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第 2 章 研修の実施

2.3 緊急被ばく医療基礎講座Ⅱ(救護所活動コース) 〔基礎講座Ⅱ〕

本講座は、今年度より新たに緊急被ばく医療研修として新設された。原子力施設等立 地地域(16道府県)において、開催地域およびその周辺地域の初級講座相当の講座を修 了した地方公共団体職員、医療関係者を対象とし、研修期間1日、募集人数 20 名程度 の講座として16回の研修を実施した。

開催にあたり、開催日および開催場所等については、地方公共団体等と協議・検討の 上、決定した。カリキュラムは下記の通りである。

緊急被ばく医療基礎講座Ⅱ(救護所活動コース)カリキュラム 項 目 時 間 内 容

9:30~ 9:40 オリエンテーション

講 義 9:40~10:50 救護所における初期被ばく医療活動 10:50~11:00 (休憩)

実習1 11:00~12:00 救護所におけるスクリーニング

実習2 13:00~14:30 Aグループ 救護所の開設

Bグループ

救護所における 診断除染

Cグループ

安定ヨウ素剤 の取り扱いと 調製

・レイアウト検討

・救護所の設営

・ガイダンス

・身体除染の方法

・頸部甲状腺に沈 着した放射性ヨ ウ素の測定

・問診

・ガイダンス

・安定ヨウ素剤内 服 液 の 調 製 と 配布

・服用の説明

14:30~14:40 (休憩)

演 習 14:40~16:30 救護所における初期被ばく医療活動

16:30~16:50 質疑応答 16:50~17:00 閉会

(1)開催実績

地域 開催日 時間 開催場所 参加人数

A B C 合計

1 愛媛県 10 16(火) 9:30~17:00 愛媛県中予地方局 8 9 5 22 2 佐賀県 10 22(月) 9:30~17:00 佐賀市民会館 7 7 2 16 3 福井県 11 14(水) 9:30~17:00 プラザ萬象 4 16 2 22 4 大阪府 12 5(水) 9:30~17:00 大阪医療センター 4 9 4 17 5 石川県 12 12(水) 9:30~17:00 能登中部保健福祉センター 3 5 2 10 6 青森県 12 19(水) 9:30~17:00 リンクステーションホール青森 7 5 5 17 7 神奈川県 12 21(金) 10:00~17:30 サンピアンかわさき 5 9 6 20

8 島根県 1 9(水) 9:30~17:00 島根県職員会館 7 13 3 23

9 福島県 1 22(火) 9:30~17:00 ビッグパレットふくしま 4 9 6 19

10 新潟県 1 25(金) 9:30~17:00 柏崎文化会館 2 8 3 13

11 静岡県 1 30(水) 9:30~17:00 牧之原市総合健康福祉センター 10 10 10 30 12 鹿児島県 2 1(金) 9:30~17:00 宝山ホール 6 11 7 24

13 北海道 2 7(木) 9:30~17:00 岩内地方文化センター 8 6 4 18

14 岡山県 2 16(土) 9:30~17:00 岡山医療センター 5 15 2 22

15 宮城県 3 1(金) 9:30~17:00 石巻市河北総合センター 8 20 2 30

16 茨城県 3 5(火) 9:00~16:30 茨城県立健康プラザ 6 4 3 13

合 計 94 156 66 316

(2)実施内容

本講座の講義、実習および演習に関する実施内容は以下の通りである。

講義 1 救護所における初期被ばく医療活動

原子力災害時に救護所において、原子力防災および緊急被ばく医療関係者が迅速かつ 的確にその役割に応じた業務を遂行できるよう、原子力防災対策、緊急被ばく医療およ び救護所の活動について説明を行った。主な項目は以下の通りである。

(原子力防災対策)

防護対策の目的、原子力防災対策の特殊性、異常事態発生時の通報基準(原子力災 害対策特別措置法第10条)、原子力緊急事態の判断基準(原子力災害対策特別措置法 第15条)、放射性物質・放射線の放出形態、防災対策を重点的に充実すべき区域、放 射性物質による被ばく、通報連絡・周辺住民等への情報提供、緊急時環境放射線モニ タリング、防護対策と指標、飲食物摂取制限、立入制限措置、防災業務関係者の防護 措置

(緊急被ばく医療)

緊急被ばく医療体制、避難所および被ばく医療機関等における対応

(救護所活動)

救護所の設置条件、救護所の開設、救護所活動チームとその役割、救護所のレイア ウト、救護所における活動、スクリーニングの基本および方法、安定ヨウ素剤の予防 服用、除染の基本および手順、頸部甲状腺検査、メンタルヘルス対策、事故発生時の 対応、避難所での対応

実習1 救護所におけるスクリーニング

被災者の被災の程度を評価・判定し、被災者に適した緊急被ばく医療処置を行うため の基礎となる救護所におけるスクリーニングについて、個人線量計および体表面汚染測 定用サーベイメータの取り扱い、スクリーニングレベルの求め方に関する実習、模擬線 源を用いた身体汚染スクリーニングの実習を実施した。具体的な内容は以下の通り。

① 個人線量計の取り扱い

1~2名に1台の個人線量計を用意し、使用方法と装着位置(男性:胸部、女性:腹 部)を確認する。

② サーベイメータの取り扱い

2 名に 1 台の体表面汚染測定用サーベイメータを用意し、サーベイメータの使用前 点検として、電池セット、バッテリーおよび高圧のチェック、自然放射線および模擬 線源(マントル)の測定を行う。

③ スクリーニングレベルの求め方

上記②で用いた体表面汚染測定用サーベイメータの校正票に記載の換算係数および 換算係数の補正値を用いて、スクリーニングレベルに相当する係数率の計算方法を確 認する。

④ スクリーニング

受講生4名程度でグループを組み、被検者(1名)、測定検査員(2名)、記録員(1 名)の役割を決め、模擬線源(マントル)を用いた身体汚染スクリーニングの実習を 実施し、体表面汚染測定用サーベイメータによる身体部位の測定、測定結果等のスク リーニング測定記録票への記入を行う。

個人線量計の取り扱い GM サーベイメータの取り扱い

スクリーニングレベルの求め方 スクリーニング

実習2A 救護所の開設

各地域の緊急被ばく医療マニュアル等に従い、救護所に必要となる受付、待機場所、

スクリーニング、除染、行動調査および応急処置等のエリアを実習会場に設けるための レイアウト案を検討し、決定したレイアウトに従い、養生資機材等を用いて救護所を設 営する実習を実施した。標準的な内容は以下の通り。

① レイアウト検討

救護所の想定、設置すべきエリア等について説明後、受講生を 2 名~3 名のグルー プに分け、グループ討論を行い、討論結果に基づき救護所のレイアウトを実習会場の 平面図に記入する。記入したレイアウト案を基に、グループごとに発表を行い、適切 なレイアウトを決定する。

② 救護所の設営

決定したレイアウトに従い、養生資機材(ブルーシート等)を用いて模擬救護所内

を養生する。除染エリアには、ろ紙等による養生も行う。パーティションや机を用い て各エリアの区画を設け、エリア標識等を用いて各エリア内容を明確にする。必要に 応じ、被災者の動線を矢印等により明確にする。各エリアで使用する机や椅子等の養 生を行う。

レイアウト検討

救護所の設営

実習2B 救護所における診断除染

一次スクリーニング後に、スクリーニングレベルを超えている被災者に対して実施す る簡易除染、放射性ヨウ素を吸入した可能性のある被災者等に対して実施する頸部甲状 腺汚染スクリーニング、また、各地域の緊急被ばく医療マニュアルの様式等を用いて汚 染が検出されなかった者等に対して行う問診について実習を行った。具体的な内容は以 下の通り。

① 身体除染(簡易除染)の方法

救護所における除染の原則となる拭き取りについて、皮膚に塗布した蛍光ローショ ンを湿らせたガーゼ、アルコール綿、中性洗剤、オレンジオイル等を用いて行う。紫 外線ライトにて拭き取り効果を確認しながら実施する。また、拭き取りは、原則とし て被災者本人が行うが、子供や老人等の被災者の対応に備え、スタッフの手などに塗 布した蛍光ローションや油性マジック等の拭き取りを行う。

② 頸部甲状腺に沈着した放射性ヨウ素の測定

頸部甲状腺部位の測定方法について、頸部を模したファントムに線源を装着し、NaI シンチレーションサーベイメータを用いて測定を行う。使用したNaIシンチレーショ ンサーベイメータの換算係数を用いてヨウ素沈着量を推定する。

③ 問診

各地域の緊急被ばく医療マニュアル等の様式を用いて、スクリーニングレベル未満、

もしくは、除染後の再検査にてスクリーニングレベル未満の被災者に対しての健康状 態や既往症の聞き取り、事故発生以降の行動調査、行動調査を踏まえた被ばく線量の 推定、また、これらの情報とスクリーニング結果等を総合的に勘案した被ばく医療機 関への転送の判断等について確認する。行動調査を終えた被災者へスクリーニング結 果や安定ヨウ素剤投与等について十分説明し、被災者の不安の解消に留意することを 確認する。

身体除染(簡易除染)の方法

頸部甲状腺に沈着した放射性ヨウ素の測定

実習2C 安定ヨウ素剤の取り扱いと調製

放射性ヨウ素の甲状腺への取り込みを低減するための安定ヨウ素剤について、その効果、

種類、服用対象者、服用方法等について確認し、安定ヨウ素剤内服液の調製および服用の 説明について実習を行った。具体的な内容は以下の通り。

① 安定ヨウ素剤内服液の調製

ヨウ化カリウム原薬、注射用水、単シロップより、安定ヨウ素剤内服液を調製する。

調製にあたっては、メスシリンダー、5L容器等の他、東日本大震災直後に電力供給が されなくなったことを踏まえ、上皿天秤を用いる。調製後は、救護所へ搬送するため

に、500mL褐色瓶等に漏斗を用いて分注し、さらに配布用カップへの分注を行う。

② 服用の説明

服用対象者に行う服用の目的やヨウ素過敏症に伴う発疹等の副作用の説明を確認す る。また、放射性ヨウ素による内部被ばくの影響が大きい新生児、乳幼児および妊婦

(胎児への影響)については、優先的に安定ヨウ素剤を服用させることが重要である