実施、現示、見取の全てを実施できるようローテーションをして行っ た。なお、実習中に怪我等がないよう安全管理には十分留意し、現示の中から安全管理担 当者を配置して、危険が生じる可能性がある時には、実習を中断させる等の対応をとった。

2回目以降の開催については、1回目のアンケート結果等を踏まえ、1ケースあたりの 実習時間を長くし、かつ適正な隊編成が組めるよう、事故状況の異なる 2 ケース(宙吊 り事故、下敷き事故)で実習を行った。

各班の役割

役割

現示班:状況設定を行い、場面ごとに必要な情報を示す。

実施班:実際に、救助を行う。

見取班:実施班の活動をチェックする(チェックシートを利用)。

各班のローテーション(玄海原子力発電所開催時)

想定 A班 B班 C班

転 落 現 示 見 取 実 施 宙吊り 実 施 現 示 見 取 下敷き 見 取 実 施 現 示

(例えば、A 班は、転落の想定では、現示、宙吊りの想定では実施、下敷きの想定では見取を行い、いずれか の想定において全ての役割を実施する。

各班のローテーション(玄海原子力発電所開催時以外)

想定 A班 B班 原安協スタッフ

宙吊り 実 施 見 取 現 示 下敷き 見 取 実 施 現 示

実習後の検証は、実習中に撮影した写真を活用して、それぞれのケースごとに行った。

なお、各ケースとも実施および指揮隊からは活動に際しての考え方、反省点等について、

見取からは実習評価結果について報告を行った上で、講師、放射線管理要員、受講者で意 見交換、検討を行った。

講義 机上演習(グループ討議)

机上演習(発表) 空間線量率計の取り扱い

防護服の着脱実習 想定:転落

想定:宙吊り 想定:下敷き

防護服の着装 現場責任者からの情報収集

指揮隊との連絡調整 先発隊による情報収集

進入準備 転落傷病者の救助活動

宙吊り傷病者の救助活動 下敷き傷病者の救助活動

傷病者の搬送 防護服の脱衣

脱衣後の汚染検査 検証

(3)実施結果

専門講座Ⅰでは、受講後にアンケートを行った。以下にアンケート結果の概要を示す。

アンケートおよび受講効果判定結果の詳細は、参考資料5に示す。

① 受講者数

受講者数および内訳は以下の通り。消防からの受講者が約93%であった。

回数 消防 自衛隊 海上保安庁 その他 合計 第1回 18名 2名 0名 0名 20名 第2回 20名 0名 0名 0名 20名 第3回 21名 0名 1名 1名 23名 第4回 23名 0名 2名 0名 25名

合 計 82名 2名 3名 1名 88名

93% 3% 3% 1% 100%

② 受講理由について

「専門講座Ⅰへ参加した理由」は以下の通りである。

自ら進んで参加:23%、業務命令で参加:77%であった。福島第一原発事故を受け て、業務として本講座に参加する割合が増えた。

回数 自ら進んで 業務命令 合計 第1回 4名 17名 21名 第2回 5名 15名 20名 第3回 4名 19名 23名 第4回 7名 18名 26名

合 計 20名 69名 90名

23% 77% 100%

③ 専門講座Ⅰの評価について

専門講座Ⅰの講義・机上演習・実習の評価結果を示す。

講義1 救助のための危機管理総論の教え方

回 数 大変よい よい 不満 とても不満 無回答 合 計 第1回 11 9 0 0 0 20 第2回 18 2 0 0 0 20 第3回 20 2 1 0 0 23 第4回 12 13 0 0 0 25 合計 61 26 1 0 0 88

回答率 69.3% 29.6% 1.1% 0.0%

【意見・要望(受講者)】

・スライド、資料、講師の教え方が非常にわかりやすかった。

・目の前のことを過大視してはいけないということがわかった。

・最初に入ってきた情報に引きづられてしまうということに共感を得た。

・リスクの認知の仕方は見方や考え方によって変わることがわかりました。

講義2 救助活動特論-特論1 放射線災害の危険の教え方

回 数 大変よい よい 不満 とても不満 無回答 合 計 第1回 13 7 0 0 0 20 第2回 18 2 0 0 0 20 第3回 20 3 0 0 0 23 第4回 9 16 0 0 0 25 合計 60 28 0 0 0 88

回答率 68.2% 31.8% 0.0% 0.0%

【意見・要望(受講者)】

・もう少し時間が長くてもよいのでは?再確認の意味が出来ました。

・専門用語も少なく、分かりやすかった。

・線量について、しっかりと理解しておかなければいけないと感じた。

・どれくらいの線量でどのような人体に影響があるのか分かりました。

講義2 救助活動特論-特論2 覚知と出場の教え方

回 数 大変よい よい 不満 とても不満 無回答 合 計 第1回 11 9 0 0 0 20 第2回 18 2 0 0 0 20 第3回 20 2 1 0 0 23 第4回 12 13 0 0 0 25 合計 61 26 1 0 0 88

回答率 69.3% 29.6% 1.1% 0.0%

【意見・要望(受講者)】

・状況に応じた出場体制を考えるようにしたい。

・準備物や出場の際に心掛けることが分かりました。

・出場前での情報収集の大きな事項が紹介されていたのがよくて、スムーズな収集に 便利な知識として活用できると感じました。