1.5 分散分析
1.5.4 多元配置の分散分析
40
Output.2
は,Bonferroni の多重比較の結果である(太字の部分に多重比較の結果が表示されている).ここで,対比較には
Wilcoxon
符号付き順位検定が用いられている.8歳 vs 12歳,8歳 vs 14歳,10歳 vs.14歳のあいだで有意 差が認められている.Output.3
Pairwise comparisons using Wilcoxon signed rank test
data: Dataset gt8 gt10 gt12 gt10 0.044 - - gt12 0.022 0.044 - gt14 0.022 0.022 0.029
P value adjustment method: holm
これは,Holm の多重比較の結果である(太字の部分に多重比較の結果が表示されている
).ここで,対比較には
Wilcoxon
符号付き順位検定が用いられている.すべての年齢のペアで有意差が認めらる.41
それぞれの場面での観測値のイメージを図
1.10
に示す.場面1
では,各被験者から4
回(手術直後,1時間後,3時 間後,6 時間後)の検査値(アウトカム)を取得する.また,被験者と手術時間の組み合わせでは,1 個の観測値のみが 与えられる.そして,アウトカムに影響を及ぼす要因として被験者と術後時間が存在するものの,研究の関心は術後 の検査値の経時的変化である(図1.10(a)).このような場合では,繰り返し測定の分散分析を用いる.そして,術後時
間の因子が有意であるならば,被験者の個人差に依らず術後の検査値に経時的変化があると解釈される.このとき,術後時間を傾向変化として扱う場合には数値情報になることから量的因子と呼ばれ,被験者の因子は質的因子と呼 ばれる.
一方で,場面
2
では,薬剤の種類と補助療法の有無の2
因子が存在するため(図1.10(b)),2
元配置の分散分析を 用いることになる.ただし,場面1
と異なるのは,薬剤と補助療法の組み合わせによる効果の吟味である.統計学で は,この組み合わせ効果を交互作用(interaction)といい,それぞれの因子(薬剤,補助療法)の効果を主効果(main effect)という.
図
1.11
は,場面2
における薬剤と補助療法の組み合わせでの平均を表している.交互作用が存在しない場合(図1.11(a)),薬剤 B
の検査値が最も高く,補助療法を追加することで,いずれの薬剤でも検査値が同じように増加している.一方で,交互作用が存在する場合には(図
1.11(b)),薬剤 A
において,補助療法が加えられたことで,他の2
剤に 比べて大幅に検査値が増加している.なお,交互作用(薬剤×補助療法)を評価するには,主効果(薬剤,補助療法)に 加えて,交互作用を要因に加えたうえで分散分析を行う必要がある.本稿では,2元配置の分散分析での解説だったが,分散分析では,3因子以上の主効果あるいは,複雑な交互作用 を含むことができる.一方で,複雑な交互作用は,解釈を困難にさせる恐れがあるため,注意が必要である.
(3) EZR
による多元配置の分散分析の実行1.5.1
節では,3 種類の薬(A,B,C) の効果のみを因子とした一元配置の分散分析を用いて解析した.本節では性別も因子に加えた,二元配置の分散分析を考える.ここでは,交互作用を含めた検討を行う.この事例における交互作 用は,「薬剤
A
を男性に投与すると女性に投与するよりも有効である」というような相乗効果が認められる状況などが 検討できる.従って,分散分析のモデルは,(痛みの程度) = (平均) + (疼痛薬の影響) + (性別の影響) + (疼痛薬×薬剤の影響) + (誤差) (a)
同一被験者から複数時点でアウトカムがとられた場合
(b) 2
種類の介入が存在する場合図
1.10:2
元配置の分散分析が適用される場面42
で与えられる.ここでの平均とは,疼痛薬や性別の影響がない,全体での平均的な痛みの程度を表しており,具体的 には,全ての被験者における平均値を意味する.
このときの,EZRによる解析方法を以下に示す.
2
元配置の分散分析の実行1:
「統計解析」→「連続変数の解析」→「複数の因子での平均値の比較(多元配置分散分析multi-way ANOVA)」を選択する.
2:
次のようなメニューが表示される.このとき,
・「目的変数(1つ選択)」で「痛みの程度」を選択する.
・「因子」で「性別」,「薬」を選択する(このとき,CTRLキーを押しながらクリックする).
・「交互作用の解析も行う(群別変数が
3
個以下の場合)」にチェックを入れる.3:
「OK」ボタンを押すこのとき,薬剤と性別の組み合わせ毎の平均値と標準偏差のグラフが次のように表示される.
(a)
交互作用が存在しない場合(b)
交互作用が存在する場合図
1.10:場面 2
における薬剤と補助療法の交互作用の有無による傾向43
その結果,薬
A
の痛みの程度が低かった.また,男性よりも女性のほうがいずれの薬剤でも痛みの程度が低く,薬A
に比べて,薬B,薬 C
のほうが男女差が顕著だった.EZR
の出力では,様々な出力が表示される.表示された青色の箇所毎に説明する.Output.1
薬
性別 A B C 女性 6.784615 6.50600 8.16600 男性 7.484000 11.15286 12.71833
Output.1
は,各因子の組み合わせにおける平均値を表している(すなわち,上図の棒グラフと同様である).因みに,出力では,意味が記載されていないが,このアウトプットの上側の
R
のコマンド> tapply(TempDF$痛みの程度, list(性別=TempDF$性別, 薬=TempDF$薬), mean, na.rm=TRUE) # means
の右側に
means(平均)と記載されているので,それを参考にすればよい.
Output.2
薬
性別 A B C 女性 1.8242926 2.335665 3.706087 男性 0.5654025 2.853137 1.177971
Output.2
は,各因子の組み合わせにおける標準偏差を表している(すなわち,上図のエラーバーと同様である).因みに,出力では,意味が記載されていないが,このアウトプットの上側の
R
のコマンド> tapply(TempDF$痛みの程度, list(性別=TempDF$性別, 薬=TempDF$薬), sd, na.rm=TRUE) # std. deviations
の右側に
std. deviation(標準偏差)と記載されているので,それを参考にすればよい.
Output.3
薬 性別 A B C 女性 13 5 5 男性 5 7 6
Output.3
は,各因子の組み合わせにおける被験者数を表している.因みに,出力では,意味が記載されていないが,このアウトプットの上側の
R
のコマンド> tapply(TempDF$痛みの程度, list(性別=TempDF$性別, 薬=TempDF$薬), function(x) sum(!is.na(x))) # counts
の右側に
counts(個数)と記載されているので,それを参考にすればよい.
A B C
性別 女性 男性
薬
痛みの程度
0 5 10 15
44 Output.4
Anova Table (Type III tests)
Response: 痛みの程度
Sum Sq Df F value Pr(>F) (Intercept) 2827.41 1 569.5257 < 2.2e-16 ***
Factor1.性別 99.33 1 20.0077 0.00007791 ***
Factor2.薬 68.60 2 6.9087 0.002959 **
Factor1.性別:Factor2.薬 33.54 2 3.3778 0.045571 * Residuals 173.76 35 ---
Signif. codes: 0 '***' 0.001 '**' 0.01 '*' 0.05 '.' 0.1 ' ' 1
Output.4
が二元配置の分散分析の結果である.ここで,「Factor1.性別」は,性別の主効果,「Factor2.薬」は薬剤の主効果,「Factor1.性別:Factor2.薬」は,性別×薬剤の交互作用を表している.そして,「Pr(>F)」がそれぞれの効果に 対する
p
値を表している.いずれも,有意水準0.05
のもとで有意であり,有意な効果が認められた.棒グラフの解釈 から,・薬剤による痛みの程度に違いがあり,薬剤
A
の痛みの程度が最も低い,・性差が認められ,男性よりも女性のほうが痛みの程度が低い,
・薬剤×性別の交互作用が認められ,薬剤
A
に比べて薬剤B,薬剤 C
における性差が顕著であり,男性の痛み の程度が高い,ことがわかった.ちなみに,「Smu Sq」は,平均平方和,「Df」は自由度,「F value」は