第 2 章 ではこの光電子放出の原理、電子軌道、そして電子増倍部に ついて記述します。
8.4 冷却試験
60 第8章 光検出器の中性子耐性評価
Pule Height [mV]
-10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Entries
0 50 100 150 200 250
run000190
padc2 Entries 10000 Mean 14.77 RMS 13.89 run000190
Entries
run000190 run000190
Pulse Height [mV]
図 8.5 照 射 前 のMPPCの 波 高 分 布 。信 号 を 出 力 し た ピ ク セ ル 数 毎 に ピ ー ク が 確 認 出 来る。
Pule Height [mV]
-10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Entries
0 5 10 15 20 25 30
run000204
padc2 Entries 10000 Mean 49.94 RMS 24.16 run000204
Entries
Entries
run000204 run000204
Entries
Pulse Height
図8.6 照 射 後 のMPPCの 波 高 分 布 。信 号 ピークが確認出来ず、ノイズが増加している。
8.4.1 セットアップ
図8.7に示すように、MPPCと読み出し回路、LEDを一つの基板に固定したものを用意 し、液体窒素を入れたデュワー瓶に浸すことで冷却した。セットアップを図8.8に示す。デュ ワー瓶は恒温槽内に設置し、さらにアルミホイルで蓋をした。MPPCの信号波形を見ながら 数ピクセル程度の出力が出るようにLEDの光量を調整した上で、V =VBD + 1.4 [V]の動 作電圧を掛けて信号波形の取得を行った。
図8.7 使用した基板。MPPC、読み出し回 路 、LEDを 基 板 に 固 定 し た 状 態 で 液 体 窒 素 に浸した。
図8.8 冷 却 試 験 の セ ッ ト ア ッ プ 。LED と MPPCの距離は45 mmである。
8.4 冷却試験 61
8.4.2 波形の比較
中性子を最大の1.52×1012 neq/cm2分照射したMPPCのサンプルについて、照射前20.0
℃と照射後77 Kでの信号波形と波高分布を図8.9に示す。照射後においても、LED由来の 信号が確認でき、ノイズが大幅に減少していることが分かる。波高分布は応答ピクセル数に 応じたピークがはっきり弁別出来ている。したがって、冷却によって中性子耐性の要求が十 分に満たれることが示された。
Pule Height [mV]
-10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Entries
0 50 100 150 200 250
run000200
padc2 Entries 10000 Mean 16.68 RMS 17.28 run000200
Entries
run000200 run000200
Pule Height [mV]
-10 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90
Entries
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450
run000615
padc2 Entries 34969 Mean 25.96 RMS 17.93 run000615
Entries
run000615 run000615
$
peak
$
peak
1 10 102
Time [ns]
0 200 400 600 800 1000
Volt [mV]
-200 -100 0 100 200 300 400 500
run000615
wf2
Entries 1024000
Mean x 511.5
Mean y 0.9935
RMS x 295.6
RMS y 7.851
run000615
Volt [mV]
run000615 run000615
1 10 102 103
Time [ns]
0 200 400 600 800 1000
Volt [mV]
-200 -100 0 100 200 300 400 500
run000200
wf2 Entries 1.024e+07
Mean x 511.5
Mean y -0.2569
RMS x 295.6
RMS y 6.791
run000200
Volt [mV]
run000200 run000200
@20
77K
Pulse$Height$[mV]
Pulse$Height$[mV]
図8.9 最大の中性子照射量をもつMPPCサンプルについて、照射前後の比較。上段が照 射前20.0℃での測定。下段が照射後77 Kでの測定。左側はLED光入射時の波形、右側 は波高分布。
8.4.3 実機における冷却の可能性
MPPCの冷却により中性子耐性の要求が満たされることを示し、実機における冷却の可能 性を模索した。しかしながら、実機でMPPCを冷却する事は以下の面で困難である。第一 に、光学的接触である。トリガー検出器ではMPPCをアクリルとプラスチックシンチレータ に接触させる必要がある。材質によって熱膨張係数が異なるため、冷却時に光学的接触が悪 くなることが予想される。第二に、冷却機構である。図8.10に示すように、−20℃程度の低 温環境下でノイズが十分に減少しないことを確認したため、冷却させる場合は極低温で動作 させる必要がある。しかし、トリガー検出器はCDCの両端に取り付けるため、冷却機構を 実現する空間がない。また、低温での動作では結露や霜の対策と温度管理が必要である。極 低温まで冷却するメリットと上記のデメリットを比較し、実機ではデメリットが大きいと判 断して、MPPCを光検出器として用いることは困難であると結論付けた。
62 第8章 光検出器の中性子耐性評価
照射量:1.1 1011 neq/cm2
@21.4℃ 未照射
@20.0℃
図8.10 MPPCを冷却したときの波形。左図は1.1×1011 neq/cm2の中性子を照射した MPPCを−21.4℃まで冷却したときの波形、右図は未照射のMPPCを20.0℃で動作さ せたときの波形。各波形の左側には波高のヒストグラムを表示しており、照射したMPPC では応答ピクセル数に応じたピークが確認できない。
63
第 9 章
今後の課題
MPPCを光検出器に用いたデザインでは中性子耐性の要求を満たさないことが判明したた め、代替案としてファインメッシュ型PMTを使用したデザインを提案する。ファインメッ シュ型PMTの全体図を図9.1に示す。電子増倍部にファインメッシュダイノードと呼ばれ る特殊なダイノードを使用しており、1 Tの磁場中で使用することができる。また、半導体 検出器に比べて構造が単純であるため中性子による検出器の性能悪化が起きにくいという利 点がある。
13.3 周囲磁界の影響 241
13.3.2 高磁界用光電子増倍管
今まで述べた様に通常の光電子増倍管では10 mTの磁界中で少なくとも1桁以上感度が低下しま す。しかし高エネルギー物理学の分野では1 T以上の磁場中で動作可能な光電子増倍管が求められ ています。そのために開発されたものとしてファインメッシュダイノード構造の製品があります。
それらにはダイノードの段数が 1 段(トライオード)、2 段(テトロード)のものと、高増倍率特性を