第 2 章 研修の実施
2.4 緊急被ばく医療基礎講座Ⅲ(ホールボディカウンタコース) 〔基礎講座Ⅲ〕
基礎講座Ⅲは、地域で行う研修(現地型)として10府県において実施した。
基礎講座Ⅲの開催にあたっては、地域の緊急被ばく医療関係者と協議・検討の上、開催 日開催場所を決定した。基礎講座Ⅲのカリキュラムは下記の通りである。
緊急被ばく医療基礎講座Ⅲ(ホールボディカウンタコース)カリキュラム
項 目 時 間 内 容
9:30~ 9:40 開会
講義 9:40~11:00 緊急被ばく医療における被ばく線量評価
-内部被ばくを中心として-
・緊急被ばく医療における内部被ばく線量評価
・ホールボディカウンタの構造と体内放射能測定
・体外測定法の実際とサーベイメータを用いた甲状腺沈着放射 性ヨウ素の簡易測定
11:10~11:30 演習ガイダンス
実習 12:30~14:40 ホールボディカウンタによる体内放射能測定
実習1 12:30~13:30 スクリーニング
・測定の準備(服装、機器の動作確認・養生)
・被検者の服装の確認
・汚染検査(スクリーニング)
・簡易体内放射能測定
・簡易内部被ばく線量評価 実習2 13:40~14:40 ホールボディカウンタ測定
・被検者が搬送されてからの流れの確認
・測定室、検出器の汚染防止(養生)
・測定器のウォーミングアップ
・放射線源によるエネルギー校正
・バックグラウンド測定
・個人情報の登録
・体内放射能測定
・内部被ばくの線量評価
演 習 14:45~16:30 被ばく線量評価-体外計測に基づく内部被ばく線量評価-
16:30~16:50 質疑応答 16:50~17:00 閉会
(1)開催実績
地域 開催日 時間 開催場所
参加人 数
(募集定員 15 名)
メーカー 1 大阪府 8月25日 (土) 9:30~17:00 大阪医療センター 18名 安西メディカル株式会社 2 宮城県 9月 8日 (土) 9:30~17:00 仙台医療センター 18名 日立アロカメディカル株式会社 3 長崎県 9月15日 (土) 9:30~17:00 長崎大学医学部 16名 富士電機株式会社 4 京都府 9月22日 (土) 9:30~17:00 市立舞鶴市民病院 15名 日立アロカメディカル株式会社 5 鹿児島県 10月 4日 (木) 9:30~17:00 川薩保健所 14名 富士電機株式会社 6
7 8 9 10
佐賀県 10月 6日 (土) 9:30~17:00 佐賀県中部保健福祉事務所 14名 キャンベラジャパン株式会社 新潟県 10月27日 (土) 9:30~17:00 県立がんセンター新潟病院 9名 富士電機株式会社 福井県 11月17日 (土) 9:30~17:00 福井県立病院 16名 安西メディカル株式会社 愛媛県 12月 1日 (土) 10:00~17:30 伊方町役場 15名 安西メディカル株式会社 岡山県 12月 8日 (土) 9:30~17:00 岡山医療センター 15名 安西メディカル株式会社
合 計 150名
(2)実施内容
基礎講座Ⅲの講義、実習に関する実施内容は以下の通りである。
講義 緊急被ばく医療における被ばく線量評価-内部被ばくを中心として-
緊急被ばく医療の基本理念、内部被ばくの特徴、預託線量の考え方、体内動態モデル、
摂取量の求め方、体外計測器の概要、ホールボディカウンタによる測定手順、ホールボデ ィカウンタの放射能校正、体内放射能測定の流れについて説明を行った。主な項目は以下 の通りである。
・緊急被ばく医療の考え方
・緊急被ばく医療における内部被ばく線量評価
・ホールボディカウンタの構造と体内放射能測定
・体外計測法の実際とサーベイメータを用いた甲状腺沈着放射性ヨウ素の簡易測定 実習 ホールボディカウンタの構造と体内放射能の測定
実習1 スクリーニング
測定者の服装(既に除染が行われているときには通常の服装に直読式の個人線量計を装 着)、被検者の服装を確認し、GMサーベイメータの動作確認、養生を行った。なお、搬 送されてきた時の測定の流れの説明は、当該施設の管理者または放射線管理要員が行っ た。
被検者(模擬)が搬送された後、GMサーベイメータを用いて、被検者の体表面の汚
染検査を行った。
また、簡易体内放射能測定として、NaI シンチレーションサーベイメータを用いて、
①甲状腺汚染の線量率を測定し、②内部被ばく線量(甲状腺沈着量)を算出した。
実習2:ホールボディカウンタ測定
実際に内部被ばく患者が搬送されてきた場合の当該施設での測定の流れ(患者の入室 から退室までの患者の動き等)を確認した後、養生用シートおよびろ紙シートを用いて、
測定室の床およびホールボディカウンタ等を養生した。ホールボディカウンタの起動後、
校正用線源による測定およびバックグラウンド測定を行い、適切なスペクトルが得られ ていることを確認した。また、頸部甲状腺モニタがある施設においては、同様に確認し た。続いて、被検者(参加者)の情報(氏名、生年月日、年齢、性別等)をコンピュー タに登録し、被検者(参加者)のカリウムの放射能を測定した。その後、事故のシナリ オに基づき、被検者の情報をコンピュータに登録し、被検者の測定位置を確認の上、測 定(コバルト、セシウム)を行った。また、頸部甲状腺モニタがある場合には、引き続 き甲状腺の測定(ヨウ素)を行った。
測定後、測定結果(放射能摂取量)を用いて、事故のシナリオに基づきコバルト、セ シウム、ヨウ素の線量計算を行った。また、測定結果に基づき参加者自らのカリウムか らの線量計算を行った。
なお、ホールボディカウンタの操作方法については、メーカー技術員が指導した。
演習:被ばく線量評価-体外計測に基づく内部被ばく線量評価-
受講者数および施設の状況に応じて、内部被ばく、体表面汚染、内部被ばく及び体表 面汚染を伴う被検者またはダミー人形を3または4体用意し、講義と実習を通じて習得 した考え方とスキルをもって内部被ばく線量等を測定し、ホールボディカウンタ受付記 録票に記入した。なお、内部被ばく線量等の測定にあたっては、GMサーベイメータ、
NaIシンチレーションサーベイメータ、ホールボディカウンタを用いて行った。
また、演習の結果(汚染部位、測定値、内部被ばく線量等)はホールボディカウンタ 受付記録票に基づき発表を行い、講師より評価を得た。
動作確認 スクリーニング
体内放射能測定(チェア型) 頸部甲状腺測定
測定結果 線量評価
(3)実施結果
基礎講座Ⅲでは、受講後のアンケートの他に、受講後の知識の習得状況をみるための 受講効果判定を行った。以下にアンケート等からの実施結果の概要を示す。アンケート および受講効果判定結果の詳細については、参考資料4に示す。
① 受講者数
・受講者150名中、119名が診療放射線技師であった(アンケート回収数144)。
・過去に基礎講座Ⅲの参加経験がある受講者は45名(31.3%)で、基礎講座Ⅰの参 加経験がある受講者は62名(43.1%)であった。
・受講者は、募集人数(15名/回)に対して、100%(15名/回)となっている(平 成23年度は、107.7%、平成22年度は、85.6%)。
② 受講理由について
・受講者のうち、97名(66.0%)が「自ら進んで参加した」と回答した。また、「業 務命令で参加した」のは46名(31.3%)であった(複数回答可、回答数149)。
③ 基礎講座Ⅲの評価について
基礎講座Ⅲの評価結果を内容ごとに示す。
講義1「緊急被ばく医療における被ばく線量評価」
大変
良い 良い 不満 とても
不満 無回答 合計 講師の教え方 98 42 0 0 4 144 あなたの理解度 35 95 9 0 5 144 スライド・資料 75 63 1 0 5 144
【意見・要望(受講者)】
・スライドと解説がある資料は、大変よいと感じました。(診療放射線技師、50歳代)
・詳細にまとまって、大変分かりやすかったです。(診療放射線技師、20歳代)
・内容がたくさんあり、ついていけない部分があった。自分の勉強不足であった。(診 療放射線技師、30歳代)
・非常にわかりやすかった、少し早口の解説であったかも。(診療放射線技師、50 歳 代)
・資料を見ながら講義を聞きながら理解できた。(診療放射線技師、40歳代)
・基礎的な知識の習得に役立ちました。(診療放射線技師、30歳代)
実習1「スクリーニング」
大変
良い 良い 不満 とても
不満 無回答 合計 実習の進め方 79 60 1 0 4 144 講師の教え方 82 57 0 0 5 144 あなたの理解度 36 97 6 0 5 144 あなたの満足度 65 69 3 0 7 144
【意見・要望(受講者)】
・換算などはわかっているようで、実施にやってみると混乱する部分もあり、再確認 という点でも勉強になりました。(診療放射線技師、20歳代)
・時間が短かった。普段触ることのできない機器ですので実際動かす事ができて良か った。(診療放射線技師、30歳代)
・表面汚染測定と内部被ばく測定の基本がよく理解できた。(診療放射線技師、30 歳 代)
実習2「ホールボディカウンタ測定」
大変
良い 良い 不満 とても
不満 無回答 合計 実習の進め方 75 64 0 0 5 144 講師の教え方 87 51 1 0 5 144 あなたの理解度 41 93 5 0 5 144 あなたの満足度 46 73 2 0 5 144
【意見・要望(受講者)】
・初めてホールボディカウンタを見たが、操作方法など詳しく教えてもらい、良く理 解できた。(診療放射線技師、30歳代)
・全員が測定者と被検者の両方をできて理解が進んだ。(看護師、50歳代)
・具体例が多すぎて、難しく感じた。(診療放射線技師、20歳代)
・バックグラウンドの測定の方をもっと詳しく教えてほしかった。(診療放射線技師 20歳代)
演習「被ばく線量評価」
大変
良い 良い 不満 とても
不満 無回答 合計 ガイダンス 69 70 0 0 5 144 演習の進め方 71 67 1 0 5 144 講師の教え方 85 54 0 0 5 144 あなたの理解度 41 90 8 0 5 144 あなたの満足度 65 65 9 0 5 144 スライド・資料 65 71 2 0 6 144
【意見・要望(受講者)】
・スクリーニングから実効線量計算まで充実した内容であった。(診療放射線技師、
30歳代)
・実践的で良かったと思います。(診療放射線技師、40歳代)
・シミュレーション形式で実際の雰囲気がつかめてよかった。(診療放射線技師、30 歳代)
・色々なシナリオがあり、とても勉強になりました。また、参加して自分のものにで きたらと思います。(診療放射線技師、30歳代)
基礎講座Ⅲについて
とても
有益 有益 あまり有益 でない
全く有益
でない 無回答 合計
参加して有益であったと思い ますか
86 53 0 0 5 144
是非参加 したい
参加 したい
どちらとも 言えない
参加したく
ない 無回答 合計
他の講座や専門講座にも参加 したいと思いますか
54 75 11 0 4 144
【意見・要望(受講者)】
・今回の講義、実習、演習は実践的な線量測定から線量評価を行う内容で非常に勉強 になりました。(診療放射線技師、50歳代)