• 検索結果がありません。

結果と考察

ドキュメント内 main.dvi (ページ 81-99)

第 8 章 手拍子によるリズムのグループ学習 67

8.3 結果と考察

8.3 結果と考察 73

8.7 実験4「複数のリズムが入り乱れた状態でのリズムキープ」の概念図

8.8 単独被験者が手拍子を行った場合の正しい打点からのズレ

のズレ時間を表している。また、各プロットは各々の被験者を表している。被験者が正し いリズムで手拍子を打てた場合、正しい打点からのズレ時間は0になることになる。図 8.8ではそれぞれの被験者のズレ時間は各々時間経過に伴って変化しており、実験の被験 者は正しくリズムキープができていなかった事が確認された。また、時間経過に伴うズレ 時間の変化は被験者によって異なり、ズレ時間の変化の大きさやズレの方向(早くなるか、

遅くなるか)に統一性が無いことが確認された。また、ズレ時間の変化の傾きは安定して いてなだらかであるように思われる。

8.3 結果と考察 75 また、図8.9に単独被験者が手拍子を行った際のBPMの変移を示した。図8.9の横軸

は経過時間、縦軸は10拍ごとの平均BPMを示している。図8.8のズレ時間の変化の傾 きは一見安定して見えるものの、図8.9ではBPMは安定しておらず、常に波打つ傾向で あることが観察された。これは、実際に手拍子で打っているテンポと、被験者の頭の中に ある理想のテンポに差がある場合に必死に理想のテンポに近づけようとするために起こる 現象であることが推察される。

8.9 単独被験者が手拍子を行った際のBPMの変移

また、図8.10に単独被験者が手拍子を行った際のBPMのヒストグラムを示した。図 8.10の横軸はBPM、縦軸に頻度(打った回数) を示している。図8.10から、BPMの分 布は各々の被験者において平均、分散ともに違っているものの、おおよそ正規分布に近い 形となった。これは、実験の初めから終わりにかけて被験者の頭の中にある理想とするリ ズムに大きな変化がなかったため正規分布に近い形が観察されたものと考えられる。逆 に、実験中終始、被験者の頭の中にある理想のリズムが変化していた場合、BPMの分布 はよりブロードになってゆくことが考えられる。

以上のことから、単独被験者がリズムキープを行う際、多くの被験者はリズムキープ能 力が乏しく、リズム自体はキープできなかったものの、被験者は頭の中に理想のリズムを 持っており、実際に行っている手拍子のズレを修正しようとする結果が観察された。

次にグループでリズムキープを行った際の結果について考察する。図8.11にグループ 被験者が手拍子を行った場合の正しい打点からのズレ示した。図8.11では横軸が経過時 間、縦軸が正しい打点からのズレ時間を表している。

図8.11より、時間経過に伴う正しい打点からのズレ時間は、図8.8で示した単独被験

8.10 単独被験者が手拍子を行った際のBPMのヒストグラム

者各々がズレの傾きや方向性がバラバラであったのと違い、グループ全体で一定のズレが 有ることが確認された。これは、各被験者がほぼ同時間に打拍を行っていることを示して おり、グループとして手拍子を行う場合に他の被験者に合わせようとする同調現象が起こ るためと考えられる。また、グループで手拍子のリズムキープが大きなズレをもっていた 原因として一人一人のズレが積み重なって、より大きなズレを生み出す可能性が考えら れる。

図8.12にグループでの被験者が手拍子を行った際のBPMの変移を示した。図8.12の 横軸は経過時間、縦軸は10 拍ごとの平均BPMを示している。図8.12の結果より、グ ループでの被験者のBPMの時間経過に伴う変化は、ばらつきはあるものの、グループ全 体として同様の傾向があることが観察された。また、図8.12では、単独で手拍子を行っ た際に得られた結果である図8.9のBPM変動の様子と比べた場合、図8.9のBPM変動 は波はあるものの、一定のBPM からのバラツキであるように見られるのに対して、図 8.12ではある程度の傾きを持っているように見られる。これは、被験者一人一人のズレが 積み重なって、より大きなズレを生み出すことが原因となり、このような現象が観察され たのではないかと推測される。また、グループで行った場合は、被験者一人自身がリズム をキープしようとせず、周囲の打つ手拍子に合わせようとするためにズレが変化していっ てしまうことも原因となっているのではないかと考えられる。

また、図8.13にグループで被験者が手拍子を行った際のBPMのヒストグラムを示し た。図8.13の横軸はBPM、縦軸に頻度(打った回数)を示している。図8.13では、それ ぞれの被験者で似たような形のBPM分布が得られた。図8.13において、被験者のBPM

8.3 結果と考察 77

8.11 グループ被験者が手拍子を行った場合の正しい打点からのズレ

の分布は、図8.10に示された単独で手拍子を行った際のBPMのヒストグラムと違い、

二項分布のような形のBPMの分布が観察された。これは、グループのなかで被験者の打 拍がグループ全体に比べ、早すぎたり遅すぎたりした場合に調整を行おうとして現れた分 布であると考えられる。また、多くの被験者で分布が正規分布でなかったことから、打拍 は被験者の理想とするリズムを刻もうとして得られた分布ではなく、他の被験者が刻むリ ズムに追従しようとしていることが伺える。

以上のことから、グループでの手拍子によるリズムキープでは、リズムキープ能力は確 認できず、各々の被験者は他の被験者が刻むリズムに同調しようとする傾向が観察され た。また、その同調現象により、単独で刻むリズムよりもグループで刻むリズムはより大 きなズレを生む可能性が示唆された。

8.3.2 グループ中での教師の有無によるリズムキープの違い

グループでの手拍子によるリズムキープの結果より、グループでもリズムキープが困難 であることが確認された。そこで本研究では、無音メトロノームの画像より得られる打拍 タイミングを教師役を介して生徒役の被験者に伝えた場合に、正しくリズムキープが行え るか否かを確認した。図8.14に教師有りグループ被験者が手拍子を行った場合の正しい 打点からのズレを示した。図8.14では横軸が経過時間、縦軸が正しい打点からのズレ時 間を表している。図8.14での各被験者の正しい打点からのズレ時間は、図8.11の教師無 しグループでのズレ時間と比較した際、実験の終始ほぼ0付近であり、正しい打拍ができ ていることが観察された。これは、教師役が入ることにより、被験者が教師役の打拍に合

8.12 グループでの被験者が手拍子を行った際のBPMの変移

わせて打とうとしたため、教師なしグループでは観察されたズレが見られなかったと考え られる。

また、図8.15に縦軸を拡大した教師有りグループ被験者が手拍子を行った場合の正し い打点からのズレを示した。図8.14と図8.15は同じグラフであるが、拡大すると打点の ズレが0付近で安定しているように見えても、細かいズレの波があることが確認できる。

この細かいズレの波は不規則であるものの、教師役含むグループ全体がこの波に沿って手 拍子を行っていることが観察される。図8.15の細かいズレの波の原因を考ると、教師役 が他の被験者の影響を受けずメトロノームのみに注目し手拍子を行っていると仮定した場 合、細かいズレの波の原因は教師役が原因であることを導くことができる。つまり、教師 無しグループではリズムは他の複数の被験者のリズムに大きく影響を受けていたのに対 し、教師有りグループでは教師役ひとりにのみグループ全体のリズムが影響を受けていた ことが示唆される。

以上のことから、教師役はグループ内で大きな影響を持ち、教師役が入ることによって のみ、グループは正しいリズムを刻むことができることが確認された。

8.3 結果と考察 79

8.13 グループで被験者が手拍子を行った際のBPMのヒストグラム

8.3.3 ブラインド状態での教師有りリズムキープ

上記の結果により、グループ内での教師役がリズムに強い影響を与え、教師役を入れる ことによりグループは正しいリズムを刻むことが明らかになった。しかし、教師役の何が リズムに影響を与えるのかは未解明である。手拍子によるリズムキープにおいて、生徒役 が教師から得られる情報は教師が刻む手拍子の音と、教師自体が行う手拍子の視覚的情報 である。もし聴覚情報よりも視覚情報が生徒役にとってリズムキープにおいて重要な情報 である場合、ブラインド状態にすることでリズムキープに変化が観察されることになる。

本実験では、生徒役の被験者に目隠し(アイマスク)を装着してもらい、ブラインド状態 での教師有りリズムキープを行った。

図8.16に教師有りブラインドグループ被験者が手拍子を行った場合の正しい打点から のズレを示した。図8.16では横軸が経過時間、縦軸が正しい打点からのズレ時間を表し ている。

図8.16の結果より、視覚情報有りのグループによるリズムキープの結果と異なり、生 徒役4名中3名が正しいリズムを維持することができなかったことが確認された。また、

ズレが生じた3名のズレの挙動は似た挙動を示していることから、今回の実験では、グ ループ内に2つのリズムグループが発生したものと推察される。

2つのグループが発生したことは相関図を見れば観察できる。図8.17に教師役(被験 者A)と被験者Dの正しい打点からのズレの相関を示した。図8.17では、横軸に教師役

ドキュメント内 main.dvi (ページ 81-99)