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研究1V 集団描画活動による学級適応感別児童の分析

4年    6年    4年    6年    男子         女子

第4節  研究1V 集団描画活動による学級適応感別児童の分析

 1 目的

  すでに,集団描画活動が児童に及ぼす学級適応感について,

 グループ単位での検討を研究1で行った。そこで,研究rvでは,

 学級適応感の上昇・下降した児童の特徴を活動の様子やふり返   り表の自由記述をもとに検討する。

2 方法

 1)学年ごとに,集団描画活動前後の学級適応感の差から上昇群と   下降群に分ける。その中で,それぞれ著しい変化のあった児童   を各学年5人ずつ抽出し,学級適応感上昇群・下降群児童とす   る。これらの児童達の活動の様子やふり返り表の自由記述から,

 晶群の児童の特徴をまとめ,検討する。なお,対象児童115人   中,学級適応感が上昇した児童は,59人(51.3%)平均上昇得点   2.46点,下降した児童は44人(38.3%)平均下降得点2.91点,変  化しなかった児童は12人(10.4%)であった。

 2)上記にあげられた学級適応感上昇群・下降群児童の集団描画活  動前後の各分析データの差の平均値より,晶群の児童の特徴を  検討した。

3 結果・考察

1)学級適応感上昇群・下降群児童の特徴  (1)学級適応感上昇群児童の事例分析と考察

  学級適応感上昇群児童の事例の概要をTabIe3−5に示し,考察

   をする。

Table3−5 学級適応感上昇群児童の事例の概要

対象児童

@ ・上昇得点 分析データ 性格・活動の様子等

A男(4年) PDM人数 3.0→2.0 人がよく,嫌とはいえない性格のA男 7点上昇 PDM距離 7.5→5.0 は,活動中,笑顔が絶えなかった。同

(23→30) ISSS  O.26→0.18 グループの仲間が泣いていたら,慰め るなど仲間を思いやる行動が見られ た。普段はおとなしく,人前での発表 を進んでしない。しかし,活動中は,

仲間と全身を使ってダイナミックに 絵を描く姿や,床に寝そべって描く姿 が見られ,物語の発表の時も楽しそう にしていた。

B男(4年) PDM人数 7.0→7.0 体を動かすことを好むB男は,グルー 5点上昇 PDM距離14.5→16.0 プの仲間と冗談を言い合いながら,活

(25→30) ISSS   O.4→0.4 動していた。自分のアイディアを仲間 に伝え,仲間がそれを絵に表現し,そ れを見て喜んでいる姿が印象的だっ た。また,他グループの作品を見たり,

そこの仲間と話をしたりして,行動範 囲が広かった。

C男(4年) PDM人数 7.0→6.0 常に笑顔で活動しているC男は,仲間 5点上昇 PDM距離18.5→17.0 のアイディアをよく聞いていた。普段

(27→32) ISSS  O.55→0.45 は,おっとりしていて,あまり目立つ 行動は好まない。また,人前に立つと 緊張しやすい。活動中は,他のグルー プの作品を見ては,面白いアイディア など同グループの仲間に伝えている 様子が見られた。

D子(4年) PDM人数 6.0→5.0 D子は,活動時に同グループの仲間と 4点上昇 PDM距離21.5→12.5 打ち解けていない様子であった。しか

(21→25) ISSS   O.1→0.08 し,仲間の動きを見てD子なりに活動 に参加していた。その姿は,仲良くや ろうと頑張っているようにも見えた。

アンケートには「無視されることが あったけれど楽しかった」と記されて

いた。

対象児童

@ ・上昇得点 分析データ 性格・活動の様子等

E子(4年) PDM人数 7.0→6.0 恥ずかしがり屋のE子は,仲間と寄 3点上昇 PDM距離 14.0→7.5 り添いながら,常に絵を描いていた。

(22→25) ISSS     O.54→0.45 活動中に他のグループの仲間にきつ い一言を言われたのが原因で,泣く 場面も見られた。しかし,周囲の仲 間に慰められ,再び,笑いながら活 覚していた。好んで絵を描いている 様子がうかがわれた。

F男(6年) PDM人数 7.0→7.0 F男は,いつも周囲の仲間を笑わせ 9点上昇 PDM距離 9.5→4.0 ることを好む。活動中も他のグルー

(18→27) ISSS  O.56→0.56 プに行っては,絵について楽しいこ とを言って仲間を笑わせる姿が見受 けられた。自ら面白いアイディアを 出しては笑っていたが,調子に乗り すぎる場面も見られた。絵には,漢 字の当て字を書き,楽しんでいた。

G男(6年) PDM人数 6.0→6.0 G男は,体調が悪いためか,活動中 5点上昇 PDM距離33.0→22.5 の会話はほとんどなかった。学級で

(13→1$) ISSS  O.18→0.18 は,常に1人でいることが多い。ほ

とんど絵も描く姿を見受けられな かった。しかし,大変真面目な性格 で几帳面であるので,常に仲間のほ

うに体を向けていた。

H子(6年) PDM人数 4。0→4.0 おとなしい性格だが,芯が強いH子 4点上昇 PDM距離 2.0→2.0 は,グループ内の仲間が描く絵を見

(22→26) ISSS  O.38→0.54 ては微笑んでいた。仲間の意見も聞 き,アイディアを出し合い,活動を 楽しむ姿が見られた。描画もとても 丁寧に取り組み,出来上がった作品 をじっと眺めていた。

1子(6年) PDM人数 4.0→4.0 おとなしく,自分から行動すること 3点上昇 PDM星巨離  17.5→6.0 の少ない1子は,仲間の描く絵を見

(19→22) ISSS     O.29→0.22 ながら,自分なりのペースで活動し ていた。初めのうちは,仲間に対す る遠慮からか,取り組み方がわから なかったのか,ためらっている様子 に見えた。仲間の声かけにより,次 第に活動中の笑顔が増えていく様子 がうかがわれた。

対象児童

@ ・上昇得点 分析データ 性格・活動の様子等

J子(6年) PDM人数 5.0→6.0 J子は,グループの仲間を気遣いな 2点上昇 PDM距離22.0→15.5 がら,自分の考えをわかりやすく伝

(22→24) ISSS  O.31→0.33 えていた。また,仲間から,面白い アイディアを聞くと進んでそれを取 り入れていた。作業が丁寧で,友達 の描く部分を手伝う場面も見受けら れた。また,出来上がった作品をじつ

くりと見つめていた。

(→は集団描画活動の前後の変化を示す)

 事例分析と考察

   学級適応感上昇群児童について,以下の4つの特徴が観察でき

  た。

  ・活動中,笑顔を絶やさず,仲間と楽しく活動していた児童が

   多い。

  ・穏やかな性格で,人前で発表するときに緊張しやすい児童が    多い。

  ・自分とは異なる仲間の意見を聞くことができる。

  ・発想が豊かである児童が多い。

   学級適応感上昇群児童において,自らのアイディアを仲間に   楽しそうに伝え,仲間の意見を丁寧に聞く積極的なコミュニ   ケー一一一ションが見られた。児童達は発想が豊かであり,異なる意   見にも耳を傾ける柔軟性があると考えられる。また,人前で発   表するときに緊張しやすい児童もいたが,仲間とともにいるこ   とで相乗的に安心感が高まり,安定感が生じたのではないかと   考えられる。このことは,Wrightsman(1960)の実験からも,他   者と一緒にいると不安が低減されることが確認されている。

   また,上昇群の事例の中には,学級では常に1人でいる児童   が,この授業を通して一時的に集団に所属できたことから生じる   帰属感や,活動中に些細な中傷を受けても仲間に励まされるこ

とで生じた連帯感から学級適応感が上昇したのではないかと考 えられるものもあった。

(2)学級適応感下降群児童の事例分析と考察

  学級適応感下降群児童の事例の概要をTable3−6に示し,考察   をする。

Table3−6 学級適応感下降群児童の事例の概要

対象児童

@ ・上昇得点 分析データ 性格・活動の様子等

K男(4年) PDM人数 7.0→7.0 通常の図画工作の授業でも何を描く 5点下降 PDM距離12.5→31.5 かじつくり考え,取り掛かりが遅れ

(27→22) ISSS  O.24→0.33 るK男は,今回も,時間をかけて何 を描こうか考えていた。同グループ の仲間達が描きすすめる中,仲間の 描いたものをまねて描く場面が多く みられた。描くよりも,仲間が描い た絵を見たり,絵について話したり することを好んでいた様子であっ

た。

L男(4年) PDM人数 7.0→6.0 口数の少ないL男は,2枚の描画と 4点下降 PDM距離19.0→15.5 も木の幹にこだわり,描いていた。

(24→20) ISSS  O.24→0.15 木の幹の塗り残した部分を指を使っ てじかに塗りこめようとする姿が印 象的だった。「島の共同画」で島の名 前を決める際,仲間と意見がまとま らず,実施者がそのグループに介入 した。その話し合いでも,最後まで 自分の意見を通し続けた。

M子(4年) PDM人数 7.0→7.0 絵を描くことを好むM子は,のびの 6点下降 PDM距離18.0→13.5 びと活動していた。しかし,仲間の

(26→20) ISSS  O.18→0.26 意見を聞かず,自分の意見を押しつ ける場面が数多く見られ,実施者が グループに随時介入した。活動の途 中で,他のグループから,絵をまね たと指摘され,一時黙り込む場面も 見受けられたが,すぐに活動を再開

した。

対象児童

@ ・上昇得点 分析データ 性格・活動の様子等

N子(4年) PDM人数 2.0→2.0 几帳面なN子は,はじめどのような 6点下降 PDM距離 6.0→5.0 絵を描いたらよいか,迷っている様

(21→15) ISSS  O.0!→0.01 子だった。活動中は,実施者を呼び とめ,何度も描いた絵の説明を行い,

承認を求めた。また,自分の思い描 いたように表現できないと,苛立っ た様子だった。しかし,物語を作る

ときは生き生きしていた。

0子(4年) PDM人数6.0→6.0 終始,表情の硬かった0子は,描画 8点下降 PDM距離28.0→27.7 時の仲間との会話は少なく,丁寧に,

(25→17)

ISSS  O.37→0.31 黙々と絵を描き続けていた。自分の lえをもっているが,それが相手の 意見と異なるとさつと引いて黙り込 む場面が見受けられた。仲間との話 し合いでは,物語は1っにまとまら ず,実施者がグループに介入し,個 人で作ることになった

P男(6年) PDM人数 7.0→7.0 絵を描くことを好むP男だが,今回 3点下降 PDM距離14.5→19.0 は同グループの仲間が率先して制作

(27→24) ISSS  O.63→0.63 に取り組んだためか,自分の意見や 思いを伝えることをためらいがちで あった。また,活動中に仲間からか らかわれ,苦笑いをしていた場面も

見受けられた。

Q男(6年) PDM人数 7.0→6.0 Q男は,開放的な性格で活動中は他 4点下降

i26→22)

PDM距離 3.5→12. O hSSS  O.54→0.54

のグループの作品をよく見て回って

「た。みんなで話し合い,紙を出来 驍セけ小さく畳み込んで意図的にし わをつけて楽しんでいた。作品の出 来上がりは早く,描き終わった後,

今度は1人でこの紙に描きたいと実

施者に伝えた。

R男(6年) PDM人数 2.0→4.0 R男は,仲間との協力が得られな 13点下降

i27→16)

PDM距離 4.5→6. O hSSS  O.11→0.04

かったためか,活動中,徐々に苛立っ トいる様子だった。作業は思うよう ノ進まないため,絵は乱雑になって いた。最終的には,リーダーシップ を取って活動にしていた。活動後の 感想は無記入であった。