第 2 章 ではこの光電子放出の原理、電子軌道、そして電子増倍部に ついて記述します。
5.2 実験装置とセットアップ
電子線形加速器
電子線形加速器は熱電子銃、バンチャー、1 m長と 2 m長の2種の加速管で構成される。
熱電子中で生成された熱電子は−80 kVの印可電圧で取り出され、バンチャーに送られバン チ化される。その後、1 mの加速管8本と2 mの加速管12本により200 MeVまで加速さ れる。
ストレッチャー・ブースタリング (STB リング )
線形加速器で加速された電子は円形加速器のSTBリングへ入射される。STBリングは入 射されたパルスビームを連続ビームへと変換するストレッチャー機能と1.2 GeVまで加速可 能なブースター機能を有している。テスト実験では直径11 µmの炭素ファイバーを挿入する ことでリングで蓄積された電子に制動放射を起こさせ、生成されたガンマ線をGeV γ照射室 へと入射した。
GeV γ 照射室
入射されたγ 線は GeV γ 照射室に置いた金属箔で対生成を起こさせ、電子・陽電子対を 生 成 す る 。下 流 の RTAGX 双 極 電 磁 石 で 運 動 量 分 析 し 、電 子 も し く は 陽 電 子 を 取 り 出 す 。
RTAGXのコイル電流を変えることで取り出すビームの運動量を調整することができる。更
に下流には三連四極電磁石が設置されており、ビームを収束させる。テスト実験では金属箔 と し て 5 mm厚 の 銅 板 を 使 用 し 、105 MeVの 電 子 を 取 り 出 す た め にRTAGXの 電 流 値 は 51.2 Aに設定した。
5.2 実験装置とセットアップ
実験装置の概観を図5.2に、ビームを横から見たときのジオメトリを図5.3に示す。上流 からBeam Defining Counter (BDC*1)、プラスチックシンチレータ2枚、トリガー検出器プ ロトタイプ、プラスチックシンチレータ2枚を配置している。上流のシンチレータはPMT Hamamatsu H6533 [33]とプラスチックシンチレータ Saint-Gobain BC-408 [34]を、下流 はPMT (Hamamatsu H7415 [33]) とプラスチックシンチレータ(ELJEN EJ-212 [35])で 構成する。以下では、4枚のプラスチックシンチレータを上流からシンチレータ 1, 2, 3, 4 と定義する。トリガー検出器はx軸ステージもしくは回転ステージに固定しており、コント ローラーでビームに対する位置や角度を変える事が出来る。測定時にはこれらを木製の暗箱 で遮光し、チラー(オリオン PAP01B)を用いてトリガー検出器のMPPC付近が20.0 ℃に
*1詳細は5.2.3章及び付録Aに後述
34 第5章 東北大学電子光理学研究センターにおけるテスト実験
なるよう温度制御した。また、温度を監視するためにPt-100規格の温度センサーを4カ所
(MPPC近傍、フロントエンド回路近傍、サポートの上流側上部、下流側下部)に取り付け、
温度ロガー(グラフテック GL820)で記録した。ビーム照射時には温度が十分安定したこと を確認してデータを取得した。
図5.2 実験装置の全体図。左がビーム上流、
右が下流。
図5.3 15 mm厚UVア ク リ ル に 照 射 し た セットアップについて、横から見たジオメト リ。単位はmm。左がビーム上流、右が下流 に相当する。BDCは1 mm角のシンチレー ションファイバー、上流側シンチレータ2つ は2 mm厚 、下 流 側 シ ン チ レ ー タ 2つ は1 mm厚を用いた。
5.2.1 データ収集システム
使用したデータ収集システムを図5.4に、使用したモジュールを表5.1に示す。テスト実 験では上流側2本、下流側2本の計4本のPMT信号のコインシデンスをトリガーシグナル に採用し、トリガー検出器を貫通した電子イベントについてデータを取得した。
BDCではEASIROCモジュール[36]を使用し、64チャンネルのMPPCの波高情報と2 つの温度計のADC情報を取得した。また、4本のPMT、トリガー検出器のシンチレータ及 びチェレンコフ検出器の波形を2台のDRS4 Evaluation board [37]を用いて取得した。
5.2.2 DRS4 Evaluation Board
テ ス ト 実 験 で 使 用 し たDRS4 Evaluation Board は 、PSI研 究 所 で 開 発 さ れ た DRS4と 呼ば れ るASIC(Application Specific Integrated Circuit)*2チ ッ プ を 搭 載 したWaveForm Digitizer(WFD)である。DRS4は1つの入力チャンネルに対して1024個のキャパシタが
*2特定の用途に特化した集積回路の総称。放射線検出器の読み出しシステムで用いることが多い。
5.2 実験装置とセットアップ 35
図5.4 データ収集系の模式図。青は検出器、黄はNIMモジュール、橙はUSB接続機器を示す。
モジュール種類 型番号 メーカー
8 CH Divider N001 豊伸
4 CH Discriminator N008 豊伸
Coincidence N017 豊伸
2 CH Attenuator N-TM224 テクノランドコーポレーション
NIM-TTL Level Adapter KN200 カイズワークス
表5.1 使用したNIMモジュール。
割り当てられており、各キャパシタで入力波形の電圧を一定の時間間隔で測定することで波 形の取得を行う。サンプリングレートは最大5 GHz、ダイナミックレンジは1 Vで、複数の モジュールを同期させながら動作させることが可能である。テスト実験では1 GHzのサンプ リングレートで動作させ、2台のDRS4 Evaluation boardを用いて波形取得を行った。USB を通してPCとデータ通信を行い、データ取得のプログラムを用いて波形データを記録した。
36 第5章 東北大学電子光理学研究センターにおけるテスト実験
5.2.3 Beam Defining Counter
ビームプロファイルの測定に使用したBeam Defining Counter (BDC) は自身が設計・開 発したものを用いた。1 mm角のシンチレーションファイバーをx, y方向に32本ずつ配置 している。光検出器として片端にMPPC (Hamamatsu 12572-100C[29])を取り付けており、
シンチレーション光を発生したファイバーを組み合わせ、ビーム照射位置を測定する。BDC の制御・読み出しにはEASIROC[38]と呼ばれるASICチップを搭載したNIMモジュール
(以下、EASIROCモジュール)を使用した。EASIROCモジュールは64チャンネルの動作
電圧供給と信号読み出しを行うことができる。また、2つの温度センサーの動作・ADC読み 出しが可能である。テスト実験ではEthernetケーブルを用いてPCと通信することでBDC の制御とデータ取得を行った[39, 40]。BDCの設計と開発については付録Aに付した。
BDCで得られたビームプロファイルを図5.5に示す。中心から±6 mmの領域を2次元ガ ウス関数でフィットし、ビームサイズσx = 6.4 mm, σy = 5.1 mmを得た。
-15 -10 -5 0 5 10 15
-15 -10 -5 0 5 10
15 hitmap_run30
Entries 42551
Mean x -0.4263
Mean y -1.145
RMS x 4.843
RMS y 4.475
/ ndf
χ2 310.9 / 151
Constant 272.3 ± 2.745 MeanX -0.5446 ± 0.07725 SigmaX 6.432 ± 0.151 MeanY -0.5738 ± 0.04508 SigmaY 5.056 ± 0.0653
0 50 100 150 200 250 hitmap_run30
Entries 42551
Mean x -0.4263
Mean y -1.145
RMS x 4.843
RMS y 4.475
/ ndf
χ2 310.9 / 151
Constant 272.3 ± 2.745 MeanX -0.5446 ± 0.07725 SigmaX 6.432 ± 0.151 MeanY -0.5738 ± 0.04508 SigmaY 5.056 ± 0.0653
y_max:x_max
Horizontal Axis [mm]
Vertical Axis [mm]
図5.5 ビームプロファイルとフィット結果。ビーム下流側からの視点。
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