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第 4 章 まとめ

4.1 今後の課題

緊急被ばく医療研修専門委員会、被ばく医療講師連絡会・初級講座ワーキンググループ、

被ばく医療講師連絡会・基礎講座ワーキンググループ、被ばく医療講師連絡会・専門講座 ワーキンググループでの検討に基づき、講座ごとにカリキュラム・テキストおよび講師の 教授方法の改善・確認・提案事項をとりまとめた。

① 緊急被ばく医療初級講座

・原子力施設立地 16 道府県と新規 5 県の講義スライドを比較すると、原子力施設立 地16道府県については、「放射線の基礎知識」と「緊急被ばく医療における汚染対応」

に重複する部分が見られるが、新規 5 県については、「放射線の基礎知識」と「緊急 被ばく医療の考え方」において重複する部分は見られなかった。また、選択制講義に ついては、どの講義も全体として、スライドの枚数に比べて講義時間が短いことが 指摘されている。そのため、今後、カリキュラム、スライドおよび講義時間の見直 しについて検討する。

② 緊急被ばく医療基礎講座Ⅰ(除染コース、搬送コース)

・除染実習において、外回りに配置された医療スタッフの役割を参加者に理解しても らう必要がある。例えば診療放射線技師であれば、処置室内で汚染を拡げないため の汚染管理は大変重要であるということをきちんと伝える必要がある。

・参加者のアンケートにおいて、例えば、本講座へ自主的に参加したのか、それとも 業務命令で参加したのかという設問があるが、自主的に参加したかったが、業務命 令で参加したという人もいるため、今のアンケートでは細かい部分が読み取れない 状況である。そのため、その後の分析方法も含め、今後、アンケートの見直しにつ いて検討する。

③ 緊急被ばく医療基礎講座Ⅱ(救護所活動コース)

・指針(全部改正版)においてスクリーニングの判断基準や安定ヨウ素剤予防服用の 考え方等が示されたが、安定ヨウ素剤予防服用の具体的な手順等については今後の 検討課題とされている。そのため、次年度以降、原子力規制委員会の動向を踏まえ、

スライドの見直しを行う必要がある。

・受講効果判定票の設問 3「スクリーニングの目的は、被ばくの程度を把握すること である。」(正解は×)について、正答率が低いのは、小児甲状腺等価線量で100mSv という安定ヨウ素剤の投与基準に基づいて求められたものという説明による可能性 がある。ただし、この説明は必要であるため、設問自体の見直しを検討する。

・実際の災害現場では、人的資源等の制約がある。福島原発事故の際には、救護所に おける手順やフローはあらかじめ定められていたが、対象人数が非常に多く、停電 等もあったため、行動調査(記録票作成)等についてあらかじめ決められた手順を 踏襲することはできなかった。そのため、次年度以降に制約条件等がある場合の対 応を演習等へ反映させることについて検討する。

・実習や演習の体験を通じ、必要な人的資源や時間について体感することが重要であ り、例えば、10万人の住民が避難する場合に、どのくらいの人数や時間を要するこ とになるのか、認識してもらう必要がある。次年度以降に演習等への具体的な反映 事項を検討する。

・安定ヨウ素剤の配布手法等について、指針においても示されていない段階であり、

本研修では、救護所の最後で渡しているが、スクリーニングの待ち時間等を考慮す れば、最初に投与するというシナリオも必要ではないかと考えられる。今後、指針 において検討課題とされている「UPZ以遠における安定ヨウ素剤の投与の判断基準 としてのEAL(緊急時活動レベル)やOIL(運用上の介入レベル)の整備、避難や 屋内退避等の防護措置との併用の在り方、投与に関する責任の明確化、事前の配布 や備蓄・補充等の手法等」を踏まえ、演習等の手法について検討する。

・緊急時における実効性確保の観点から、出来るだけ最小限の物品かつ、簡便な方法 をとることという考え方に基づき、安定ヨウ素剤内服液を調製している。この経緯 を知らない受講者が違和感を覚える可能性があるため、実習中に補足説明すること を検討する。

・安定ヨウ素剤内服液の調製の図については、「清潔な容器を使用する」という注意書 きを記す必要がある。

④ 緊急被ばく医療基礎講座Ⅲ(ホールボディカウンタコース)

・受講効果判定票の設問について、問題の難易度、講師の教え方、テキストの記載等 について見直しを検討する必要がある。

・講義1 は、講義時間に対してスライドが多い。また、講義時間も1 時間20分で設

定されているが、受講者にとっては長いと感じる。途中に休憩をはさむ等、カリキ ュラムの変更等を検討する必要がある。

・放射線測定に関する内容は、基礎講座Ⅰ、Ⅱ、Ⅲに分散しているため、各講座にお ける目的を講師が再度確認する必要がある。また、基礎講座全体として、放射線測 定実習(スクリーニング実習)の到達点を検討すべきである。

⑤ 緊急被ばく医療専門講座Ⅰ(救護関係者コース)

・原則、初級もしくは基礎講座を修了した者が参加者の条件であるが、初級講座等を 以前受講した者もいるため、基礎知識を忘れてしまっている者もいるように思われ る。そのため、参加者に緊急被ばく医療研修のホームページに掲載している搬送の ビデオを予め観てもらう、基礎講座で受ける内容をeラーニングで学習してもらう などの事前学習等を検討する。

・救急隊、救助隊向けのメンタルヘルスケアの講義がないため、本講座に入れるかど うか検討する必要がある。さらに入れる場合には、どこかの講義の枠に含めるのか、

それとも新しい講義枠を設けるのか検討する必要がある。

・検証会の意見を整理して実習のポイントを作成したが、実習前に説明するのではな く、内容を精査して、講義に入れることも検討する。

⑥ 緊急被ばく医療専門講座Ⅱ(医療関係者コース)

・元々のプログラムが福島第一原発事故前からのカリキュラムがベースとなっている ため、今のニーズから離れている部分がある。そのため、講師と相談し、スライド の内容を作り変えることを検討する。

・広島大学における机上演習において、試験的に患者情報についてWebサイトを介し て提供したが、情報の見やすさ等、課題が残った。今後は、実習等も含めて、パソ コン等を用いた情報提供について引き続き取り組むこととした。

・講義のコマ数が多く、また、実習などにおいて参加者より「時間が短い」とのコメ ントが出ていることから、時間配分、コマ割等について再検討を行う。