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生存時間アウトカムにおける必要症例数の計算

6.2 EZR による症例数設計

6.2.4 生存時間アウトカムにおける必要症例数の計算

EZR

では,単群試験での症例設計を行うことができない.ここでは,SWOG(SouthWest Oncology Group)の

Web

サイ

ト(https://stattools.crab.org/)の

CRAB(Cancer Reseach And Bistatistics)のツール(One Arm Normal)を用いる.この

ときの

Web

の画面を以下に示す.

Senario10.

生存曲線に対する単群試験での症例設計

いま,多発性骨髄腫に対する中央全生存期間(MST)が

46

ヵ月であることが報告されている.今回,新たな治療薬が 開発され,MSTが

60

ヵ月まで延長することが期待されている.登録期間

3

年,フォローアップ期間

5

年の片側対立 仮説のもとで,有意水準α=0.05,検出力

1-β=80%での必要症例数を計算しなさい.

153 この

Web

サイトによる症例設計の方法を以下に示す.

生存曲線に対する単群試験での症例設計

1: Web

サイトの画面において

・「Select Calculation, Test type and Parameter of Interest」で「Sample Size」を選択する.

・「Select Calculation, Test type and Parameter of Interest」で「1 Sided」を選択する.

・「Select Calculation, Test type and Parameter of Interest」で「Median Survival」を選択する.

・「Select Hypothesis Test Parameters」の「Accrual Time」に「36」(3年)と入力する.

・「Select Hypothesis Test Parameters」の「Follow-up Time」に「60」(5年)と入力する.

・「Null Median Survival」に「46」と入力する.

・「Alt Median Survival」に「60」と入力する.

・「Power」に「0.80」と入力する.

2:

「Calculate」ボタンを押す

すると,「Sample Size」に「138」が表示される.すなわち,必要症例数は

138

症例である.なお,この検定は生存曲線 に指数分布を想定したときの信頼区間に基づいて計算されている.なお,このときの信頼区間は,「Approx Upper

Critical Value」に表示される.今回の場合には,「54, 73」が想定される信頼区間幅になる.

154

EZR

では,

MST

ではなく,年次生存割合

(survival)

で計算しなければならない.生存曲線が指数分布に従うとき,次 の関係がある.

log( )

 生存割合

ハザード 生存期間

ここで,

log

は自然対数である.

MST

は生存割合が

0.5

の生存期間なので,標準治療でのハザード比は

log( ) log(0.5)

0.06931

 

 標準治療の生存割合   標準治療のハザード

標準治療の生存期間 10 である67.したがって,標準治療の

1

年生存割合は,

 

1

exp  exp( 0.06931 2) 0.435

    

標準治療の1年生存割合 標準治療のハザード 標準治療 生存期間の

で与えられる68.すなわち,標準治療での

1

年生存割合は,

43.5%

である.

次いで,標準治療+新規抗癌剤群

(

新規治療群

)

1

年生存率を計算する.

(

標準治療

)

(

新規治療群

)

のハザード 比が

1.3

なので,新規治療のハザードは,

0.06931

0.05332

既存治療のハザード 1.3  新規治療のハザード

ハザード比 なので,新規治療法の

1

年生存割合は,

 

1

exp  exp( 0.05332 2) 0.527

    

新規治療の1年生存割合 新規治療のハザード 標準治療 生存期間の

である.すなわち,新規治療での

1

年生存割合は,52.7%である.

対応のある連続アウトカムでの症例設計

1:

「統計解析」→「必要サンプルサイズの計算」→「対応のある

2

群の平均値の比較のためのサンプル サイズの計算」を選択する.

2:

次のようなメニューが表示される.

67 Excelでは,「= -LN(0.5)/10」で計算できる.

68 Excelでは,「= exp(-0.06931*12)」で計算できる.

Senario11.

生存曲線に対する比較試験での症例設計

いま,切除不能局所進行・再発胃癌患者における標準治療での

MST

10

ヵ月であることが報告されている.新た な抗癌剤+標準療法の上乗せ効果によって,(標準療法)/(標準療法+新規抗癌剤)のハザード比が

1.3

になるこ とを期待している.登録期間

3

年,フォローアップ期間

2

年の両側対立仮説のもとで,有意水準α=0.05,検出力

1-β=80%での必要症例数を計算しなさい.

155 このとき,

・「登録期間」に「3」と入力する.

・「試験期間(登録期間を含む),試験期間>=登録機関」に「5」と入力する.

・「各グループの予測生存率の年数(n年生存率)」に「1」と入力する.

・「グループ

1

の生存率 (0.0 – 1.0)」に「0.435」と入力する.

・「グループ

2

の生存率 (0.0 – 1.0)」に「0.527」と入力する.

・「グループ

1

2

のサンプルサイズの比(1:X)」に「1」と入力する.

・「解析方法」で「両側」を選択する.

3:

「OK」ボタンを押す

このとき,次のような出力が表示される.

仮定 P1 0.435 P2 0.527 P1、P2の観察期間 1 登録期間 3 全研究期間 5 αエラー 0.05 両側検定 検出力 0.8 N2N1のサンプルサイズの比 1 必要サンプルサイズ 計算結果 N1 256 N2 256

である. したがって,必要症例数は1群あたり

256

例である

(

合計

512

)

.これは,ログランク検定に基づいて計算 されている.このとき,検出力に対する必要症例数のグラフも表示される

(

6.2

と同様のグラフであるが,解釈は行 わないため省略する

)

非劣性マージンが,ハザード比で与えられていることから,生存期間に変更しなければならない.先ほどの比較試験 の場合と同様に計算する.対照群でのハザードは,

log( ) log(0.3)

1.20397 1

 

 対照群の生存割合   対照群のハザード

対照群の生存期間

なので,非劣性マージン

1.2

でのハザードは,

1.20397 1.2=1.444764 

である.つまり,生存割合は exp(-1.44471) 0.236

 

非劣性マージンでの生存割合 である.よって,非劣性下限は,0.236である.

生存曲線に対する非劣性試験での症例設計

1:

「統計解析」→「必要サンプルサイズの計算」→「2群の平均の比較(非劣性)のためのサンプルサイ ズの計算」を選択する.

2:

次のようなメニューが表示される.

Senario12.

生存曲線に対する非劣性試験での症例設計

いま,切除不能進行・再発膵癌に対する既存治療に対して,レジメンを変更することで,有害事象の発現を抑制でき ることが報告されている.既存治療での

1

年生存率は

30%である.非劣性試験を検討するとき,(新規レジメン)/(既

存治療)の非劣性マージンは

1.2

とする.登録期間

3

年,フォローアップ期間

2

年とするとき,有意水準α=0.05,検

出力

1-β=80%での必要症例数を計算しなさい.

156 このとき,

・「登録期間」に「3」と入力する.

・「試験期間(登録期間を含む),試験期間>=登録機関」に「5」と入力する.

・「各グループの予測生存率の年数(n年生存率)」に「1」と入力する.

・「対照群の生存率 (0.0 – 1.0)」に「0.3」と入力する.

・「試験群の生存率 (0.0 – 1.0)」に「0.3」と入力する.

・「非劣性下限」に,「0.236」と入力する.

・「αエラー(0.0 – 1.0)」に「0.05」と入力する.

・「検出力(1-βエラー(0.0 – 1.0))」に「0.80」と入力する.

・「グループ

1

2

のサンプルサイズの比(1:X)」に「1」と入力する.

・「解析方法」で「One-sided」を選択する.

3:

「OK」ボタンを押す

このとき,次のような出力が表示される.

仮定

P1 0.3 P2 0.3 非劣性下限 (0.0-1.0) 0.236 P1、P2の観察期間 1 登録期間 3 全研究期間 5 αエラー 0.05 片側検定 検出力 0.8 N2N1のサンプルサイズの比 1 必要サンプルサイズ 計算結果 N1 384 N2 384

である. したがって,必要症例数は

1

群あたり

386

例(全体で

768

例)である.これは,ログランク検定に基づくハン ディキャップ検定を用いて計算されている.このとき,検出力に対する必要症例数のグラフも表示される(図

6.2

と同様 のグラフであるが,解釈は行わないため省略する).