電系では,第1副反射鏡と第4集束反射鏡問との距離が第1副反射鏡上における広帯 域条件を満足するように決定される.集束ビーム給電系が実現されると従来に比較し て,低コスト化は勿論のこと円形導波管で発生する高次モードと楕円形歪に起因して 発生する交差偏波成分が低減される.以下に本論文の具体的な内容について述べる.
第2章では,ビームモード展開法を用いた多重反射鏡オフセットアンテナの簡易設 計法を確立するとともに,サイドローブ特性の要因別改善法を開発し,三枚反射鏡オ
フセットアンテナの設計例を示している.ここで述べる設計法は,アンテナの利得お よび近軸・広角放射特性の最適化を実現する方法である.また,設計法をより簡略化 するために,主反射鏡開口分布に位相誤差のない高能率化条件を定式化している.さ らに,多重反射鏡オフセットアンテナの波動的交差偏波消去条件を導出している.こ の条件式は周波数に関係しない幾何学的関係式であり,この条件式を満足する鏡面系 は,周波数に関係なく反射鏡の非対称性に起因する交差偏波成分は発生しない.検討 の結果,一枚反射鏡および二枚反射鏡オフセットアンテナでは,回転対称な系か,反 射鏡が平面反射鏡の場合のような特殊な場合にしか波動的交差偏波消去条件が成立せ ず,一般的には,3枚以上の回転二次曲面鏡を有するアンテナに波動的交差偏波消去 条件が成立する.一般式から,三枚反射鏡および四枚反射鏡オフセットアンテナの波 動的交差偏波消去条件を導出している.さらに,ビームモード展開法を用いて,主反 射鏡開口分布が周波数で変化しない広帯域条件の一般式を導出している.ビームモー ド展開法に基づいて開発した設計法の妥当性を確認するために,三枚反射鏡オフセッ トアンテナの試作実験結果について述べている.試作したアンテナは,構造パラメー タを変化させて,高能率化と反射鏡のエッジレベルの最適化を図ったため,第2副反 射鏡が平面反射鏡となり,結果的には二枚反射鏡系を折り返した構成となり波動的交 差偏波消去条件を満足しないが,ホーンレフレクタアンテナに比較して,高性能な性 能が得られている.
第3章では,第2章で述べたアンテナの更なる性能改善を目的として,波動的交差
について述べている.この設計法は,前章の構造パラメータの許容限界内で電気性能 の最適化を図る方法と違って,予め必要とされる電気性能を与えて,アンテナの構造 を最小とするようにパラメータの最適化を図っている,まず,前章で導出した三枚反 射鏡オフセットアンテナの波動的交差偏波消去条件から,この条件式を満足する13ケ ースの鏡面系の可能な形態を示している.次に,アンテナの設計法について述べてい る.まず,28個の設計パラメータから13個のビームモードパラメータ問の関係式と波 動的交差偏波消去条件,高能率化条件,給電方向と放射方向の直交条件など4個の条 件式を差し引いて,11個の設計の自由度を求める.さらに,これらの設計パラメータ
と関係式および条件式を用いて設計の手順を示し,三枚反射鏡オフセットアンテナの 設計法を示している.設計法の妥当性を検証するために,三枚反射鏡オフセットアン テナの試作実験をおこない優れた性能を得た.特に,交差偏波ピークレベルは4,5,
6GHz帯にわたって周波数特性がなく一40dB以下を実現している.また,水平面内広角 放射特性は20度以上で一60dB以下を実現している.以上の電気「生能は,ホーンレフレ
クタアンテナを凌駕するもであり,国内のマイクロ波中継回線に広く使用されている.
第4章では,一次放射器に近い反射鏡を平面反射鏡とした第5章で述べるオーバサイ ズ円形曲り導波管の機能を持つ五枚反射鏡オフセットアンテナ系を実現するために,
周波数依存性のない波動的交差偏波消去条件と広帯域条件を適用した高能率化条件を 同時に満足する四枚反射鏡オフセットアンテナの簡易設計法について述べている.設 計パラメータは,三枚反射区系の設計パラメータ28個に対して,36個と大幅に増えて いるが,設計式のグラフ表示化と広帯域条件と波動的交差偏波消去条件の関係により,
三枚反射鏡系の設計と同程度の設計時間となる.設計例では,ビームモード展開法に
セットアンテナ系について提案している.マイクロ波FDM方式では,偏波共用によ り隣接チャンネル間の干渉を軽減し,伝送容量の増大を図るためには給電系総合の XPD(交差偏波識別度)特性を改善する必要があった.このため,ホーンレフレクタ
アンテナの方向調整要領として,TM。1モード法が開発され, XPD38dBが実現された.
三枚反射鏡オフセットアンテナは,開発着手の段階では幾何光学的交差偏波消去条件 によって設計し実用化実験を進めていたが,試作アンテナの交差偏波ピークレベルは 4,5,6GHz帯にわたって一27dB程度であり,実用化するにはまだ不充分であった.
波動的交差偏波消去条件は,3枚以上の回転二次曲面鏡で構成される多重反射鏡オフ セットアンテナで成立する条件であり,周波数に関係しない幾何学的な関係式である.
試作したアンテナの交差偏波波ピークレベルは4,5,6GHz帯全帯域にわたって周波 数特性がなく,一40dB以下が達成されている.このアンテナによって現地における施 工性が大幅に改善され,その経済効果は非常に大きい.4,5,6GHz帯共用の給電系 はホーンレフレクタアンテナ用の給電系として開発され,広帯域に亘って高性能な電 気性能を有しているために,現在においても使用されている.ところが,給電系を鉄 塔の任意の位置に設置することが困難である.この章では,新たに提案するオフセッ トアンテナ系によって,これが可能となり,その電気的性能を明かにしている.曲り 導波管給電三枚反射鏡オフセットアンテナ系では,高次モードが伝搬可能なオーバサ イズ円形曲り導波管に基本モード(TEuモード)が入力した場合, TE21, TM。、モー
ドなどが発生する.これらはオーバサイズ円形曲り導波管の交差偏波識別度(XPD)
特性を劣化させる.特に,TMo、モードは,平行偏波に比較して,垂直偏波での発生が ごく少ないため,楕円偏波の基本モードが入力した場合,出力端では位相差が生じ,
入力した楕円偏波の楕円偏波率が変化し,XPD特性を劣化させる.さらに,導波管内 径の管径歪みによっても長軸,短軸方向に位相差が生じ,出力端では,合成した波が 楕円偏波となり,XPD特性を劣化させる.円形曲り導波管の交差偏波特性を定量的に 評価するため,円形曲り導波管の管径歪みによって生じる位相差成分と高次モードに
分離した等価位相差板に置き換えることができ,この結果を用いて,オーバサイズ円 形曲り導波管の交差偏波特性を理論的に明かにした.管径歪みとTM。1モードによっ て発生する交差偏波成分は,所定の楕円偏波率を持つ楕円導波管と回転導波管を組み 合わせた交差偏波補償器により抑圧できることを提案している.以上の検討結果を確 かめるために,電気試験用の円形曲り導波管を試作した.試作した導波管は4,5,6GHz 帯で使用するもので,管径が69mm,曲げ半径が1000mm,曲げ角度が90。である.
この導波管は管径の歪みが0.15mm,長軸の傾きが66。であり,単体のXPD特性は