• 検索結果がありません。

第 2 章 研修の実施

2.6 緊急被ばく医療専門講座Ⅱ(医療関係者コース) 〔専門講座Ⅱ〕

専門講座Ⅱは、原子力施設が立地・隣接する全ての道府県の被ばく医療に携わる医療関 係者を対象に、参加者を一堂に集めるセンター型として4地域において実施した。

専門講座Ⅱの開催にあたっては、東西ブロックの三次被ばく医療機関等で実施すること とし、開催医療機関と協議・検討の上、開催日を決定した。専門講座Ⅱのカリキュラムは 下記の通りである。

緊急被ばく医療専門講座Ⅱ(医療関係者コース)カリキュラム

【第1日】

8:30~ 8:45 開会

8:45~ 9:30 講義1 患者対応のための危機管理総論

―我々に必要なリスク認知と判断―

9:30~10:10 講義2 放射線災害時の外来処置に伴う院内対応

―アクションカードの活用―

10:10~12:00 机上演習 患者対応を緊急度と放射線リスクから考える

13:00~14:30 実習・検証

14:40~15:40 講義3 職種ごとの立場から見た緊急被ばく医療

15:50~17:00 講義4 社会心理学から見た放射線災害

17:00~17:20 質疑応答・意見交換 17:20~17:30 まとめ

【第2日】

8:30~12:30 ワークショップ 放射線災害時の入院患者対応(患者の線量評価)―

高線量外部被ばく(局所、全身)、内部被ばく―

13:30~14:30 講義5 福島第一原子力発電所の事故について

14:40~15:50 講義6 JCO事故時の臨床経験を継承する 15:50~16:10 質疑応答・意見交換

16:10~16:30 まとめ・閉会

(1)開催実績

開催日 開催場所 参加人数

(募集定員 20 名)

1回 10 12(金) 長崎大学 17

~ 13(土)

2回 11 2(金) 国立病院機構災害医療センター 21

3(土)

3回 12 7(金) 広島大学 19

8(土)

4 2 15(金) 福島県立医科大学 19

~ 16(土)

合 計 76

(2)実施内容

専門講座Ⅱの講義、実習等に関する実施内容は以下の通り。

講義1 患者対応のための危機管理総論―我々に必要なリスク認知と判断―

危機発生時の一般公衆と危機対応者がなすべき行動に基づき、それぞれのリスク認知の あり方(判断、思考過程、因子、認知方法)を実際に認知行動の傾向について例題を用い て、着目する視点・傾向について説明を行った。

講義2:放射線災害時の外来処置に伴う院内対応-アクションカードの活用-

災害医療分野で用いられているアクションカードの概念と実際の災害での適用に関し て紹介するとともに、被ばく・汚染傷病者の院内受け入れ時に院内関係者がそれぞれの役 割においてどのような行動をとるのかを時系列でまとめた総括表および院内アクション カードの内容と活用方法の説明を行った。

講義:職種ごとの立場から見た緊急被ばく医療

主な職種である医師、看護師、診療放射線技師について、開催地域で中心的に、もしく は福島第一原発事故に伴う医療対応をしている医師、看護師、診療放射線技師が講師とな り、その職種に特化した内容の講義および意見交換を行った。

講義:JCO事故時の臨床経験を継承する

JCO 臨界事故発生時の緊急被ばく医療体制、患者受け入れ、治療方針、患者の容態等 を中心にどのような治療を行ったのかを経験に基づき説明した。また、併せてJCO臨界 事故の経験から得られた医療の危機管理、急性放射線症候群に関する世界の動向、最新の 知見等および福島第一原発事故における医療対応についても紹介した。

講義:社会心理学からみた放射線災害-災害時の人々の反応と信頼概論-

これまでの災害事例からどのような時にパニックに陥るのか、パニックに陥った際に 人々はどのような行動をとる傾向があるのか、危機状況(災害時)におけるコミュニケー ションの方法について説明を行った。

講義:福島第一原子力発電所の事故について

福島第一原発事故において、原子炉内で何が起こったか、国がどのような対応を行って いるか、今後の課題について説明を行った。

講義:放射線と健康

福島第一原発事故に関する経過と現況、放射線による健康影響とその認知および福島 県内の健康調査の状況と課題について説明を行った。

机上演習:患者対応を緊急度と放射線リスクから考える

受講者を1班4~6名となるように分け、症状の異なる複数名の汚染・被ばく患者の受 入対応をどのようにするかについてアクションカードを用いて演習を行った。

また、広島大学にて開催した際に、患者情報を机上に用意したパソコンからWebを介 して提供することを試験的に実施した。

実習・検証

被ばく医療機関において、原子力施設で発生した多数傷病者のうち、被ばく・汚染がな いという情報の 2 名を受け入れることになったが、現場の混乱により 2 人目の患者に取 り違えがあり、実際には汚染があったことがわかった際に、どのようにリカバリーするか 判断することを目的とした実習を行った。実施に際し、受講者を統括チーム、医療チーム、

評価チームに分け、統括チームに連絡が入ったところから、チームビルディング、医療対 応、後処理からマスコミ対応までを実施した。

なお、患者対応の手技手法は、基礎講座Ⅰにて実施しているため、患者の処置以外を重 視する内容としている。

ワークショップ:放射線災害時の入院患者対応(患者の線量評価)

―高線量外部被ばく(局所、全身)、内部被ばく―

急性放射線症候群(ARS)の前駆症状から被ばく線量を推定する方法、既知の線源情 報と距離の関係から被ばく線量を概算する方法、皮膚汚染から被ばく量を計算する方法、

染色体分析方法、内部被ばく推定方法(ホールボディカウンタ、バイオアッセイ、空気中 濃度からの計算)について、それぞれ計算等も含めた線量評価を行った。

講義 講義(職種別)

机上演習 机上演習

実習(統括の情報収集) 実習(記者会見)

ワークショップ(検討結果の発表) ワークショップ(ARS の症状を診断)

(3)実施結果

専門講座Ⅱでは、受講前および受講後にアンケートを行った。以下にアンケートからの 実施結果の概要を示す。アンケート結果等の詳細については、参考資料6に示す。

① 受講者数

医師 看護師

(保健師)

診療放射線 技師

臨床検査

技師 その他 無回答 合計 第1回 6名 4名 7名 0名 0名 0名 17名 第2回 6名 6名 8名 0名 1名 0名 21名 第3回 4名 9名 6名 0名 0名 0名 19名 第4回 6名 6名 6名 0名 1名 0名 19名 合 計 22名 25名 27名 0名 2名 0名 76名

(29.0%) (32.9%) (35.5%) (0.0%) (2.6%)

② 受講理由について

「専門講座Ⅱへ参加した理由」は以下の通り。

「自ら進んで参加した」が47名(61.0%)、「業務命令で参加した」が27名(35.1%)

であった。

回数 自ら進んで参加した 業務命令で参加した 合 計 第1回 9名 7名 16名

第2回 16名 5名 21名

第3回 11名 8名 19名

第4回 11名 7名 18名

合計 47名 27名 74名

(63.5%) (36.5%)

③ 専門講座Ⅱの評価について

専門講座Ⅱの講義・机上演習の評価結果(講師の教え方)を示す。

講義「患者対応のための危機管理総論」

回 数 大変よい よい 不満 とても不満 無回答 合 計 第1回 12 5 0 0 0 17 第2回 12 9 0 0 0 21 第3回 14 5 0 0 0 19 第4回 12 7 0 0 0 19 合計 50 26 0 0 0 76

回答率 65.8% 34.2% 0.0% 0.0%

【意見・要望(受講者)】

・意識していなかった部分であり、とても勉強になった。(医師、6年)

・リーダーの考え方がチームに影響するため、リスクに対して体制を整えて、スタッ フも守れるようにしたい。(看護師11年)

・一般人と医療側のリスクについて勉強となった。(診療放射線技師、13年)

・リスク認知の話がよかった。(看護師、1年)

講義 「放射線災害時の外来処置に伴う院内対応―アクションカードの活用―」

回 数 大変よい よい 不満 とても不満 無回答 合 計 第1回 9 8 0 0 0 17 第2回 11 10 0 0 0 21 第3回 12 7 0 0 0 19 第4回 9 8 2 0 0 19 合計 41 33 2 0 0 76

回答率 54% 43.4% 2.6% 0.0%

【意見・要望(受講者)】

・アクションカードというキーワードを持ち帰り、当院に活かせるか検討したい。(医 師、6年)

・リーダーの質が重要。(看護師、8年)

・日頃の備えの重要性を感じた。(看護師、11年)

・アクションカードを初めて聞いたが、非常に有効であると感じた。(診療放射線技

師、13年)

講義 「職種ごとの立場から見た緊急被ばく医療」

回 数 大変よい よい 不満 とても不満 無回答 合 計 第1回 9 8 0 0 0 17 第2回 15 4 0 0 2 21 第3回 14 5 0 0 0 19 第4回 15 4 0 0 0 19 合計 53 21 0 0 2 76

回答率 71.6% 28.4% 0.0% 0.0%

【意見・要望(受講者)】

・同じ職種間で疑問がわいた際にすぐに質問できるような双方向性形式で大変よく理 解できた。(医師、7年)

・こういった内容を求めていた。(医師、27年)

・これから深めていかなければならない部分なので、広い視野を持って考えられるよ うにしたい。(看護師、11年)

・看護師の役割、行動を知ることができた。(看護師、13年)

・身近なグループでの説明のため、理解度が高かった。(看護師、16年)

・診療放射線技師としての役割、考え方などがよくわかった。(診療放射線技師、27 年)

・シーンにおける役割を区別して対応する必要性を教えてもらった。(診療放射線技 師、21年)

講義 「JCO事故時の臨床経験を継承する」

回 数 大変よい よい 不満 とても不満 無回答 合 計 第1回 9 6 0 0 1 16 第2回 12 9 0 0 0 21 第3回 10 7 0 0 1 18 第4回 15 3 0 0 0 18 合計 46 25 0 0 2 73

回答率 64.8% 35.2% 0.0% 0.0%

【意見・要望(受講者)】

・evidenceと experienceのバランス、evidenceが乏しい中では自分達で道を作り、

その道を吟味することが大切と感じた。(医師、6年)

・ARS(急性放射線症候群)について、症例の経過から最新の知見まで大変興味深く 学べた。(医師、7年)

・大変興味深い内容だった。情報量、内容を解読してもう一度学びたいと思った。少 し難しかった。(看護師、14年)

机上演習 「患者対応を緊急度と放射線リスクから考える」

回 数 大変よい よい 不満 とても不満 無回答 合 計 第1回 10 6 1 0 0 17 第2回 11 10 0 0 0 21 第3回 13 6 0 0 0 19 第4回 7 8 4 0 0 19 合計 41 30 5 0 0 76

回答率 53.9% 39.5% 6.6% 0.0%

【意見・要望(受講者)】

・講師が各テーブルでの相談を促してくれた点がよかった。(医師、7年)

・1 人の傷病者受け入れの訓練をしたことはあったが、複数名は行ったことがなく、

勉強になった。(看護師、13年)

・迷うことがあるので、放射線管理要員や診療放射線技師にアドバイスを求めてチー ムで対応できるようにしたい。(看護師、11年)

・様々な職種からの考え方、対応の仕方をイメージすることができ、よかった。(診療 放射線技師、13年)

・終了時に各役職、各グループのフィードバックの時間が少しあるとよい。(医師、5 年)