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まとめ

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第 9 章 サンバ演奏技能の習得支援システムの開発 93

13.5 まとめ

していたが、その頃の私はその含意を読みとれなかった。我々が共同化できるということ の根拠はどこにあるのか。そのことを考えていくと、「無の場所」という概念につき当た る。互いに意見を異にするものが無の場所に立ち返ることによって通じ合う。そういうこ とは確かにあるように思う。そして、このような姿勢は優れて日本的であり、西欧には見 られないものである*15

13.4.3 生への信頼

次々と不純物を削ぎ落としていく一方で、我々はどこかで新しいものをまた獲得するだ ろうという安心を得ている。捨てることによって新しいものが得られるという自信があ る。そのような自信の根拠はどこにあるのだろうか。我々はどこかで自然を信じ、その一 部である体がすることも信じている。

理性が対処をあきらめてしまったような状況でも、身体は働いていて我々を支えてくれ る感覚がある。身体のコントロールを失うことを、合理的精神は「狂い」として恐れるが、

我々はそれも悪くないと思っている節がある。狂うことは生の横溢であり、生の根源(無) に触れることである。

解釈に誤りがなく、演奏上の失敗もないが、感動を与えてくれない演奏がある。感動と は身体的なものであり、皮膚を越えて体から体へと直接伝わるものだ。理性で音楽を捉え ようとしている限り、感動を与えることはできない。身体を理性から解放しなければなら ない。そのような一種の自己放下には、生への信頼が欠かせない*16

(話は脱線するが)認知症高齢者は、我々に生への信頼を呼び起こしてくれる存在ではな いだろうか。認知症高齢者は「出来ること」を次々と奪い取られ、容赦なく死に向かって 急き立てられていようとも穏やかである。それを見ていると、生というのは最期まで信頼 に足るものなのではないかという気がしてくるのだ。

13.5 まとめ

本稿では「身体」を切り口として日本的な知識創造のスタイルを論じた。組織的知識創 造は文化の影響を受ける。イギリスとドイツ、日本では異なった文化があり、そのため知 識創造が目指す方向性(価値観)も、依って立つ基盤も異なる。

文化的差異を抽象論で語るのは危険である。本稿では身体技法という具体的なものを素

(ざんげ)の念となり、心は重荷を卸(おろ)した如く、自ら救い、また死者に詫びることができる。(「我 が子の死」より引用)

*15欧州で私が直面したのは決して自分の意見を曲げない頑固な人たちであった。弁証法が対立を通してのみ 成立するのは強固な個人主義に起因する。ヘーゲルの弁証法を積み上げ型とするなら、日本的弁証法は引 き算で成立する。

*16西田幾多郎の「行為的直観」は同じようなことを言っているのではないかという気がするのだが、不勉強 のため確かなところはわからない。

材として日本的なものを描写しようとした。ここで論じたことはやや込み入っているが、

いくつかの前提を受け入れるなら理解はさほど困難ではないだろう。それらをまとめてみ ると次のようになる:

心と体は分けられない

体は信ずるに足るものだ

体が伝えてくるものを感じるには「する」ことをやめなければならない いかがであろうか。これらの考え方は西欧の基本姿勢と真逆である:

心と体は別物だ

理性こそが我々の拠り所である

体は思い通りに制御しなければならない

一方は人々を原点へと導いて融和させ、他方は積み上げと対決に導く。

どちらが正しいというものではないが、身体知という切り口が我々自身の知識創造のス タイルを深めていく上でいかに重要な概念であるかを伝えられたのではないか。

本稿は日本と他の欧米諸国との文化的差異を強調するものではない。しかし差異は差異 として存在しており、日本的なものから目を背けたり、侮蔑するのは間違っている。自分 たちが長い年月をかけて培ってきた特性を批判的に再検討することで、異質な他者との相 互理解が可能となると信じる。(了)

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謝辞

本研究を遂行するにあたり、多くの方々にご協力いただいた。ここに名前を挙げて謝意 を表したい。

サンバの実験環境構築では田中良一氏(ビブラソン主宰)にご助力、ご助言いただいた。

小松商業高校にて実施したサンバレッスンでは安野薫氏にインストラクターを務めていた だいた。小松商業高校ブラスバンド部の皆さんには一年以上、ほぼ毎週ダンスのレッスン を受けていただいたほか、データ収集に協力いただいた。ブラスバンド部顧問の室先生に はお忙しい中、いつもレッスンと実験におつき合いいただいた。音楽家の加々美淳氏には サンバについて専門家の立場から貴重なアドバイスをいただいた。Love Shinyaの新谷さ んにはダンスを教えていただいた。サンバの実験では北村孝一氏とエジに被験者として協 力していただき、塩野恵理子氏にはポルトガル語と日本語の通訳をしていただいた。北陸 をつなぐサンバチーム「ウニアン・ドス・アトラベッサドーリス」のメンバーには練習の 合間に計測機器を身につけていただいた。

サンバ研究では多くの学生さんに助けていただいた。遠藤君、滝沢君、武井君、近森君 ほかサッカー部の人たちには被験者として面倒な実験におつき合いいただいた。岩月さん はサンバ練習の前にストレッチを指導してくれた。松村耕平君、河上聖人君、井口淳平君、

石川航平君らには研究を分担していただいた。後藤君には予備実験を手伝って頂いた。

菊練りの研究では、石川県立九谷焼技術研修所の皆様および関係者の方々に被験者とし てご協力いただいた。教官である藤原元先生には被験者としてばかりでなく、菊練りに関 してアドバイスいただいた。本学の佐野孝太郎さんには九谷焼技術研修所との仲介役をお 願いした。実験では、本学学生であった飯野さん、高木さん、山田さんにお手伝いいただ いた。菊練りの実験を始めた元学生の阿部真美子氏には時々ご助言いただいた。

武部剛氏(NHK)にはサンバと菊練りの研究を取材し、番組にまとめていただいた。番

組は中部地区で放映され、我々の研究が世に知られるきっかけとなった。

ピッチングの研究は、青山賢作君、市川大祐君、大坪祐樹君、北喬寿君、濱本昇吾君が協 力して進めてくれた。けん玉の研究は、辻路也君、中村和貴君、吉田理恵子さん、杉浦誉 規君、呉佳君、周亮君、Nguyen Thu Huong君、小林武君が協力し合って進めてくれた。

河上君の実験では研究室の人を始め、多くの方々が協力してくれた。以下に名前を挙げ る(敬称略):松平好人、菱田童之、片桐秀樹、上陽介、荒木翔太郎、大川拓、島森正裕、

周亮、山崎竜二、水澤和正、東松裕道、成田忠広、長船泰治、大内宏之、杉山一義、増田

晃弘、舟本直、角野清久、青山賢作の各氏。

竹馬の研究は小鮒幸洋君が進めてくれた。また舟本直君には被験者としてご協力いただ いた。

肉切りの研究は能登康彰君が担当してくれた。実験では東京ストア新庄店精肉部門の皆 さんにご協力いただいた。特に北村主任と染矢さん、橋爪さんにはお世話になった。デー タ収集の際には次の方々にお手伝い頂いた(敬称略): 東松裕道、小鮒幸洋、小原卓也、上 陽介、河本新の各氏。

三味線研究では高木和枝師匠に稽古をつけていただいた。和の動作については小田邦彦 先生にアドバイスいただいた。

歌声の研究は豊田喜代美さんに進めていただいた。実験では(株)レイザックの町島 祐一氏にご協力いただいた。また研究の進め方について、米山文明先生にご助言いただ いた。

知識科学教育研究センターにはモーションキャプチャ装置を使わせていただいたほか、

実験場所を提供していただいた。共通事務室の境谷涼子氏には事務を担当していただい た。本学広報係の方々にはマスコミからの問い合わせに答えて頂いたり取材や撮影時に立 ち会っていただくなど、ご支援いただいた。

そのほかにも多くの方々から様々なご支援をいただいて本研究は遂行できた。それらの 方々と上に名前を挙げた方々のご助力なしには本研究は遂行できなかった。我々の研究に ご協力いただいたすべての方々に感謝します。

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参考文献

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