第 2 章 ではこの光電子放出の原理、電子軌道、そして電子増倍部に ついて記述します。
6.2 結果と考察
本ビームテストではプラスチックシンチレータの時間分解能、チェレンコフ検出器の厚さ 依存性と、照射位置・角度依存性を測定した。照射位置・角度の定義を図6.4に示す。中心軸 上と、端に照射した時の位置xの依存性を測定した。また、MPPCに並行な平面内の角度を ϕ, 垂直な平面内の角度をθ と定義して角度依存性を測定した。なお、θ > 0はMPPC方向 へ粒子を入射させる方向とする。
端
MPPC
UVアクリル
位置 : 中心 シンチレータ φ θ
図6.4 入射位置xと入射角度θとφの定義。
6.2 結果と考察 39
6.2.1 チェレンコフ検出器の厚さ依存性
照射位置x= 150 mm, (ϕ, θ) = (0,0)での垂直入射において、アクリル厚10, 15, 20 mm の厚さ依存性を測定した。得られた結果を図6.5と6.6に示す。UVアクリルが厚い程、大き い信号が得られておりS/N比も向上した。また、最も薄い10 mm 厚でも要求値のS/N比 20を達成することが出来た。したがって、以下での測定では10 mm厚のUVアクリルを用 いて測定した。
Thickness [mm]
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22
Pulse Height [mV]
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Thickness
図6.5 チェレンコフ検出器の波高のUVア ク リ ル 厚 依 存 性 。横 軸 はUVア ク リ ル の 厚 さ、縦軸は波高を表す。
Thickness [mm]
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22
S/N
0 10 20 30 40 50
Graph
図6.6 チェレンコフ検出器のS/N比のUV アクリル厚依存性。横軸はUVアクリルの厚 さ、縦軸はS/N比を表す。
6.2.2 プラスチックシンチレータの時間分解能
時間分解能の評価では、時刻の基準にはシンチレータ1, 2が閾値に達した時刻の平均値を 原点と定義し、プラスチックシンチレータの信号が閾値に達した時刻を測定した。閾値に達 する時刻tは波高pに依存し、時間分布の広がりによって分解能が悪化する。これを防ぐた め、t =a+b/√pの関数でフィットし、波高に応じた時間補正を行うのが一般的である。図 6.7に波高に対するプラスチックシンチレータの時刻とフィット結果を示す。このフィット 結果をもとに、測定値tmeasure に対して補正値tcorrectionを以下の式で定義した。
tcorrection =tmeasure−b/√p (6.1) 各位置・角度での測定結果を図6.8に示す。すべての測定点で応答時刻は10 nsで一定であ る。また、時間分解能は要求値 1 nsを満たしていた。
40 第6章 データ解析
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15
20 t
Entries 21239
Mean x 89.47
Mean y 1.796
RMS x 51.92
RMS y 3.062
/ ndf
χ2 3855 / 403
p0 8.577 ± 0.3009 p1 -57.12 ± 2.358
t
Entries 21239
Mean x 89.47
Mean y 1.796
RMS x 51.92
RMS y 3.062
/ ndf
χ2 3855 / 403
p0 8.577 ± 0.3009 p1 -57.12 ± 2.358
(tdc3[0]+tdc4[0])/2.0 - tdc2[5] : padc2
Pulse Height [mV]
Time [ns]
図6.7 波高に対するプラスチックシンチレータの応答時刻。横軸はプラスチックシンチ レータの波高、縦軸は応答時刻である。補正を行うため、t=a+b/√pの関数でフィット した結果、(a, b) = (8.58,−57.12)を得た。
position [mm]
0 50 100 150 200 250 300
Time [ns]
10-1
1 10
center Time Resolution Center
position [mm]
0 50 100 150 200 250 300
Time [ns]
10-1
1 10
edge Time Resolution Edge
[deg]
q 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
Time [ns]
10-1
1 10
phi Time Resolution q
[deg]
e
-60 -40 -20 0 20 40 60
Time [ns]
10-1
1 10
theta Time Resolution
e
図6.8 プラスチックシンチレータの時間応答。縦軸は時間(対数表示)、横軸は位置また は角度である。左上は中心、右上は端での位置依存性を、左下はφ,右下はθの角度依存 性を表す。”Time”(赤)はPMT1, 2の平均時刻からの時間差を、”Resolution”(青)は 時間分解能を表す。
6.2 結果と考察 41
6.2.3 プラスチックシンチレータとチェレンコフ検出器の波高
プラスチックシンチレータとチェレンコフ検出器の波高の位置・角度依存性を図6.9に示 す。プラスチックシンチレータについては、減衰長による影響で、x = 0と比較してx= 300 では波高が30 %程度増加する位置依存性がある。また、角度依存性は、シンチレーション光 の光量は電子の経路長に比例するため、入射角度によって経路長が変化したためだと考えら れる。
チェレンコフ検出器の位置依存性はなく、シンチレータと同様のϕ角度依存性が見られた。
また、θ依存性では0◦ に関して非対称な出力が得られた。これは、チェレンコフ光が放射さ れる臨界角θC によるものであると考える。シンチレーション光は等方的に放出されるが、
チェレンコフ光では粒子の運動方向に対して円錐状に放出される。ESRの表面は鏡面である ため光子の放出角度が保存されて伝播し、その結果、MPPCから遠ざかる方向(θ <0)で は光子の伝播する距離が長く、近づく方向(θ > 0)では短くなり、θに対して非対称な結果 が得られたと考えられる。
トリガー検出器への粒子の入射位置・角度はCDCで測定した粒子の飛跡から求めること ができる。したがって、これらの位置・角度依存性は取得データを解析することで補正する ことができ、動作において支障はない。
42 第6章 データ解析
position [mm]
0 50 100 150 200 250 300
Pulse Height [mV]
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
center Scintillator Cherenkov Center
position [mm]
0 50 100 150 200 250 300
Pulse Height [mV]
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
edge Scintillator Cherenkov Edge
[deg]
q 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
Pulse Height [mV]
0 50 100 150 200 250 300
phi Scintillator Cherenkov q
[deg]
e
-60 -40 -20 0 20 40 60
Pulse Height [mV]
0 20 40 60 80 100 120 140
theta Scintillator Cherenkov
e
図6.9 シンチレータ(赤)とチェレンコフ検出器(青)の波高。左上は中心、右上は端で の位置依存性を、左下はφ, 右下はθの角度依存性を表す。縦軸は信号の波高、横軸は位 置または角度である。
43
第 7 章
シミュレーション
東北大学電子光理学研究センターで行ったテスト実験の結果を理解するため、Geant4を用 いたシミュレーションで結果を再現することを試みた。