第 2 章 ではこの光電子放出の原理、電子軌道、そして電子増倍部に ついて記述します。
8.3 測定結果
8.3.1 中性子流量に対する暗電流の変化
チラーを用いて25.0℃に制御した暗箱内で全MPPCに一定の電圧VOP を掛けて動作さ せた。中性子を照射しながら、1つのMPPCについて暗電流の中性子照射量依存性を測定し
8.3 測定結果 57
図8.1 中性子照射試験に用いたビームライン。C標的に9 MeVのdビームを照射し、中 性子を生成する。右下部のケーブルを用いてC標的に流れる電流を測定し、dビームの照 射量を測定した。
図8.2 照射したMPPCとそのセットアップをビーム上流から見た写真。窓材に接着成 分が付着しないようにテープで遮光したMPPCを6つ配置した。MPPCの横に温度セ ンサーを取り付け、動作電圧の印加と電流読み取りのための電源ケーブルも左部に固定し ている。MPPCの上には、中性子流量を測定するためのAl, Ni箔を取り付けている。こ れらは基板に取り付けており、その基板は中心を切り取ったアクリル板に固定した。
58 第8章 光検出器の中性子耐性評価
た。総照射量に対する電流値を、図8.3に示す。データの飛びが5カ所確認できるが、これ はビームを止めた際に動作電圧を印加し直したためである。バルク欠損による暗電流値の著 しい増加が見られる。
/cm2
neq
109 1010 1011 1012
MPPC Current [A]
10-6
10-5
10-4
10-3
10-2
図8.3 中性子流量に対する暗電流の変化。横軸は1 MeV中性子相当の中性子照射量。縦 軸はMPPCの暗電流。
8.3.2 照射前後の信号波形比較
中性子の照射による影響を評価するため、照射前後での信号波形の比較を行った。20.0℃ に設定した恒温槽内でMPPCを測定用箱に格納した。平均で数ピクセル分の信号が得られ るようにLEDを調整し、微弱光をMPPCに照射して測定を行った。読み出し回路には11 kΩの抵抗が組み込まれており、照射後のサンプルは暗電流が大きいために電圧降下が無視出 来ない。照射前の動作電圧VOP をMPPCに印加するため、測定時の電流I に対して印加電 圧V は
V =VOP +IR (8.5)
となるように調整した。図8.4に4.60×1010 neq/cm2 の中性子流量を照射したサンプルの 波形、図8.5, 図8.6に550 - 800 nsの領域の波高分布を示す。照射前は650 ns付近にLED の信号波形が確認でき、波高分布ではピクセル数に応じたピークが確認できる。一方、要求 値1012 neq/cm2 に対して1/20以下の中性子流量を照射した後では、LEDの信号が見えな い程にノイズが増加した。この結果より、常温ではMPPCの中性子耐性は要求値を満たさ