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第 章

ドキュメント内 000Dthesis.dvi (ページ 51-69)

眼球運動を利用した情報提示:サッカード残像の時間特性

本章の目的と位置づけ

サッカード時に生じる残像(以下,サッカード残像と記す)の知覚特性,特に空間特性(知覚され る残像の位置,形態)と時間特性(残像が知覚される時間の長さ)は眼球運動を利用した視覚情報提 示ディスプレイを設計する上で重要なパラメータである.章において,まず,残像の知覚位置・形 態に関して述べた.本章においては残像の時間特性,つまりは残像がどの程度の時間,知覚上保持さ れるのかを調べる.

これまで,固視時の残像(以下,固視残像と記す)の時間的特性に関する研究は多く存在し,光点 の移動距離と等しい大きさの像が数 "程度の持続時間をもって知覚されることが知られてい る010 10 1010 1.そして,その知覚特性は図 67のような 次元の光点列を物理的に高速移 動させ,次元情報を提示するデバイス0 1等に利用されている.一方,図 'のようなサッカード 残像に関して,残像がどの程度の時間保持されているかはこれまで調べられていない.一般に,サッ カード時においては,速度知覚,位置変化検出域等様々な知覚特性が抑制されているため0 10 10 1

,固視時とサッカード時ではその持続時間が同程度の長さであるとは限らない.そこで,本章では サッカード残像の持続時間を計測し固視残像と比較する実験(実験 ),及びその保持のメカニズ ムを調べる実験(実験 )を行った.

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3 残像の時空間特性の比較67固視残像を利用したもの 4.4#$ #5#6'7サッカード 残像を利用したもの.$$ '+<0 1

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3 67固視残像の視覚的持続時間の計測手法 6'7サッカード残像の視覚的持続時間の計測手法

実験 では,固視残像の持続時間計測手法に倣った手法によってサッカード残像の持続時間 を計測し,固視残像の持続時間と比較した.実験 の結果,サッカード残像の持続時間は固 視残像と同等の約 "であった.これは,サッカード残像が生じた後,約 "の範囲に提 示された光点はサッカード残像と時間的に統合され,ひとつの像として知覚されることを意味 している.

実験 では,サッカード残像を含んだ時間的統合が網膜像に対する空間的処理(網膜像の半 分の大きさに知覚される)に先立って行われるのか,それとも,空間的処理が行われた後に時 間的統合が行われるのか,サッカード残像の時間的,空間的処理の順序について調べた.

背景

本章では,これまで行われてきた固視残像の視覚的持続時間の計測方法,及び本章のつの実験で 使用したサッカード残像の視覚的持続時間の計測手法について述べる.

固視時の残像の持続時間計測手法

視覚刺激提示終了後も,ある一定期間,刺激の網膜像の情報を完全に近い形で保持するメカニズ ムが視覚システムには存在するということは古くから知られている.このメカニズムは視覚的持続

8 #$),アイコニックメモリ(4$!#$ "!<),8484# !"!#.!) 等と呼ばれている.刺激に対する応答がある一定期間続くということは,網膜刺激に対するインパル ス応答からも予測できることである.例えば, "のフラッシュ光に対する応答でも"程度は続 くことになる.一見,残像と呼ばれる現象に類似しているが,保持時間が残像は数秒から数十秒であ るのと比べて極めて短いことが特徴である.そして,残像は網膜上の現象で眼球を手で押すとそれに 合わせて移動するが,視覚的持続は知覚上の現象であると考えられている

このような視覚的持続時間の計測は.+#の部分報告法0 1と呼ばれる手法にはじまる.部分 報告法では,列の文字マトリックスを短時間提示して,このとき,例えば, 行目の文字だけ 読むように指示する.その文字の読み取り正答率を測定する.提示前にどこを読むかの指示が与えら れれば,当然,正答率は向上する.さらに,提示後に指示を与えても正答率が向上することを発見し た.このことは視覚システムは情報を短時間見えたままで保持するメカニズムが存在することを示唆 している.その後,異なる実験によってもこのような視覚的持続機構が存在することが確認された.

これまで行われてきた代表的な計測手法として,図のような手法が挙げられる010 1.この手 法の原理は,つが同時に見えて初めて意味をなす画像(図画像 ,)を一定時間Gあけて提 示したとき,Gが視覚的持続時間より短ければ,枚の像が重なって 枚の画像として知覚可能で あると考え,枚の像が 枚の像として知覚可能な最大時間Gを計測するものである.実験では,

枚の画像の提示時間間隔を変えながら文字の読み取り正答率を測定し, "より短いところでは視 覚的持続の影響があり,視覚像の保持時間は "程度であることを示した.

視覚的持続の機構は,大脳レベルでその処理に必要な時間を確保するメカニズムとも考えられるし,

網膜での時間特性とも考えられる.多くの研究者は,持続時間が空間周波数に依存する0 10 101と いうことから,視覚的持続が網膜レベルの現象ではなく,より高次の機構に関係すると考えている.

サッカード残像の持続時間計測手法

一般に,サッカード時においては,速度知覚,位置変化検出域等様々な知覚特性が抑制されている.

さらに近年,サッカード時の時間知覚は固視時と異なることも報告されており0 1,サッカード時に 生じる知覚像の視覚的持続時間は固視時と同程度であるとは限らない.そこで,本章ではサッカー ド中に生じる残像(サッカード残像)の視覚的持続時間を計測し,そのメカニズムについて論じる.

サッカード残像の視覚的持続時間の計測手法を図の固視残像の計測手法に倣って考えると,画 像 をサッカード中に,画像をサッカード後に提示したとき,枚の画像がひとつの画像として知 覚される最大の時間間隔Gがサッカード残像の視覚的持続時間と考えることができる.サッカード を利用したディスプレイにおいては, 次元の光点列を高速点滅させることで次元情報を提示して いるが,本実験においては,サッカード中に一点の光点を高速点滅させてサッカード残像を生じさせ 図'の画像 とし,ある一定時間G後に画像として別の光点を提示して視覚的持続時間を計測 するものとした.

実験 :サッカード時と固視時の残像の持続時間の比較

実験 においては,サッカード残像と固視残像の視覚的持続時間をつの光点刺激の提示時間間 隔Gを変化させることによって計測する.Gをそれぞれ種類変化させて,画像 と画像が同時 に見える割合を計測した.また,視覚的持続時間は提示される刺激の明るさによって異なることも考 えられ,画像 と画像の明るさをそれぞれ種類ずつ変化させた.以下,サッカード残像と固視残 像の視覚的持続時間計測の実験装置,実験手順について述べる.

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実験 :実験装置の概観67 タイムチャート6'7

サッカード残像計測の実験装置と手順 被験者

被験者は正常な視力を持った#(な男性被験者名(A. *4/@)である.

実験装置

注視点(),視標(/),サッカード中に点滅する光点(. ),サッカード後に点滅する光点

.),を図のように配置する./は視野角 離れており,両者ともに青色;), 輝度$&" ,大きさ である../の真中に配置され,黄緑色もしくは赤色の いずれかの色で高速点灯可能である... から右に,下に 移動した場所に位置し,

黄緑色に点灯する...の大きさは/と同じ である.. は被験者の左眼球の正面 に位置し,その距離は $"である./.の中心の高さは被験者の眼球の高さと同じである.

被験者は右目を眼帯で覆い,あご台によって顔の位置を固定した.実験は暗室6 B7で行われた.

実験手順

実験のタイムチャートを図'に示す.初めにが 〜$ランダムに点灯し,被験者はに 視線を向ける.次にが消灯し"後に/"点灯し,被験者は/に向かって右方向水平 サッカードを行なう."のギャップは特に潜時が安定しているエクスプレスサッカード0 1 0 1 を誘発し,安定した実験条件を得るためである./が点灯してから "後に.*5"

点灯, "消灯)で"点滅する.サッカード中に光点. が高速に点滅することで,被験者は 光点列を知覚する.そして,. の点滅終了G後に,."点灯する.被験者のタスクは,サッ カード中の. の高速点滅によって生じる光点列と,. の点滅終了G後に一瞬だけ点灯する.

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