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まとめ

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第 9 章 サンバ演奏技能の習得支援システムの開発 93

11.6 まとめ

フットボールの投球からフィードバックされたのではないかと考える。アメリカンフット ボールのボールの材質は野球の材質よりも重く、ボールのサイズも野球のボールサイズよ り大きい。そのため野球の投球で可能である「手投げ」投球が不可能に近く、アメリカン フットボールの投球では、脊柱軸から遠いポジションでの投球は行うことができない。慣 性モーメントの回転が大きいと回転速度は減少するため、投球が困難なのである。

その結果、アメリカンフットボールの投球は慣性モーメントを小さくして効率を良くす る必要がある。慣性モーメントを小さくすることによって腕や腰は回転軸である脊柱に近 づき、脊柱軸のボディスピン速度が上昇する。すなわち、下部(下半身)→中部(腰)・上 部(上半身)へと効率良く力を伝達することにより、全身を使って投球することが可能に なる。被験者に筋力トレーニングをしていないのにも関わらず、腰の感覚を掴んだ時(実 験開始から1ヶ月後)には、実験初日に比べて球速が10km/時も早くなった。

野球初心者は投球を行う際、上腕を使って投げようとする。そのため腕に力を意識して しまい、肘を押し出し、肘が下がる傾向にある。こうなると腰を回転させる意識がなく なってしまう。だからこそ、腰を最大限に回転させることで「手投げ」を防ぎ、肘が下が る状態を回避させることが可能になる。

以上のことを被験者3人に行わせたのだが、結果として腰の回転を使って投球ができた のは軟式野球経験者のみであり、野球初心者2名は腰を使った投球を身につけられなかっ た。これは投球理論に関する知識の有無が影響したと思われる。すなわち、効果をもたら すには投球理論に関する知識が必要であることが明らかとなった。

投球知識という形式知を身につけた上で、身体のどこの箇所に意識をすればよいのかな ど自分自身にしか理解できない暗黙知を習得し実践しなければならないのだ。アメリカン フットボールの投球を野球にフィードバックさせるためには「アメリカンフットボールの 投球は野球の投球のどこに活かされているのか」ということを認知しながら反復練習を行 う必要がある。

11.6 まとめ

11.6.1 投球練習としての有用性

今回の実験では、軟式野球経験者だけが腰の回転感覚を掴むことができ、野球初心者2 名は掴むことはできなかった。これはアメリカンフットボールの投球練習は野球の知識を 持つ人に限り効果的であるということである。他分野のスポーツで得られた経験を生かし て技術を向上させるためには、経験から習得した部分の感覚を意識しながら練習をするの が絶対不可欠である。

11.6.2 今後の展開

実験期間が1ヶ月と短く、少数の被験者3名で実験したが、腰の動作(回転)に関して 練習時の意識により「腰の感覚を掴む」ことができ、フィードバック効果があった。今後 はモーションキャプチャ装置を使って身体の動きを計測し、データを収集してより客観的 に練習法の効果を検証したい。また今回、上腕の動作には変化が見られなかったので、野 球経験者を増やして継続的に実験を進め、上腕の変化が見られるかどうか、効果があるか どうか調べたい。

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第 12

けん玉を科学する

出典: 辻 路也,中村 和貴,吉田 理恵子,杉浦 誉規,呉 佳,周 亮, Nguyen Thu Huong,小 林 武,認知科学概論(2006年) グループ研究報告書.

[概要:] ある技を習得する過程で、SECIモデルを利用した場合と利用しない場合での 上達の度合いについて実験を行い比較検討した。一日30分の実験を5日間行った結果、

上達の早さの比較ではSECIモデルを使用したほうが遅いという結果が得られた。技の成 功率を比較した結果からは、コツを必要とする難易度の高い技では、SECIモデルを用い た方が高い成功率を収める結果が得られた。これらの結果から、コツを必要とする技の習 得にはSECIモデルを用いた場合、時間がかかるが、技の精度が高まるということがわ かった。

12.1 はじめに

企業内で、様々なバックグラウンドや能力を持った人の集団で、あるひとつの仕事を やってもらうことを考えたときに、できるだけ早く仕事を覚えてもらうためにはどのよう な方法で仕事を教えればいいのだろうか。

マクドナルドは仕事の手順を詳細にマニュアルにまとめて、仕事未経験のアルバイト店 員の教育に役立てている。ポテトの揚げ時間なら、“揚げ時間は何分”というように文書 化されており、初心者でもその時間をまもれば、売り物になるフライドポテトが作れるの である。しかし、マニュアル化が困難な場合もある。たとえば新聞にチラシを折り込むア ルバイトのテクニックがそれである。このような仕事では、織り込むという内容自体は簡 単であるが、それをできるだけ早くやることで利益を上げている。“早くやる”という課 題に対して、「技」が必要となるのである。

「技」は文書化が困難である。なぜならば「技」は身体が覚えている知識であり、頭で 理解している知識ではないからである。しかし、文書化が不可能なわけではない。たとえ ば、まず、熟練者がチラシを織り込む際に手を動かすタイミングや、手の動きをカメラで 撮影する。そして、その動作を分析して、手の間接の角度やチラシを取って新聞に折り込

むまでの時間などを計測する。こうして得られた測定データから、“熟練者は間接の角度 を何度から何度まで動かし、新聞を取ってから何秒以内に織り込んでいる”といった事が わかるだろう。しかしながら、このような物理的データを使って解説された技の内容を初 心者に伝えて、その技を再現出来るかというとそうではない。意識して”何度から何度ま で間接を動かす” という正確な説明はかえって分かりづらい。したがって、このように無 理やり「技」を文章化したものはマニュアルではないのである。

では、マニュアル化が困難な仕事ではどのようにして教育しているのだろうか。折り込 み広告の例では、熟達者がコツを初心者に言葉で伝えて初心者は熟達者の動きを参考にし ながらひたすら練習するという方法が一般的である。しかし、技の習得には当然、個人差 があり、飲み込みの早い人と、そうではない人がいる。このような個人差の影響を抑え て、集団として早く上達するためには、技の習得過程を効率化することが必要である。

そこで、技の習得過程にSECIモデルを取り入れてはどうかと考えた。SECIモデルを 技の習得過程に取り入れた研究は行われていない。本実験ではSECIモデルを利用するこ とで、技の習得が効率化されるのではないかと過程し、その過程を実験により観察した。

技の習得はけん玉の技を習得することにした。

けん玉は上達の度合いを、級位・段位のステップアップで評価できるため実験での上達 過程の評価が行いやすい。また、初めて経験する技術の習得過程について研究するという のが本研究のテーマであるが、けん玉は被験者のほとんどが未経験者であることからこの テーマにふさわしい。このような理由からけん玉を技の習得の題材に選び、実験をおこ なった。

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