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五作品における“罷”のまとめ

第三章 “罷”について

3. 五作品における“罷”のまとめ

3.1五作品に見られる“罷”の形式とタイプ別割合

以下五作品における“罷”の用例数とタイプ別割合を以下の表3-19と表3-20にまと める。

表3-19 五作品における“罷”の用例数

水滸傳 451/約96万字

西遊記 85/約82万字 金瓶梅詞話 61/約80万字 紅楼夢 21/約107万字 児女英雄傳 72/約57万字

(“罷”の用例数/作品字数)

明代と清代の各作品において、“罷”の用例が見られる。全体的には用例数が少ないが、

『水滸傳』は“罷”の用例が圧倒的に多く見られる。

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表3-20 五作品における“罷”のAタイプとBタイプの割合

Aタイプ Bタイプ

水滸傳 33.04% 66.96%

西遊記 29.41% 70.59%

金瓶梅詞話 32.79% 67.21%

紅楼夢 0 100%

児女英雄傳 26.39% 73.61%

明代から清代にかけて、“罷”のBタイプの割合が高い。これは五作品に共通している。

特に、『紅楼夢』における“罷”の用例はすべてBタイプの用例である。表3-19と表3-

20からわかるように、明代から清代にかけて、全体的には“罷”の用例数はそれほど多く ない。しかし、作品によっては、“罷”の多用も見られ、特に『水滸傳』では、“罷”の用 例が多い。また、どの作品においても、“罷”のBタイプの用例の割合が高い。

3.2「V+O+罷」と「V+罷+O」新旧の語順の対立

“罷”のⅠ型語順とⅡ型語順の用例数の分布は以下表3-21の通りである。

表3-21“罷”のⅠ型とⅡ型の用例数の分布

Ⅰ型 Ⅱ型

水滸傳 46 33

西遊記 10 0

金瓶梅詞話 1 9

紅楼夢 0 1

児女英雄傳 1 8

『水滸傳』、『西遊記』では、“罷”のⅠ型の用例数はⅡ型の用例数より多い。一方、『金 瓶梅詞話』、『児女英雄傳』にはⅡ型の用例数の方が多い。また、『紅楼夢』には“罷”のⅠ 型の用例数が見られず、Ⅱ型の用例数は1例のみである。

3.3“罷”と共起する副詞

Aタイプにおける“罷”と共起する副詞が見られた。“罷”と共起する副詞を以下の 表3-22のようにまとめられる。

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表3-22 “罷”と共起する副詞

否定副詞(未) 副詞(已)

水滸傳 0 70

西遊記 0 1

金瓶梅詞話 1 2

紅楼夢 0 0

児女英雄傳 0 2

Aタイプにおける“罷”と共起する副詞はほとんど“已”である。また、『水滸傳』にお ける“罷”の用例が多く、“已”との共起も多く見られた。しかし、『水滸傳』以外の作品 では、“罷”と共起する副詞は極めて稀である。副詞が挿入される用例が少ないので、“罷”

の虚化の度合いが高いことが伺える。また、副詞“已”は『水滸傳』においては挿入され る例が多いのは“罷”のみならず、先述した“畢”も同様である。否定副詞は“未”のみ である。この点については、先述した“畢”も同様である。

3.4“罷”を含むフレーズの特徴

本研究で取り上げている作品における“罷”と共起する語彙の用例数とタイプ別用例数 は以下の表3-23の通りである。

表3-23 “罷”を含むフレーズの用例数とタイプ別用例数

延べ語数 異なり語数

“罷”を含むフレーズ 690 190

Aタイプ 213 92

Bタイプ 477 98

“罷”と共起する語彙で出現回数が多い語は以下の通りである。

131;說 105;拜42;飯35;茶32;看27;施禮16;敘禮16;齋13;洗漱12;吃9;想8;言7; 朝7;謝恩已6;祝6;道6;唱5;早飯5;讀5

“罷”を含むフレーズの用例数が多く、異なり語数も多く見られる。またAタイプの用 例数が少なく、Bタイプの用例数が圧倒的に多い。まず、“罷”と共起できる語彙が多く、

しかも意味も多岐にわたっている。また、1回しか共起しない語彙も多い。一方、地の文と 会話文の境界を示すマーカーとしての用例“聴罷”“寫罷”の用例が多い。それに、言語関 係の語彙のバリエーションも豊富である。とりわけ、『水滸傳』における“聴罷”の用例数 は他の作品をはるかに上回る。前節で論じた『水滸傳』には“説畢”の例がなかった理由 として、“説罷”が代わりに多く使われていると考えられる。さらに、“罷”と共起する語 彙の多くは単音節である。

77 3.5明清以前の“罷”について

“罷”は従来「停止、解除、免除」等の意味を表し、上古から使われていた。

(104)斉王大悦,発師五万人,使陳臣思将以救周,而秦兵罷。(『戦国策』東周策)

(斉の国王は大いに喜び、軍隊五万人を発動し、陳臣思を派遣して、周の国を救った。

そこで秦の軍隊は撤退した。)

例(104)の「撤退」の意味の派生義として、「終わる、終える」の意味が生じた。

(105)新詩改罷自長吟。(杜甫『解悶』)

(新しい詩歌を推敲し終え、自分で朗読した。)

明清時代になると、“罷”の「終わる、終える」の意味は“畢”と同義になった。“罷”

は“畢”ほど広く使われている理由として、「終わる、終える」の意味以外に、「停止、解 除、免除」等の意味を表しているためだと考えられる。

3.6小結

これまでの考察から、“罷”について、以下のようにまとめられる。

① “罷”は南北朝時代からすでに用例が見られるが、広く使われていなかった。“罷”の 形式は「V(+O)+罷」と「名詞(+副詞)+罷」である。一方、明代になると、「V

+罷+O」の形式の用例が多く用いられるようになった。“罷”の移動の原因については、

後述する。

② 本研究で取り上げた明清白話小説においては、“罷”の用例はすべての作品において見 られる。しかし、全体的には“罷”の用例数は“畢”よりやや少ない。

③ “罷”の虚化の度合いが作品により、違いが見られるが、比較的高い。

④ 明代と清代においては、虚化の度合いの相違が見られない。

⑤ “罷”は様々な語彙と共起でき、広く使われている。二音節(二音節以上)の語彙と共 起しやすい。単音節の語彙と共起する用例は比較的少ない。単音節の語彙と共起する場 合、接続用法の言語系語彙が多い。とりわけ、『水滸傳』における用例数が多い。

⑥ Ⅰ型とⅡ型の用例の多寡は作品により、異なっている。特に目立った傾向が見られない。

⑦ “罷”は“了”と併用している用例はごく少数が見られる。

⑧ 副詞挿入の用例も多く見られる。そのほとんどは“已”である。否定副詞の場合は全部

“未”が用いられている。

⑨ 接続用法の用例は多く見られる。また、接続用法としての用例の表現もある程度多様性 が見られる。

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