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第 4 章 デジタル型 POP コンテンツの五感への訴求表現

2 結論

2.1 従来型 POP の訴求表現(訴求文言及びデザイン要素)

従来型の紙素材POPにおける訴求表現に関して架空のチョコレート商材を対象に、

行動経済学の心理効果を適用した文言情報とデザイン仕様について、下記仮説に対して、

消費者の印象評価及び購買意向について実験した結果、3 つの結論にたどりついた。

仮説 1-a. チョコレートの場合、POP のデザインが同じとき、ハロー効果を適用した POP の方が適 用しない POP より消費者の POP に対する印象評価が高く、且つポジティブな購買意欲を示す。

仮説 1-b. チョコレートの場合、POP のデザインが同じとき、ハロー効果を適用した POP に対し、

訴求文言の対象に該当する消費者の方が非該当者よりも、POP に対する印象評価が高く、且つ ポジティブな購買意欲を示す。

仮説 2-a. チョコレートの場合、POP のデザインが同じとき、損失回避効果を適用した POP の方 が適用しない POP より消費者の POP に対する印象評価が高く、且つポジティブな購買意欲を示 す。

仮説 2-b. チョコレートの場合、POP のデザインが同じとき、ハロー効果を適用した POP の方が 損失回避を適用した POP より消費者の印象評価が高く、且つポジティブな購買意欲を示す

仮説 3-a. チョコレートの場合、同じ訴求文言を記載した POP のとき、商品パッケージ画像があ る POP の方がない POP よりも消費者の印象評価が高く、且つポジティブな購買意欲を示す。

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仮説 3-b. チョコレートの場合、同じ訴求文言を記載し POP のとき、商品パッケージと同系色の POP の方が注意色を用いた POP よりも消費者の印象評価が高く、且つポジティブな購買意欲を 示す。

結論①行動経済学の適用有無による効果

評価実験の結果、チョコレート・カテゴリにおいて、ハロー効果と損失回避を適用し たPOP は適用しない制御 POP よりも消費者に高く評価され、且つポジティブな購買 意向を促す結果が得られた。販促を目的としたPOPに行動経済学の心理効果を適用す ることで、より消費者の関心を促し、購買意向を高めることが示唆された。しかし、POP に対する評価において、自分が訴求対象に該当するとしても、高くPOPを評価すると は限らない結果となった。昨今、クチコミPOPを用いることで一定の売上への影響が みられ、積極的に取り入れる店舗もふえているが、商材特性や訴求ターゲットに応じ、

情報の取捨選択をする必要があることが示唆された。

結論② 行動経済学の適用種類による効果

チョコレート・カテゴリにおいて、ハロー効果と損失回避の適用効果について比較し た結果、どちらかの効果がより有効であるという結論には至らなかった。印象評価・購 入意向ともに、ハロー効果の適用がより評価されたものの、有意差はみられなかった。

考えられる要因としては、チョコレートは嗜好性の高い商材のため、たとえ摂食しなく とも身体に影響がないことから、損失するリスクを感じさせない表現であったことが要 因だと考えられる。ハロー効果は一般的に後光が作用し、商品の品質や効果をより信頼 性の高いもの、良いものにみえる作用があるため、適用対象は幅広いといえる。それに 対して、損失回避は商品ベネフィットを前面に提示するのではなく、使用しない場合に 起こりうるロスに着眼しているため、適用できる損失が想定されるカテゴリも限定され ると考えられる。そのため、心理効果を適用する際に、適用する商材の特徴との相性も 十分検討すべきであるといえる。

結論③ POPのデザイン仕様の違いによる効果

POP における訴求文言が同じ際に、デザイン仕様の違いによる消費者の印象評価及 び購買意向に違いが生じるかについて検証を行った結果、商品画像を適用したPOPは 商品画像を適用しないPOPに比べ、消費者の印象評価が高く、且つ消費者の購買意欲

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喚起にポジティブな影響を与えることが明らかとなった。また、POP に適用する色に ついて、パッケージと同系色の POPに比べ、注意喚起する赤色を用いた POP の方が 印象評価は高かったが、購買意欲へのポジティブな影響は得られなかった。

広義の行動経済学を適用したPOPの評価及び購買への影響について、文言の表現と デザイン要素(色と商品パッケージ画像の有無)の 2 方面からアプローチした結果、店 頭における従来型POP広告の訴求情報に行動経済学を適用することは有効であり、且 つ消費者にも一定のポジティブな購買影響を与えることができるといえる。しかし、適 用する商材と適用する効果に関しては制作時に十分に吟味すべきである。また、POPの デザイン要件について、商品画像をPOPに掲載することは棚前における商品視認性を 高め、POP 商品情報の補完となるだけでなく、購買意欲の喚起にも寄与できる。さら に、POP の色については、制作者の間でも議論となっているパッケージ色と同色もし くは注意色にすべきかについて、消費者に与える印象では注意色(赤)の適用に一定の 効果はみられたものの、購買意欲を喚起とまでは至っていない。商品の売場での展開規 模に視認性が影響されると考えられるため、POP 本体のみならず、展開する売場状況 についても企画制作時に考慮すべきであるといえる。

2.2 デジタル型 POP の五感への訴求表現

コンテンツ制作時に、デジタル型POPの媒体特性を活かした五感への訴求表現に関 して、企画立案時の五感表現フレームを構築し、さらに菓子類・T シャツ・メイクアッ プ化粧品の 3 カテゴリに適用し、実験を行った結果、各カテゴリにおいて優先すべき訴 求表現項目が得られた。

結論①五感表現フレームの構築

インタラクティブ性をもつデジタル型POPと消費者間のコミュニケーションにおい て、販促を目的とした際のコミュニケーションについて整理した結果、情報の表現区分 として、五感に分けることに加え、「商品」「商品以外」「能動的」「受動的」の情報区分 が考えられる。これらを集約し、五感表現フレームを構築した。このフレームを用いる ことで、販促を目的とする五感コンテンツ制作の企画立案時に考慮すべき要素の整理に 活かせるなど実務的な意義をもつ(図 5-1)。

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図 5-1 五感表現フレーム

結論②カテゴリ別優先すべき感覚項目の明確化

構築した五感表現フレームを用いり、菓子類、Tシャツ及びメイクアップ化粧品の 3 カテゴリに適用し、消費者が興味を示す度合いについて実験した結果、デジタル型POP のコンテンツを制作する際の優先すべき感覚表現とその内訳を抽出することができた

(表 5-1)。この結果は、販促を目的としたコンテンツの売上への寄与も期待できること を示唆している。

表 5-1 3 カテゴリにおいて優先すべき項目

カテゴリ 優先順位1 優先順位 2

菓子類 味覚(そばでの試食) 視覚

(鮮やかな映像)

T シャツ 触覚

(そばで実商品を手に取って体感できる)

視覚

(鮮やかな映像)

メイクアップ化粧品 嗅覚

(紹介されている商品の香りをその場でかげる)

触覚

(そばで実商品を手にとって体 感できる)

結論③各訴求感覚間における相関性

実験をとおして、各カテゴリに対応する訴求(五感)効果に相関があることがわかり、

五感表現より生み出される効果が訴求効果に有効に働くことが明らかとなった。触覚に よる訴求が店頭での購買促進に有効に働くため、触覚とそれ以外の感覚(視覚・聴覚・

嗅覚・味覚)の相関が明らかとなることで、五感訴求表現により生み出される効果が消

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費者のポジティブな購買意向の喚起に有効的であることが示唆される。

2.3 店頭 POP における訴求表現

先述 2.1 と 2.2 では、従来型POPとデジタル型POPそれぞれの媒体特徴にあった情 報の訴求表現について実験をとおして、訴求表現について一部有効な結論を得ることが できた。本研究で得られた訴求表現の成果について表 5-2にまとめている。

表 5-2 本研究で明らかにした課題と対応する研究成果

対象 課題 明らかにすべき項目 研究成果

従来型POP

・POP の形態の多さから POP のメッセージ内容に ついて追及されていない。

・文字訴求表現(リスク回避、

ハロー効果)による消費者の印 象評価

・ビジュアル要素(色と画像)に よる消費者の印象評価

(チョコレート・カテゴリにおいて)

・POPに行動経済学・商品画像を適用し た際に、消費者に好印象を与え、ポジティブ な購買影響を与える。

・注意色(赤)を適用することで好印象を 与える。

デジタル型POP

・中身のコンテンツ制作に おいて、どのような訴求表 現が好まれるか追及しき れていない。

・消費者が興味を示す五感訴 求表現

(菓子類、T シャツ、メイクアップ化粧品)

・コンテンツ制作時の五感表現フレームの構

・消費者評価を通して、制作実施における 注力項目の明確化

・五感訴求表現の購買へのポジティブな影

これまで、紙素材が主である従来型POPとデジタルサイネージを主体としたデジタ ル型POPについては、切り離されて研究されてきた。店頭においても、これまでの販 促活動では販促目的や実施場所、訴求ターゲット、予算に応じて、販促に使用するツー ルを使い分けてきたが、これらの媒体の表現特性を十分に把握し、特性に対応したコン テンツの制作が実現できているとは言いがたい状況であった。しかし、売場におけるデ ジタルシフトがみられるなかで、デジタルを軸とした各種販促ツールの需要が今後益々 増えることが予想される。富士キメラ総研は、スーパーにおけるデジタルサイネージの 設置場所と今後の有望コンテンツについてまとめており57、依然スーパーでは、情報提 供と販促という 2 軸での活用がみられるが、今後オムニチャネル戦略が進み、その強化 施策として店頭とECの相互送客を担う役割も期待され、加え実店舗だから提供できる 付加価値の提供に寄与できる店頭媒体が求められる(表 5-3)。さらに、序論で述べたよ

57 富士キメラ総研(2015)『デジタルサイネージ市場総調査 2015』, p15-18

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