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実験手法

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第 8 章 手拍子によるリズムのグループ学習 67

8.2 実験手法

単独とグループでのリズム学習にどのような違いがあるかを明確化すること

教師のリズムはどのようにして学習者に伝わっているかを検証すること

8.2 実験手法

8.2.1 実験タスクの設定

教師が学習者に対してリズムをどのように教えてゆくかを調べるために、本研究では単 純なタスクである「手拍子によるリズムキープ」を採用した。手拍子をタスクにすること により、特殊な楽器を多くそろえることが不要であり、リズム習得以前のどのように叩く かを学習者に教える必要も無いため、容易に実験することが可能である。また、リズム キープをタスクとして採用した理由として、一般的に習熟している被験者が少なく、その 習熟には多くの時間が必要とされていることから、未習熟時の被験者の学習過程を容易に 観察できることが挙げられる。本研究では男子大学院生4〜6名を1回の実験の被験者と して、手拍子を用いたグループによるリズム学習を行った。

8.2.2 加速度センサーによる手拍子検出

本研究では、手拍子によるリズム学習を観察する手法として無線加速度センサーを用い た。手拍子によるリズム分析において、数ミリ秒単位の打点の検出や、数分単位のリズム の変化を検出することはビデオ観察では難しく、グループでの実験を想定しているため音 響解析による観察は有効ではないと考えられるが、無線加速度センサーを用いることによ り、数ミリ秒から数分にわたるリズムの流れが観察可能となる。本研究では3軸無線加速 度センサー「WAA-001(ATR-Promotion製)(図8.2)」を用いた。

8.2 3軸無線加速度センサー

加速度センサーは図8.3 のように被験者の右手の甲の部分にZ軸が手のひらの向きに なるように貼り付けた。実験での加速度センサーのサンプリングレートは30ms(5ms×6 の平均)とした。リズムの安定性を知るための指標の一つとして、自己相関を用いた解析 法がある。しかし、本研究では予備実験の結果より、手拍子をタスクとした加速度の値で

は、自己相関はどの被験者でも高くなってしまい、評価が難しいという結果を得た。そこ で、本研究では、打拍タイミングをとることにより、評価を行った。

8.3 加速度センサー取り付け位置

被験者が手拍子を行った場合、取り付けられたセンサーによってFig. A-4のような加 速度波形が検出される。図8.4は手拍子により得られるZ軸の加速度波形を表し、横軸に 時間、縦軸に検出されたZ軸の加速度をプロットにより表している。この波形より、被 験者が手拍子を行ったタイミングを検出することが可能である。本研究では打拍タイミン グを加速度波形上で以下の検出条件が揃っていることとして、手拍子タイミングを検出 した。

1. Z軸加速度が極大値であること

2. Z軸加速度が上閾値を上回っていること

3. 一度手拍子が検出された後、条件1と2を満たす前の時間にZ軸加速度が下閾値 を下回っていること

上閾値と下閾値は図8.4に点線で示した。実験結果を解析する際、被験者により手拍子 の行い方に若干の差があるため、手拍子タイミングを正しく検出するためには各閾値を 各々の被験者の加速度波形に合わせて設定する必要がある。本研究ではおおよそ上閾値が 300 – 600、下閾値が-100 – -400 程度になった。

8.2.3 実験条件の設定

本研究では一定のテンポを手拍子により維持してゆく「リズムキープ」を実験のタスク とした。リズムキープの際、実験には電子メトロノーム(KORG, MA-30)を用いた。用 いたメトロノームを図8.5に示した。用いたメトロノームはテンポを電子音で刻むことが

8.2 実験手法 71

8.4 手拍子により得られる加速度波形

できる他、液晶部分に表示されるアニメーションにより、テンポを無音のまま画像として 伝えることもできる。

8.5 実験で用いたメトロノーム

実験では単独又はグループである被験者に対し20回メトロノームを鳴らし、それに準 じて手拍子を行ってもらう。メトロノームを20回鳴らした後、メトロノームの音は消え ることになるが、被験者はメトロノームの音が消えた後もそのテンポを維持したままリズ

ムキープを行い、2分間手拍子を行った。その際に得られた加速度データにより、手拍子 の1打1打にかかった時間から、リズムキープのBPMの変化、正しく打つべき打点から のズレ時間を検出した。

本実験の予備実験の結果より、一般的な人間では100BPM程度が最もリズムを維持し

やすく、150BPM程度で大きなリズムキープの乱れが観察されたため、本実験ではリズ

ムキープにおける設定BPMを150BPM(0.4秒に1打)とした。

本実験では教師役のリズムがどのように生徒役に伝わるかを確かめるために、臨時に教 師役を設定した。図8.6に教師役を入れた場合の教師リズムの伝え方の概念を示した。メ トロノームは実験開始後の20回のテンポを刻んだ後無音となるが、教師役のみ液晶部分 からメトロノームのテンポを目視にて確認できる。教師役がメトロノームより得られた打 拍タイミング画像より手拍子を行い、生徒役の被験者は教師の手拍子を参考に手拍子を打 つこととなる。

8.6 本研究での教師役の概念図

本実験では、教師役がグループでのリズムキープの中でどのようにリズムを教えてゆく かを観察するために、5つの実験を設定した。

実験1:単独とグループでのリズムキープの違い 単独でのリズムキープ実験により各々 の被験者のリズムキープ能力を確認した。また、グループでリズムキープの実験を 行うことにより、グループとしてのリズムキープ能力の確認、単独とグループでの リズムの形成の差異を観察した。

実験2:グループ中での教師の有無によるリズムキープの違い グループ中に上記で説明 をした教師を入れることにより、グループのリズムキープがどのように変化するか を観察した。

実験3:ブラインド状態での教師有りリズムキープ 実験2により、グループ内での教師役 がリズムに与える影響が明らかにされるが、教師役の何がリズムに影響を与えるの かは未解明である。生徒役が教師から得られる情報は教師が刻む手拍子の音と、教 師自体が行う手拍子の視覚的情報である。もし聴覚情報よりも視覚情報が生徒役に とってリズムキープにおいて重要な情報である場合、ブラインド状態にすることで

8.3 結果と考察 73

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