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ノンパラメトリック検定による繰り返し測定データの解析:Friedman 検定

1.5 分散分析

1.5.4 ノンパラメトリック検定による繰り返し測定データの解析:Friedman 検定

(1)

繰り返しのある

3

群以上でのノンパラメトリック検定:Friedman検定の概要

Kruskal-Wallis

検定は,3群以上の独立なグループに対する検定である.一方で,3期

3

剤以上でのクロスオーバー

試験(チェンジオーバー試験)あるいは,経時的にとられたデータでは,対応があるデータになる(これを繰り返しのある Plot of Means

20 22 24 26

gt08 gt10 gt12 gt14

38

データという).例えば,脳下垂体と翼突上顎裂の距離のデータでは,個々の被験者から,8,10,12,14 歳での距離を測 定し,年齢による違いを評価している.

ここでは,5 名の被験者に対する

4

種類の用量(DOSE.1 < DOSE.2 < DOSE.3 <DOSE.4)を投与したときの反応

(OUTCOME)の仮想例に基づいて Friemdman

検定を説明する.このデータでは,個々の被験者に対して,4 種類の用

量の薬剤を投与したときのアウトカムを比較している.このとき,前に投与した薬剤影響が消失するのに十分な期間を おいているとする(このような期間をウォッシュアウト期間という).図

1.9

は,Friedman検定が有意な場合と有意でない 場合を表している.上側の表はこのときのデータを表している.そして,中央の折れ線グラフは,用量(DOSE)に対する 被験者毎の反応(OUTCOME)の変化を表している.有意でない場合には,用量による反応(OUTCOME)が被験者によ って異なっている.一方で,有意な場合には,いずれの被験者も用量が増加するにつれて反応が上昇している(すな わち,因子(用量)によって

OUTCOME

に違いがある).

下側の表は,被験者毎に

OUTCOME

に昇順に順序付けたものであり,一番下側は,各

DOSE

での順位和を表して いる.有意でない場合には,各

DOSE

での順位和が類似しており(バラツキが小さい),有意な場合には,各

DOSE

で の順位和が異なっている(バラツキが大きい).すなわち,Friedman 検定では,順位和のバラツキを評価することで検 定している.

有意でない場合 有意な場合

ID Dose.1 Dose.2 Dose.3 Dose.4

1 24.0 25.5 21.5 21.0

2 26.0 20.5 24.0 24.5

3 23.5 26.5 25.0 24.5

4 22.5 21.5 23.0 25.0

5 25.0 28.0 28.0 24.5

ID Dose.1 Dose.2 Dose.3 Dose.4

1 21.0 21.5 24.0 25.5

2 20.5 24.0 24.5 26.0

3 23.5 24.5 25.0 26.5

4 21.5 22.5 23.0 25.0

5 24.5 25.0 28.0 28.0

(a)

仮想データ

(b)

仮想データの折れ線グラフ ID Dose.1 Dose.2 Dose.3 Dose.4

1 2 1 3 4

2 1 4 3 2

3 4 1 2 3

4 3 4 2 1

5 3 1 1 4

13 11 11 14

ID Dose.1 Dose.2 Dose.3 Dose.4

1 4 3 2 1

2 4 3 2 1

3 4 3 2 1

4 4 3 2 1

5 4 3 1 1

20 15 9 5

(c)

順位和の計算

1.9:Friedman

検定の概要

39

(2) EZR

による

Friedman

検定の実行

ここでは,1.5.3 節の脳下垂体と翼突上顎裂の距離のデータを用いて

Friedman

検定の適用方法を示す.Friedman 検定の関心は,「年齢によって脳下垂体と翼突上顎裂の距離に違いがあるか10」にある.因みに,Friedman 検定には,

両側対立仮説,片側対立仮説はない.Friedman検定の手順を以下に示す.

Friedman

検定の実行

1:

「統計解析」→「ノンパラメトリック検定」→「対応のある

3

群以上の間の比較(Friedman検定)」を 選択する.

2:

次のようなメニューが表示される.

このとき,

・「繰り返しのある変量(2つ以上選択)」で「gt8」,「gt10」,「gt12」,「gt14」を選択する.

・「2群づつの比較(Bonferroniの多重比較)」,「2群づつの比較(Holmの多重比較)」にチェックを 入れる.

3:

「OK」ボタンを押す

多重比較では,Bonferroniの多重比較及び

Holm

の多重比較が存在するが,これらは,時点間でのすべての組み合 わせでの評価を行う.

EZR

の出力では,様々な出力が表示される.表示された青色の箇所毎に説明する.

Output.1 対応のある3群以上の間の比較(Friedman検定) P値 = 0.00000314

Output.1

は,Friedman検定の結果である.p値が

0.00000314

であることから,有意水準α=0.05のもとで有意である.

したがって,年齢によって脳下垂体と翼突上顎裂の距離に違いが認められる.なお,上側の青色のアウトプット

(Friedman rank sum test)は,この出力と同じ意味なので無視してよい.

Output.2

Pairwise comparisons using Wilcoxon signed rank test data: Dataset

gt8 gt10 gt12 gt10 0.138 - - gt12 0.023 0.131 - gt14 0.023 0.022 0.058

P value adjustment method: bonferroni

10この事例の場合には,成長によって脳下垂体と翼突上顎裂に上昇傾向(成長とともに距離が大きくなるか)に南進があるかもしれない.そのような傾向変化を評価す る場合には,Jonckeere-Terpstra検定を用いる.Jonckeere-Terpstra検定では,帰無仮説H0「傾向変化がない」に対して,両側対立仮説H1では,「傾向変化がある」,

片側対立仮説H1では,「上昇傾向がある」あるいは「減少傾向がある」が評価される.

EZRにおけるJonckeere-Terpstra検定の実行は,

「統計」→「ノンパラメトリック検定」→「連続変数の傾向の検定(Jonckeere-Terpstra検定)」

を選択すればよい.なお,EZRにおいても,両側対立仮説,片側対立仮説を選択することができる.

40

Output.2

は,Bonferroni の多重比較の結果である(太字の部分に多重比較の結果が表示されている).ここで,対比

較には

Wilcoxon

符号付き順位検定が用いられている.8歳 vs 12歳,8歳 vs 14歳,10歳 vs.14歳のあいだで有意 差が認められている.

Output.3

Pairwise comparisons using Wilcoxon signed rank test

data: Dataset gt8 gt10 gt12 gt10 0.044 - - gt12 0.022 0.044 - gt14 0.022 0.022 0.029

P value adjustment method: holm

これは,Holm の多重比較の結果である(太字の部分に多重比較の結果が表示されている

).ここで,対比較には

Wilcoxon

符号付き順位検定が用いられている.すべての年齢のペアで有意差が認めらる.