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4.1 定性検査値の評価

4.1.1 定性検査値の要約

(1)データの概要:マンモグラフィ検査のデータ

ここでは,乳癌に対するマンモグラフィ検査の予測確度を評価する仮想例を用いる(新谷,201547

).このデータは,病

理診断の結果,乳癌ありと診断された

12

名と乳癌なしと診断された

9,988

名に対するマンモグラフィ検査の結果(陽 性,陰性)を用いて,マンモグラフィ検査の診断能を評価している.このときのクロス集計表を以下に示す.

乳癌あり 乳癌なし 合計 検査陽性

10 799 809

検査陰性

2 9,189 9,191

合計

12 9,988 10,000

(2) 定性検査値を要約するための統計的方法

ここでは,定性検査を解析するのに用いる用語について整理する.下表は,定性検査における呼び方を表している.

疾患有 疾患無 検査陽性 真陽性

(TP: True Positive)

偽陽性

(FP: False Positive)

検査陰性 偽陰性

(FN: False Negative)

真陰性

(TN: True Negative)

以下では,定性検査のための評価指標について略説する.

感度・特異度

疾患有の被験者を陽性と正しく診断する確率(疾患患者を陽性と判断する確率)を感度(sensitivity)といい,また,疾患 無の被験者を陰性と正しく診断する確率(非疾患患者を陰性と判断する確率)を特異度(specificity)という.感度と特異 度は,次のように定義される.

TP

TP FN

n

n n

 

感度 , TN

TN FP

n

n n

 

特異度

(

nTP:真陽性の被験者数,nFP:偽陽性の被験者数,nTN:真陰性の被験者数,nFN:偽陰性の被験者数)

47新谷歩:今日から使える医療統計,医学書院,2015.

114 陽性的中率・陰性的中率

感度と特異度の利点は,当該疾患の有病率(prevalence)に影響されずに診断性能を評価できる点にある.一方で,

「感度≠臨床的有用性」でることに注意しなければならない.感度は「疾患患者を陽性と判断する確率」であり,臨床 検査の診断能を評価しているのに対して(医師・研究者の立場),実際の臨床検査では「陽性と判断された被験者が実 際に疾患である確率」という臨床的有効性が重要である(患者の立場).

このようなときに用いられるのが陽性的中率 (positive predictive value)及び陰性的中率(negative predictive value) である.陽性的中率とは,陽性と診断された被験者が疾患である確率を意味する.また,陰性的中率とは,陰性と診 断された被験者が疾患である確率を意味する.陽性的中率と陰性的中率は,次のように定義される.

TP

TP FP

n

n n

 

陽性的中率 , TN

TN FN

n

n n

 

陰性的中率

一方で,上式による陽性的中率及び陰性的中率の計算は,真の有症率が(疾患者数)÷(総被験者数)とした場合で あり,実際の有症率が異なる場合には,陽性的中率及び陰性的中率の値が変化する.すなわち,陽性的中率及び陰 性的中率は,有病率の影響を受ける.

因みに,陽性的中率は陽性予測度,陰性的中率は陰性予測度と呼ばれることもある.

陽性尤度比・陰性尤度比

疾患有が疾患無よりも何倍陽性になりやすいかを表す指標に陽性尤度比(likelihood ratio of a positive result)があ る.

TP TP FN

TN TN FP

/ ( )

/

1 (

1 )

n n

n

n n n

 

感度   

陽性尤度比 特異度

で定義される.すなわち,陽性尤度比は,疾患有を陽性と診断した場合と疾患無を陽性と診断した場合の比で表され ており,大きいほど確定診断に優れるといえる(一般に尤度比といった場合には陽性尤度比を表す) .

また,疾患有が疾患無よりも何倍陰性になりやすいかを表す指標が陰性尤度比(likelihood ratio of a negative result) であり,

TP TP FN

TN TN FP

1 1 / ( )

/ ( )

n n

n n

n n

 

感度  陰 比 特

性尤度 異度

で定義される.すなわち,陰性尤度比は,疾患有を陰性と診断した場合と疾患無を陰性と診断した場合の比で表され る指標である.

(3) EZRによる定性検査値の評価

ここでは,マンモグラフィ検査のデータを用いて

EZR

による解析方法を解説する.

定性検査の診断への正確度の評価

ここでは,感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率,陽性尤度比,陰性尤度比などの指標を計算する方法について 述べる.EZRでの計算では,マンモグラフィ検査のデータのように,クロス集計表を予め用意したうえで,それを直接入 力することで実行できる.

115

定性検査の診断への正確度の評価

1:

「統計解析」→「検査の正確度の評価」→「定性検査の診断への正確度の評価」を選択する.

2:

クロス集計表のデータを次のように入力する.

3:

「OK」ボタンを押す

このときのアウトプットは,以下のとおりである.

疾患陽性 疾患陰性 計 検査陽性 10 799 809 検査陰性 2 9189 9191 計 12 9988 10000 点推定と 95 % 信頼区間

--- 推定値 信頼区間下限 信頼区間上限

検査の陽性率 0.081 0.076 0.086 真の有病率 0.001 0.001 0.002 感度 0.833 0.516 0.979 特異度 0.920 0.915 0.925 陽性的中率 0.012 0.006 0.023 陰性的中率 1.000 0.999 1.000 診断精度 0.920 0.914 0.925 陽性尤度比 10.417 8.019 13.532 陰性尤度比 0.181 0.051 0.642

---

ここで,検査の陽性度とは,陽性と診断された被験者の割合である.また,真の有病率とは,このデータから計算され た有病率であり,

10 2

10,00 0.0012 0.001 0

   

真の有病率

である. さらに,診断精度とは,正しく診断された被験者の割合であり,

10 9189

10,0 0.9199 0.920 00

   

診断精度

で計算される.また,信頼区間下限,信頼区間上限は,各指標に対する

95%信頼区間を表している.

事例の結果より,

 感度(乳癌患者をマンモグラフィ検査で陽性とする確率)は,83.3% (0.830),

 特異度(非乳癌患者をマンモグラフィ検査で陰性とする確率)は,92.0% (0.920),

 陽性的中率(陽性の被験者が乳癌である確率)は,1.2% (0.012),

 陰性的中率(陰性の被験者が乳癌でない確率)は,100.0% (1.000),

 乳癌患者は非乳癌患者よりも

10.417

倍陽性になる(陽性尤度比),

 乳癌患者は非乳癌患者よりも

0.181

倍陰性になる(陰性尤度比) と解釈される.

116 陽性的中率,陰性的中率の計算

「定性検査の診断への正確度の評価」での陽性的中率及び陰性的中率は,真の有症率(疾患患者数÷被験者数) に基づいて計算されたものである.一方で,疫学研究等により,当該疾患の有症率が分かる場合には,それを用いて 陽性的中率,陰性的中率を計算したほうが適切である.

ここでは,疫学調査で報告された乳癌の有症率を

5%(0.05)としたときの陽性的中率,陰性的中率を計算する.

陽性的中率・陰性的中率の計算(有病率が存在する場合)

1:

「統計解析」→「検査の正確度の評価」→「陽性的中度、陰性的中度の計算」を選択する.

2:

データを次のように入力する.

3:

「OK」ボタンを押す

このときのアウトプットは,以下のとおりである.

仮定 テスト前確率(0-1) 0.05 感度 0.833 特異度 0.92 計算結果 陽性的中率 0.354 陰性的中率 0.991

先ほどの事例(有症率=0.001)に比べて,陽性的中率が上昇する一方で,陰性的中率が減少していることがわかる.

すなわち,有症率が陽性的中率及び陰性的中率に影響を及ぼすことがわかる.このことは,同時に表示されるグラフ

(図 4.1)からも明らかである.ここで,実線は陽性的中率であり,破線は陰性的中率である.横軸は有病率を表してい

る.したがって,有病率が上昇するほど陽性的中率が高くなるのに対して,陰性的中率は低くなる.

図4.1:陽性的中率および陰性的中率の推移

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

Pretest probability

Predictive value

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

Positive predictive value Negative predictive value

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