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目   的

ドキュメント内 問   題 (ページ 73-90)

本研究の目的の第1は,5,6歳児が,均等分配でき ない数の飴を4人の同性同年齢グループでどのように分 配するか,グループとしての分配行動の発達的特徴を明 らかにすることである。分配前にピア間で自他を意識し た言語的プランニングはみられるか,分配過程において 均等分配できない数の飴をどのように扱うか,飴の授受 や言語的やりとりといった相互交渉はみられるかについ て,グループにおける分配のプロセスを分析することに よって明らかにする。

目的の第2は,お互いに見知らぬ幼児4人が出会い,

遊びを通してどのようにピア関係を形成していくか,そ のプロセスを時系列的に検討すること,そしてそこで把 握されたピア関係の成熟度がグループの分配行動とどの ように関連するかについて明らかにすることである。

方   法

参加者

所属園の異なる見知らぬ子どもどうし,同性同年齢4 名1組のグループを設定した。対象としたのは5歳児 12グループ48名(男児32名,女児16名),6歳児13 グループ52名(男児32名,女児20名)であった。5 歳児の平均月齢は61.4ヶ月(範囲59ヶ月から64ヶ月),

6歳児の平均月齢は73.3ヶ月(範囲72ヶ月から76ヶ月)

であった。

材 料

幼児4人のグループに分配させる材料として,パッ ケージが色分けされた3種類の飴を5個ずつ,計15個 用意した。これは4人では均等分配できない数である。

3歳から6歳までの幼児における分離量の均等配分につ いて検討した山名(2005)によると,5,6歳児では,12個,

16個,あるいは20個のチップを4枚の皿に均等配分す る課題では5歳児75%以上,6歳児80%以上の正答が みられること,また5,6歳では配分先の皿に最終的に 配分すべきチップの数を,配分する前から予め予想した 方略が増加することが指摘されている。これより,5,6 歳児が,グループのみんなで均等分配すると仮定した場 合に自分の取り分のおおよその見積もりができる全体量 であり,かつ均等分配ができないことにより問題解決の ための対人葛藤が生起しやすいことが予測される数とし て,15個を設定した。

手続き

保育的観察は,ハーフミラーが設置された約4.3 m 四 方,高さ約2.7 m の専用の観察ブースで,各グループお よそ45分間行われた。ブース内には記録用のカメラと 集音マイク以外は何も置かれていない。

セッション最後の飴の分配場面では,保育リーダーに よって円卓が観察ブース中央に持ち込まれた。円卓の周 りに座った4人に保育リーダーがひとり1個ずつカッ プを渡した後,15個の飴を円卓中央の場に山盛りにし て置く。そして「みんなで分けてください」と教示した 後,保育リーダーは円卓から離れて観察ブースの隅に位 置し,参加者の自発的な分配を妨げないようにした。参 加者によって場の飴が分配された後,飴の授受や発話な どの相互交渉の生起がみられない時間が10秒経過した 時点で,保育リーダーが円卓に近づき「それでいいです か」と言語的介入をした。それによって分配が再開した 場合は,再び相互交渉の生起がみられなくなるまで保育 リーダーは観察ブースの隅で経過を見守った。保育リー ダーの「それでいいですか」に対して,参加者がうなず く,再分配への動きがみられないなど,参加者の課題終 了への了解があったと保育リーダーが判断した時点で終 了とした。

記 録

観 察 ブ ー ス に 取 り 付 け ら れ たCCDカ メ ラ(SONY EVI-D70)6台 と 集 音 マ イ ク(Behringer B-5)2本 に よって得られた映像と音声をハードディスクレコーダー

(Victor VR-777DX)に入力,記録し,分析の資料とした。

結   果

1 .グループにおける飴の分配方略

グループにおける飴の分配行動を分析する視点とし

て,飴の授受と飴の分配に関する発話に着目した。ビデ オ記録から,子どもと円卓中央の場との間の飴の移動(場 から飴を自分のカップに入れる,場から飴を他児のカッ プに入れる,自分のカップから場に飴を出す,他児のカッ プから場に飴を出す),子どもどうしの飴の授受(子ども が自分のカップから他児のカップに入れる,他児のカッ プから自分のカップに入れる,子どもが他児のカップか ら別の他児のカップへ移す)と,飴の分配にかかわる発 話プロトコルを時系列にそって記録した。これをもとに,

グループにおける飴の分配方略を分析した。なお,ここ ではグループ内の相互交渉の生起に着目したので,個人 の最終的な獲得個数については分析対象としなかった。

時系列的な視点からグループにおける飴の分配方略を みると,4つのカテゴリーに分類できた。保育リーダー によって円卓中央の場に置かれた飴を,メンバーが,飴 の授受や言語的やりとりなどの相互交渉をしながら場の 飴がすべてなくなるまで分配したもの(A:相互交渉に よる分配),メンバーが,場の飴をすべてなくなるまで,

まず各々自分のカップに取り入れた後,各々のカップを 見比べ,それから再分配したもの(B:自分への分配後,

自発的再分配),メンバーが,場の飴をすべてなくなる まで,まず各々自分のカップに取り入れた後,保育リー ダーの「それでいいですか?」の言語的介入によって再 分配したもの(C:自分への分配後,介入による再分配),

メンバーが各々自分のカップに取り入れるのみで,保育

リーダーの言語的介入後も再分配がみられなかったもの

(D:自分への分配のみ)である。これらのカテゴリー に基づき,2人の評定者が独立に各グループの分配方略 を録画映像を見ながら評定した後(一致率96.0%),合 議によりコーディングした。その結果を年齢別にTable

1に示す。

飴の分配方略の分布について年齢間で2×4のFisher の直接確率計算を行った結果,グループ数の偏りは有意 であった(p = .006, 両側検定)。さらに,年齢間で分配 方略Aとそれ以外の分配方略(B,C,D)の分布について,

2×2のFisherの直接確率計算を行った結果,6歳児に

方略Aが有意に多くみられた( p = .015, 両側検定)。また,

5歳児,6歳児ともに性別によるグループ数の偏りは有 意ではなかった。

5歳児グループでは,場の飴がなくなるまで自分のと ころへ分配するのみか,まずは自分のところへ分配後,

お互いが獲得した飴を見比べ合い,再分配を行うといっ た特徴がみられ,6歳児グループでは,分配のはじめか ら自他のことを考慮した相互交渉(飴の授受や言語的や りとり)をしながら分配するといった特徴が捉えられた。

2 .それぞれの子どもの分配方略

a.飴の授受への関与 飴の授受にどのように関与し たかについて,子ども個人レベルの分配方略をTable 2 に示した。自分のところだけに分配したものと,自分以 外のところへも分配(自分から他児へ,自分から場へ,

Table 1 グループにおける飴の分配方略

飴の分配方略

5歳児グループ N =12

6歳児グループ N =13 男児

N =8

女児

N =4 計 男児

N =8

女児

N =5 計

A:相互交渉による分配  0 0 0 4 2 6

B:自分への分配後,自発的再分配  0 2 2 3 1 4

C:自分への分配後,介入による再分配  2 1 3 0 0 0

D:自分への分配のみ 6 1 7 1 2 3

注.Nはグループ数。

Table 2 それぞれの子どもの飴の授受への関与

5歳児グループ n =48 6歳児グループ n =52 男児

n =32

女児

n =16 計 男児

n =32

女児

n =20 計

自分と,他児や場へ分配したもの  7 7 14 17  6 23

自分のみへ分配したもの 23 9 32 14 14 28

分配に関与しなかったもの  2 0  2  1  0  1 注.nは人数。

他児から他児へ,場から他児へ,他児から場へ)した ものの出現に,年齢間で2×2のχ2検定を行った結果,

有意な差はみられなかった。ただし,性別ごとにみると,

男児においては,5歳と6歳の間で人数の偏りは有意で あった(χ(1)2 = 6.341,p < .05)。5歳男児では自分のと ころだけに分配したものが多かったが,6歳男児では自 分以外のところへの分配にも関与したものが有意に多く なることが示された。女児においてはそのような傾向は みられなかった。

なお,飴の分配に関与しなかった者が5歳児に2名,

6歳児に1名あり,いずれも観察セッションの保護者退 室の場面で母子分離ができなかったケースであった。5 歳児の2名は他児から分配されて複数個の飴を獲得し た。6歳児の1名は飴を獲得できなかったが,他児がカッ プに入れようとする,カップに入っていないことを他児 が保育リーダーに訴えるなどの他児から気配りを受ける 行為がみられた。

b.飴の分配に関する発話の生起 飴の分配に関する 発話として,他児に向けられた発話と,保育リーダーに 向けられた発話が観察された。どちらに向けられた発話 であるかの判断は,発話の際の視線によって判断した。

子どもは円卓を囲んで向かいあった位置にあったが,一 方,保育リーダーは子どもどうしの自発的なやりとりを 尊重しできるだけ分配のプロセスに関与しないように円 卓から離れた観察室の隅に位置していたので,保育リー ダーに発話する際には子どもは意図的にふり向くことが 観察され,どちらに向けられた発話であるかについては 明確であった。飴の分配に関して,他児に向けられた発 話の生起と,保育リーダーに向けられた発話の生起につ いて,Table 3に示した。

他児への発話あり,発話なしについて年齢間でχ2検 定を行った結果,人数の偏りは有意であった(χ(2 1)= 17.935,p < .01)。すなわち,5歳児よりも6歳児の方が,

他児へ飴の分配に関する発話を向ける者が多かった。各 年齢における性差は認められなかった。飴の分配に関す る他児へ向けた発話の内容として,提案(例:「みんな が3個にしよう」「ジャンケンで決めよう」),指摘(「えー,

1個足りない,どうする?」),質問(「何個ある?」「こ れいる人?」),応答(「いらない」「いいよ」),宣言(「お れ3個」),主張(「おれも欲しい」「ずるいで」「いいな あ」),譲歩(「あげようか」「まあいいや,これで」)といっ た発話が出現し,言語による自他間の調整が図られた。

飴の分配に関する保育リーダーへの発話の生起の有無 については,年齢差,性差ともにみられなかった。発話 の内容をみると,たとえば「ぼく3個」「ぼく(飴を他児に)

あげた」「先生,この人ずるいです」など自分や相手の 獲得個数や行動について報告する発話や,「あと1個足 りない」「先生が取ったんじゃない?」など保育リーダー に解決の援助を求める発話が出現した。

以上より,飴の分配に関する発話をみると,5歳児 から6歳児にかけて,保育リーダーに承認や解決の援 助を求める発話の生起(5歳児:48人中12人〔出現率

25.0%〕,6歳児:52人中14人〔同26.9%〕)に増加は

みられず,一方,子どもどうしでピア間の調整を図るこ とができる言語能力が伸びる(5歳児:48人中12人〔出 現率25.0%〕,6歳児:52人中35人〔同67.3%〕)こと が明らかになった。

3 .飴の分配方略とピア関係形成レベルとの関連 飴の分配場面は,保育的観察の一連のセッションの最 後に設定された。飴の分配場面に至るまでの一連の遊び のセッションを通して,どのようなピア関係が形成され ていたかが,飴の分配における行動に関与することが予 測される。そこで,4人の遊びを,保育リーダーが組織 した「あぶくたった」遊びを経験する前後の,自由場面1, 自由場面2においてグループがみせた遊びの内容につい て質的に分析し,時系列的変化を検討することによって,

初めて出会った4人のピア関係が遊びを通して成熟して いく変化を捉えることを試みた。そして,4人の集団遊 びへの参加の程度と遊びの質を指標とするピア関係の成 熟度と,均等分配できない数の飴を分配するという,グ ループの対人葛藤が生起しやすい状況における問題解決 場面でグループがとった分配方略との関連について検討 した。

なお,飴の分配場面では全グループにおいて,4人の Table 3 飴の分配に関する発話の生起

5歳児 n =48 6歳児 n =52

男児 n =32

女児

n =16 計 男児

n =32

女児

n =20 計

他児への発話あり  8  4 12 22 13 35

他児への発話なし 24 12 36 10  7 17

保育リーダーへの発話あり   9  3 12  8  6 14 保育リーダーへの発話なし 23 13 36 24 14 38

注.nは人数。

ドキュメント内 問   題 (ページ 73-90)