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第五章 “畢”・“罷”・“訖”の接続用法
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(“曰”の用法は、話し手が話している内容を引き出すことである。その主語は話し手であ り、“曰”の後ろの部分は話されている内容である。その意味は「言う」である。)
(122)曰:…… 《左传》隐1
(言った。「……」)
(123)君子曰:…… 《左传》隐1 (君子曰く:「……」)
(124)仲尼曰:…… 《左传》僖28 (仲尼曰く:「……」)
(125)韩简退曰:…… 《左传》僖15 (韓簡は退いてから、言った。「……」)
(中略)“云”的这种用法和“曰”的用法在结构上是一样的,语义也可以解释为今语的
“說”。不过,《左传》中的“云”只用于引经据典,如征引《诗经》、《尚书》盟辞载 书、铭文谣谚、古代圣贤的言论等。
(“云”のこの用法は“曰”の用法と構造上同様であり、意味も現代語の「言う」と解釈で きる。しかし、『左傳』における“云”は経典を引用する時だけに用いられる。例えば、『詩 経』、『尚書』、辞書類、諺類、古代の聖賢の言葉などを引用する時である。)
(126)《诗》云:“自求多福。”
(『詩経』 ではこのように述べている、「自分で自分の幸福を祈る。」と。)
(127) 吾盟固云“唯强是从”。
(吾盟固が言う、「ただ強者に従う。」と。)
『左傳』に見られる接続用法の語彙は“曰”、“云”に限られている。“曰”、“云”の接続 用法の用例はその後の時代にも見られる。『世説新語』と『祖堂集』にも“曰”、“雲”の接 続用法の用例が散見される。一方、『六祖壇経』や『祖堂集』には、“言訖”、“言畢”の用 例も見られる。
(7)又曰:“……。”師言訖,便往新州國恩寺。(『六祖壇経』)
(また言った、「……。」と、師は言って、新州国恩寺に行かれた。)
(109)听訖,云:“二賢故自有才情。”(『世説新語』賞誉)
(聞き終えてから、「お二人は才智と情趣があります。」と言った。)
しかし、唐五代の作品では“畢”・“罷”・“訖”の接続用法の用例は少ない。先述した通 り、研究対象である五作品における接続用法の用例は散見され、作品により、接続用法は
“畢”・“罷”・“訖”の用例全体の半数以上を占める場合もある。
3 .新旧接続用法の比較
本節では、“云”や“曰”を旧式の接続用法とし、“畢”・“罷”・“訖”を新式の接続用法 とする。
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旧式の例:子曰:“有朋自遠方来,不亦乐乎。”(『論語』)
(子曰く:友あり遠方より来たる、また楽しからずや)
新式の例:平兒笑道:“這不是正經。”說畢,轉身出來,一一發放。(『紅楼夢』六十一回)
(平児が笑いながら、「これは道理じゃない。」と言って、出てきて、ひとりひと
りに配った。)
以下の表は新旧の接続用法について比較したものである。
表5-1 新旧の接続用法について
新式 旧式
会話文との位置関係 「……」“~畢”/“~罷”/“~訖” “曰”/“云”「……」
旧式では、“曰”/“云”を前置することでそれ以降が会話文であることを示す。新式では、
“道”が“曰”/“云”と同じ役目を担い、さらに会話文の後に“~畢”/“~罷”/“~訖”
を後置する。
また、“说”、“说完”などは現代語でも会話文の前後で使用されている。英語では“say”
などが用いられる。それぞれの特徴について、簡単に比べてみよう。便宜上、全て「言う」
を表す語を例とする。
表5-2“説”の位置の比較
位置 会話文に前置 会話文に後置 古代漢語 曰:“……” ×
近代漢語 曰/説/(説)道:“……” (道)“……” 説畢
現代漢語 说(道):“……” “……”(这样)说(完)/说着/说道
英語 say“……” “……”said
日本語 言った。「……」 「……」と言った。
古代漢語に見られる接続用法で使用される“曰”は会話文や経典からの引用文の前に置 かなければならない。近代漢語でも “曰”などが使用された時は古代漢語と同じであり、
会話文の前に置かれる。一方、明確に会話文が終わったことを示すための新しい接続用法 として用いられる“説畢”などは、会話文の後ろに置かなければならない。しかし、現代 漢語になると、“说”などの接続用法としての用例は会話文の前後両方に置くことが可能で ある。また、日本語や英語(屈折変化あり)の接続用法は、文の前後どちらでも置かれ、
比較的自由である。
接続用法の位置に関する言語類型論的な研究は今後の課題とする。
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4 .五作品における“畢”・ “罷”・“訖”の接続用法のまとめ
本論の各章では、“畢”・“罷”・“訖”の接続用法について、個別に分析した。ここでは、
研究対象である五作品の“畢”・“罷”・“訖”の接続用法の用例についてまとめる。
表5-3 五作品に見られる“畢”・“罷”・“訖”の接続用法の用例数
水滸傳 西遊記 金瓶梅詞話 紅楼夢 児女英雄傳
畢 20/103 26/175 264/549 164/282 3/45
罷 196/451 24/85 17/61 15/21 33/72
訖 5/22 2/33 5/22 0 0
(接続用法の用例数/全用例数)
① それぞれの作品に見られる“畢”・“罷”・“訖”の全用例数と接続用法の用例数は比例す る。特に『水滸傳』と『児女英雄傳』の“罷”、『金瓶梅詞話』と『紅楼夢』の“畢”は 用例数が多いため、接続用法の用例数も多い。
② 接続用法としては“畢”・“罷”のどちらか一つを多用する傾向がある(ただし、『西遊 記』は例外である。例えば、『水滸傳』では“罷”の接続用法が多用されるのに対して、
“畢”の接続用法の用例は少数に留まる。一方、『金瓶梅詞話』では、“畢”の接続用法 が多用されるのに対して、“罷” の接続用法の用例は少数に留まる。“畢”・“罷”接続 用法の用例数の分布については、『金瓶梅詞話』と『紅楼夢』は非常に類似している。
③ “訖”は用例数が全体的に少ない。
5.小結
接続用法は古代漢語から現代漢語まで受け継がれているが用いられている語は変化して いる。古代漢語では“曰”、“云”が使用されていた。晩唐の『祖堂集』などから“畢”・“罷”・
“訖”の接続用法が見られるが、まだ用例数が少ない。白話小説にはこれらの用例が多く 見られる。現代漢語では“说完”、“说着”38が多く見られる。接続用法については、今後、
現代漢語そして他言語との比較検討も行う予定である。
38 “说着”の多用は『児女英雄傳』にはすでに見られる。この点については、別稿に譲る。
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