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6 章:臨床試験における必要症例数の計算

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表 6.1 は,治療効果の大きさ(エフェクトサイズ)を設定するうえで一般的に必要な情報を表している.ここで,比率と は奏効割合,根治切除割合など,被験者毎に2 値(奏効の有無,根治切除の有無)で与えられる主要評価項目を表し ている.また,平均値とは,手術における出血量,定量的な検査値など,被験者毎に量的データで与えられる主要評 価項目を表している.さらに,生存曲線は,全生存期間,無増悪生存期間,治療成功期間など,被験者毎に生存期間 とイベントの有無で与えられる主要評価項目を表している.なお,生存曲線における症例数設計では,生存期間 t に 対して,ハザードが一定であることを仮定することが多い.

1 標本(単アーム試験)における閾値とは,試験治療が上回りたい(否定したい) 主要評価項目の値である.また,期 待値とは,試験治療によって期待される主要評価項目の値である.言いかえれば,期待値以上の試験結果が与えら れたとき,帰無仮説H0「試験治療による真の治療効果が閾値である」を棄却し,対立仮説H1「試験治療による真の治 療効果は閾値を上回る」を支持できる.

主要評価項目が比率の 2 標本(無作為化比較試験)の症例数設計は,オッズ比に基づいて行われる.そのため,対 照治療・試験治療での期待される比率あるいは期待されるオッズ比の情報が必要である.なお,比率の場合には,帰 無仮説H0「試験治療と対照治療の真のオッズ比は1である」に対して症例数設計が行われる.

6.1:仮説(帰無仮説 H

0,対立仮説

H

1

)と第 1

種の過誤(α エラー)及び第

2

種の過誤(β エラー)の関係

6.1:試験デザイン及びアウトカム毎の症例数設計に必要な情報と対応する検定

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主要評価項目が平均値の 2 標本(無作為化比較試験)の症例数設計は,(平均値の差)/(共通の標準偏差)に基づ いて行われる63.そのため,対照治療・試験治療での期待される平均値および共通の標準偏差の情報が必要である.

なお,平均値の場合には,帰無仮説H0「試験治療と対照治療の真の平均値の差は 0 である(試験治療と対照治療)」

に対して症例数設計が行われる.

主要評価項目が生存曲線の2標本(無作為化比較試験)の症例数設計は,ハザード比に基づいて行われる.そのた め,期待される試験治療/対照治療のハザード比の情報が必要である.あるいは,各治療の年次生存割合(1年生存 割合,3年生存割合など)または中央生存期間(MST; Median Survival Time)からハザード比を計算することができる.

生存曲線による症例数設計では,必要症例数ではなく,必要イベント数で与えられる.一方で,必要症例数は,必要 イベント数に打ち切り(censoring)症例数を加えたものであるため,登録期間および追跡期間に基づいて必要症例数を 計算する場合がある(1 標本の場合も同様である).なお,生存曲線の場合には,帰無仮説 H0「試験治療と対照治療 の真のオッズ比は1である」に対して症例数設計が行われる.

63量的データは,平均値の差が測度に依存するため,標準偏差で割っている.

6.2:EZR

で計算可能な標本サイズの計算

タイトル 必要な情報 備考

1 閾値奏効率,期待奏効率からのサンプルサイズの計算 臨:閾値奏効率,期待奏効率 統:有意水準,検出力

3とほぼ同じ (オプションが異なる)

2 1群の比率の信頼区間をある幅におさめるためのサンプルサイズの計算 臨:想定する比率,信頼区間の幅

統:信頼係数(confidence level)

3 1群の比率を既知の比率と比較するためのサンプルサイズの計算 臨:既知の比率,想定する比率

統:有意水準,検出力

1とほぼ同じ (オプションが異なる)

4 1群の比率を既知の比率と比較するための検出率の計算 臨:既知の比率,想定する比率

統:有意水準,標本サイズ

3の検出力計算版

5 2群の比率の比較のためのサンプルサイズの計算 臨:グループ1の比率,グループ2の比率

統:有意水準,検出力,サンプルサイズの比

6 2群の比率の比較のための検出力の計算 臨:グループ1の比率,グループ2の比率

統:有意水準,各群の標本サイズ

5の検出力計算版

7 2群の比率の比較(非劣性)のためのサンプルサイズの計算 臨:各群の比率,臨床的に意味のある差*1

統:有意水準,検出力

8 1群の平均値の信頼区間をある幅におさめるためのサンプルサイズの計算 臨:想定する標準偏差,信頼区間の幅

統:信頼係数(confidence level)

信頼区間の幅に平均 値は関係ない

9 2群の平均値の比較のためのサンプルサイズの計算 臨:2群間の平均値の差,2群共通の標準偏差

統:有意水準,検出力,サンプルサイズの比

10 2群の平均値の比較のための検出力の計算 臨:2群間の平均値の差,2群共通の標準偏差

統:有意水準,各群の標本サイズ

9の検出力計算版

11 2群の平均の比較(非劣性)のためのサンプルサイズの計算 臨:平均の差,標準偏差,臨床的に意味のある差*1

統:有意水準,検出力

12 対応のある2群の平均値の比較のためのサンプルサイズの計算 臨:2群間の平均値の差*2,2群共通の標準偏差*2 統:有意水準,検出力

13 対応のある平均値の比較のための検出力の計算 臨:2群間の平均値の差*2,2群共通の標準偏差*2 統:有意水準,標本サイズ

12の検出力計算版

14 2群の生存曲線の比較のためのサンプルサイズの計算 臨:登録期間,試験期間*3,年次,各群の生存率

統:有意水準,検出力,サンプルサイズの比

15 2群の生存曲線の比較のための検出力の計算 臨:登録期間,試験期間*3,年次,各群の生存率

統:有意水準,各群の標本サイズ

14の検出力計算版

16 2群の生存曲線の比較(非劣性)のためのサンプルサイズの計算 臨:登録期間,試験期間*3,年次,各群の生存率,

臨床的に意味のある差*1

統:有意水準,検出力,サンプルサイズの比

*1:非劣性マージンと呼ばれる.非劣性試験において許容されるアウトカムの範囲を表す.

*2:2群間の平均値の差,2群共通の標準偏差とあるが,対応のあるデータなので,正しくは,個々の被験者における差の平均値,差の標準 偏差を意味する.

*3:試験期間とは,登録期間+フォローアップ期間を表している.

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