• 検索結果がありません。

結   果 1)

ドキュメント内 問   題 (ページ 106-113)

母子通園施設を利用した母親の心理状態の分類

母子通園施設の「入園時」,「通園中」,「卒園時」そ れぞれの時期の母親の心理状態について分類した結果

をTable 2にまとめた。母子通園施設の入園時のうち一

番多かった項目は,子どもの「できないことへの心配」

が28件(53.85%)で,次いで どうして子育てをして

いけばいいのか などの「障害対応への悩み」が23件

(44.23%), 今後が不安になって涙を流した などの

「障害を伴う育児への不安」が19件(36.54%)であっ た。通園中では, 自分の欲求を伝えることができるよ うになった など「子どもの成長への気づき」の36件

(69.23%)が一番多く,次いで 子どものことを把握で

きるようになった などの「母親成長の気づき」が26

件(50.00%),療育指導員から 助けていただいた な

どの「サポートの気づき」が23件(44.23%)であった。

卒園する時には, みんなが支えになってくれた など の「サポートの実感」が19件(36.54%)で一番多く,

次いで がんばっていきたい などの「前向きな子育て」

が18件(34.62%)であった。

数量化Ⅲ類による母親の心理状態の分析

母子通園施設を利用した母親の心理状態の構造を分析 するために,「入園時」7項目,「通園中」5項目,「卒園時」

5項目のそれぞれの項目について,サンプルコードごと にない場合は「0」を,ある場合は「1」の数字を記して 整理した後,数量化Ⅲ類を行った。その結果,2軸を採 用した。それぞれの軸の固定値は,第1軸が.26(0≦ λ≦1),第2軸が.19であった。数量化Ⅲ類から算出さ れたカテゴリースコア(Table 2)を用いて,第1軸を横 軸に,第2軸を縦軸にとり,母親の心理状態を2次元の 散布図に示した(Figure 1)。なお,利用していた時期(入 園時,通園中,卒園時)のカテゴリースコアについて分 散分析を行ったところ有意差はなかった。

また,カテゴリースコアに対してWard法によるクラ スター分析を行ったところ,合理的に分類可能な4つ のクラスターを抽出したので,散布図上に示した。こ の4つのカテゴリーに対して分散分析を行ったところ,

第1軸 がF(3, 13)=24.84,p <.01, 第2軸 がF(3, 13)

=92.50,p <.01で,それぞれ有意差があった。

次に,数量化Ⅲ類により算出されたサンプルスコア を用い,子どもの性別,子どもの診断の有無に関して,

第1軸,第2軸における平均の差についてt検定を行っ

1)本統計については,エクセル統計2008を使用した。

た(Table 3)。子どもの性別は,第1軸がt(50)=2.97, p <.01,第2軸がt(50)=4.78,p <.01で,それぞれ有意 差があった。子どもの診断の有無に関しては,第1軸 がt(50)=2.28,p <.05, 第2軸 がt(50)=.61,n.s. で,

第1軸に有意差があった。各項目との関連を示すため,

子どもの性別によるカテゴリースコア(男子:第1軸

=–.69, 第2軸=–.87, 女 子: 第1軸=1.88, 第2軸

=2.05)と子どもの診断の有無によるカテゴリースコア

(診断有:第1軸=–.90,第2軸=–.33,未診断:第1 軸=2.23,第2軸=.53)をFigure 1の散布図上に布置した。

なお,母親の年齢およびT園に通園していた期間に関 して,それぞれの平均値によりにサンプルを2分割して t検定を行ったところ有意な差はなかった。

カテゴリーについての解釈

カテゴリー名について,1つ目は入園時の障害告知に よる「自責から解放」の1項目だけだったので〈自責解 放〉とした。2つ目は入園時の「子育ての辛さ」と通園 中の「子育て困難感」の2項目だったので〈育児困難感〉

とした。3つ目は入園時の子どもの「できないことへの 心配」をし,「障害を伴う育児への不安」や母子通園施 Table 1 母親の気持ちの分類

分 項   目 項 目 の 内 容 の 具 体 例 項目の考え方

入 園 時

できないことへの心配 「どうして他の子にできることができないの」,「できないこと を泣いた」,「何もかもができないことが心配」など

子どものできないことを理由に 心配している記述

障害対応への悩み 「見通しがたたない」,「困り果てた」,「どうして子育てをして いけばいいのか」,「障害を受け入れられなくて涙した」など

子どもの抱える障害にどうした らよいのかと悩んでいる記述 障害を伴う育児への不安 「今後が不安になって涙を流した」,「先がみえなくて不安」,「将

来どうなるのか不安」,「頭のなかがぐちゃぐちゃ」など

障害を抱える子どものことで母 親が不安を感じている記述 思いのあてはめ 「この子は変わりようがない」,「私の気持ちが伝わらない」,「子

どもの気持ちを知ろうと思わなかった」など

母親が持っている子ども像によっ て、子どもと接していた記述 通園への戸惑い 「想像していたところと違っていた」,「どうして行かなければ

ならないの」,「園に入ることはどういうこと」など

母子通園施設にどうして通園しな ければならないかに関する記述 子育ての辛さ 「子育てが辛い」,「イライラして怒ってばかり」,「子育てに疲れ

きっていた」,「解放されたい」,「すべてを投げ出したい」など 子育ての辛さに関する記述 自責から解放 「障害児と診断されたことで苦悩から解放された」,「障害児と

わかって不安がなくなった」など

障害告知によって自分の責任で はないということに関する記述

通 園 中

子どもの成長への気づき「友達関係が少しずつとれるようになった」,「自分の欲求を伝え ることができるようになった」,「言葉がでるようになった」など

子どもの成長に対する母親の気 づきに関する記述

母親成長の気づき 「子どものことを把握できるようになった」,「子どもの成長を 見守ることができるようになった」など

母親として成長していることに 関する記述

サポートの気づき 「励ましてくれた」,「温かい声をかけてくれた」,「助けていた だいた」,「悩みを打ち明けられた」など

第三者からのサポートを受けて いたことに関する記述

子育て困難感 「育てることは大変と分って頭が痛い」,「楽しそうにしている子

どもが想像できない」,「成長を感じられなくて挫折しそう」など 子育ての困難さに関する記述 自分のせいではない 「自分の子育てが悪いわけじゃない」,「育ちにくさは母親のせ

いじゃない」など

障害の理解によって自分の責任 ではないという記述

卒 園 時

サポートの実感 「出会えた人が支え」,「みんなが支えになってくれた」,「先生 のおかげ」,「ここは私たちの居場所」,「支えられている」など

第三者からのサポートを受けて いたことに関する記述

前向きな子育て 「がんばっていきたい」,「あせらずやっていきたい」,「心配も 不安もあるけど前向きにいきたい」など

心配などもあるが前向きに子育 てをしていくことに関する記述 母子の関係を大切 「見守っていこう」,「一緒に前に進んでいきたい」,「歩調を合

わせて付き合っていきたい」,「一緒に歩きたい」など

子どもとの関係を大切にした子 育てに関する記述

母親成長の実感 「母として成長させてもらった」,「待つ自信がついた」,「子ど もとどう関わるか分かった」,「子どもを育てる楽しさ」など

母親として成長していることに 関する記述

その子として受容 「子どもは自分の分身ではない」,「この子でいいんだ」,「親の 所有物ではない」など

子どもをその子として受容する ことに関する記述

Table 2 母子通園施設を利用した母親の心理状態

数量化Ⅲ類における カテゴリースコア 区分 項   目    件数 (%) 第1軸 第2軸

1 入 園 時

1 できないことへの心配 28 53.85 0.54 0.63 2 障害対応への悩み 23 44.23 – 0.19 – 1.15 3 障害を伴う育児への不安 19 36.54 – 0.37 0.10 4 思いのあてはめ 18 34.62 0.29 – 0.91 5 通園への戸惑い 15 28.85 0.41 – 0.01 6 子育ての辛さ 11 21.15 – 1.70 0.81 7 自責から解放 2 3.85 – 4.98 7.47 2

通 園 中

1 子どもの成長への気づき 36 69.23 0.08 0.05 2 母親成長の気づき 26 50.00 0.51 – 0.19 3 サポートの気づき 23 44.23 0.34 – 0.84 4 子育て困難感 10 19.23 – 1.94 2.79 5 自分のせいではない 4 7.69 – 0.09 – 0.13 3

卒 園 時

1 サポートの実感 19 36.54 0.28 0.52 2 前向きな子育て 18 34.62 – 1.26 – 1.04

3 母子の関係を大切 17 32.69 1.30 0.20 4 母親成長の実感 15 28.85 – 0.54 0.17

5 その子として受容 9 17.31 1.41 0.70 N =52

Figure 1 母親の心理状態のカテゴリースコアの散布図

注.四角内の数字はTable 2の区分で表記した母親の心理状態を参照。

設の「通園への戸惑い」を抱きながら,通園中には「子 どもの成長への気づき」,「母親成長の気づき」,「自分の せいではない」,卒園時には「サポートの実感」,「母子 の関係を大切」,「母親成長の実感」,「その子として受容」

という10項目で,母親が発達促進的に子どものことを 受容し,関わろうとしている気持ちが窺われることから

〈関係発達的育児希求〉とした。4つ目は入園時の母親 自身の子育ての「思いのあてはめ」によって「障害対応 への悩み」,通園中の「サポートの気づき」を経て,卒 園時は「前向きな子育て」という4項目で,母親の子ど もをよりよく育てたいという気持ちが窺われることから

〈育児効力感希求〉とした。

4つのカテゴリーについて,第1軸と第2軸のカテ ゴリースコアによりそれぞれ多重比較を行ったところ

(Table 4),第1軸では〈関係発達的育児希求〉と〈育児

効力感希求〉に有意な差がなかったが,他のカテゴリー 間では有意な差があった。第2軸では4つのカテゴリー 間に有意な差があった。

障害告知により自責から解放された母親の気持ち 入園時の障害告知による〈自責解放〉のカテゴリー は,数量化Ⅲ類およびクラスター分析の結果から,通園 中,卒園時の母親の気持ちが含まれていなかったので,

このカテゴリーが支援によってどのように変化していっ たかを検討するために,2つに事例について個別に質的 に分析した(Table 5)。事例1では,入園時の〈自責解 放〉が支援によって,通園中には〈育児困難感〉に変化 し,卒園時には〈育児効力感希求〉となっていった。ま

た,事例2では,入園時の〈自責解放〉に合わせて〈育 児困難感〉と〈関係発達的育児希求〉を抱いていた。そ れらの気持ちは支援によって,通園中には〈育児困難感〉

と〈関係発達的育児希求〉に,そして,卒園時には〈関 係発達的育児希求〉に変化していった。

考   察

母親の心理的構造

2軸についての解釈 数量化Ⅲ類で採用した2軸のう ち第1軸は,入園時の「自責から解放」が– 4.98,通園 中の「子育て困難感」が–1.94,卒園時の「その子とし て受容」が1.41であったことから,母親の障害受容に ついての気持ちが関係していると思われたので,障害観 の軸とした。障害観は,マイナスになるほど障害への対 応について困難を感じ,プラスの方向では障害への対応 についての困難感は低いと考えられた。子どもの障害の 診断の有無の布置から,障害の診断を実施している場合 はマイナスの部分であった。子どもの障害についての状 況が比較的明確であって,障害への対応に困難を感じて いたことが診断の実施になったと推測された。障害の診 断を実施していない場合がプラスの部分であることは,

障害に対する困難感が低いため,診断の実施を見合わせ ていることが推測された。このように,障害の診断の有 無の側面からも,この軸が障害についての困難感の大小 に関連したものであることが考えられた。

第2軸は,入園時の「自責から解放」が7.47,通園中 の「子育て困難感」が2.79,卒園時の「前向きな子育て」

Table 3 各軸における子どもの性別と診断の有無の属性平均と標準偏差

子どもの性別 子どもの診断の有無

男子 女子 t値 診断有 未診断 t値

第1軸 – 0.29  0.69 

2.97** – 0.24  0.52 

2.28*

(1.09) (0.93) (1.18) (0.79)

第2軸 – 0.42  0.94 

4.78** – 0.11  0.09 

(0.98) (0.67) (1.09) (1.10) n.s.

注.( )内は標準偏差。*p <.05,**p <.01

Table 4 各カテゴリーにおけるカテゴリースコアの平均値と標準偏差

①自責解放 ②育児困難感 ③関係発達的  育児希求 

④育児効力感

希求 F値 多重比較

第1軸 – 4.98  – 1.82  0.35  – 0.21 

24.83** ①<②<③

(0.00) (0.17) (0.64) (0.75) ①<②<④

第2軸 7.47  1.80  0.21  – 0.99 

92.50** ①>②>③>④

(0.00) (1.40) (0.31) (0.14)

注.( )内は標準偏差。**p <.01

ドキュメント内 問   題 (ページ 106-113)