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1.学習指導計画の作成

 「家庭の仕事」の指導事項(ア.家庭の仕事の内容について知り、計画を立てることができる、

イ.簡単な食事を整えることができる)の指導内容を調査研究から得た指導者の持つべき視点

(・生活の連鎖性・主体的な消費姿勢・相互の信頼感・生活に必要な技能)を考慮に入れ て検討し、指導計画案を作成した(第4章参照)。次に、調査対象とした授業の概要を述べる。

(1)「食事つくりに必要な仕事」の学習指導の概要

 授業の導入として、小学校家庭科で学習しだ米飯の調理方法をもとにして、食事つくりの仕 事の基本と仕事の手順を把握させた。次に、時代による生活様式の変化に伴う、食事つくりに 関する仕事の質的な変化に注目させた。さらに、外食産業や食生活に関わる仕事の社会化が進 行している状況のもとにある、自分の食生活に関心を持kせた。

 これらの学習を通して、食事に関する仕事が簡単になり省力化が図られることによって、家 族の生活も変化してきたことに着目させ炬。

 指導の方法としては、米飯を食べるという目的を達成するまでを流れ図によって示し、流れ の方向の選択によって仕事の内容や労力、時間、必要な技能の違いを確かめながら展開し捷。

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 学習題材は、学習者が体験的に「生活の連鎖性」を学習させる場とするために、市販の洗い 米(工場で米を洗い、乾燥後、45◎g単位でプラスチック容器に封入。容器には、炊飯に必要な 水の量を示すライン表示が付けられている)と普通の米を利用した。まず、洗い米を浸水した 際の水の白濁状態を観察し、次に、洗い米を浸水した水と同程度の白濁状態にまで米を洗うだ めに必要な水量と米のとぎ汁の汚濁の程度を観察させた。

 次に、米のとぎ汁の自然界に及ぼす影響の度合を、新聞の切り抜き資料(家庭の生活排水が、

魚が住める程度の酸素要求量に希釈するのに必要な水の量を、風呂桶を単位として示したもの)

を用いて理解ざせた。

 現在の生活の多くが都市型となり、生活と自然環境とのつながりの意識は希薄な状況になり つつある。特に、わが国は水資源に恵まれており、これまでの水に関わる一般的な認識は「湯 水のように○○を浪費する」などの慣用句に象徴的に表されているように、水に対する認識は 低い。そこで、水と生活を表現した慣用句の解釈を話し合わせることによって、慣用句の中に 人の意識を投影させる活動を取り入れた。

 指導計画を作成は、自然環境に守られて生きる人間の立場を実感させるように構成した。

 指導に当kっては、食事準備の時間と労力は単に消耗するものでなく、時間と仕事をする空 間を共有しているという気持ちが、家族間に相互信頼を構築させ、新たなエネルギーを生産す

る機会となることを、学習者の生活経験から思い起こさせる工夫が必要と考える。それは、こ の思い起こしが、学習者を家庭の機能の理解に導くと思われるからである。

 また、食事の整え方を主体的に選択するteめには、調理をする技能の習得も重要であること を認識させることができると考えて学習活動を展開した。

(2)「朝食つくりの計画」の学習指導の概要,

 主体的な消費姿勢を育成するため、朝食の献立や調理方法、買物などの計画の作成、実習ま での過程と実習後のまとめなどの体験的な学習を、グループ学習の学習形態で試みさせ萢。

 まず、起床から登校時刻までの朝の限られた時間の過ごし方を思い起こさせ、朝食の準備や 後始末に使える時間の自傷を決めさせた。次に、決められた時間内に準備できる献立を考え、

時間と手間を省く工夫をさせk。献立作成の条件として、ご飯を使うこと、調理用具は学校に 設置してある物を使うことを指示しだ。また、米と調味料を除いた費用を一人分200円以内とし、

他のグループとの共同購入も勧めta。

 活動の進め方は、話し合いの経過と結果を記録するtaめに、模造紙と流れ図に使うカードを 準備し、カードに調理名(目的)、準備方法の決め方(判断・選択)、仕事内容(方法・手続)

を記入し、グループ毎の献立発表会に際して、グループの話し合いの道筋が残るように計画表 を仕上げさせた。

2. 業実施と授業対象者  (第5章と同じ)

3.調査方法

 学習者の授業前・授業後の変容を把握し指導目標の達成の程度を知るteめに、本甲究室の野 々村らの研究2}を参考にして、学習目標の到達の程度を測定できる調査紙を作成し、それを用 いて、授業前・後に調査を実施して比較分析し考察を行った。調査項目は、表2に示す。

 調査紙は、表1の「家庭の仕事」の指導内容に対応した食生活に関わる内容について、食生 活に対する興味・関心の程度を把握することをねらいとした16の調査項目を設け炬。

 回答は、項目の内容について、「よく考える」「時々考える」「あまり考えない」「ほとん ど考えない」の4段階のうち、日常の暮らしの中で自分の考え方に合うと思う個所に○を付け る方法で求め炬。

 調査方法は、授業前の調査については、10月25、26、27日の3日間に技術担当教論の協力も得 て、兵庫教育大学付属中学校の第1学年に在籍する、技術の授業を受けている生徒も含めた、

男子60名、女子60名、合計120名を対象に実施した。 (有効回答率:100%)

 項目の妥当性を確かめるtaめに、授業前の調査データ(120人分)の評定尺度をそのまま間隔 尺度とみなして集計し、上位下位分析を試みた。その結果、16項目全ての上位群と下位群のカ

イニ三値に1%の有意水準が認められ妥当性が確められた。ただし、この調査項目は、1校の みの調査結果から検討したものであり、今後、調査対象校の数を増やし、より妥当性の高い調 査項目にしなければならない。

 授業後の調査は、 「食事つくりの計画」の授業時間の終わりに授業前と同じ調査紙を用いて 実施し、授業対象の生徒男子30人、女子30人合計60人を対象とした。(有効回答率:100%)

 授業前・後の比較分析は、授業対象者である60人を分析対象のデータとしta。

       表1 「家庭の仕事3の傘生活に関わる指導内容

指  導  内  容 食 生 活 に 関 す る 内 容

①家庭の仕事と家族や地域の協力関係 ・朝食の準備の時間   ・食事の仕事分担・食事の楽しさ    ・食事のマナー

Eごみの捨て方と回収日

②家庭の仕事の基本的な内容と進め方 ・食生活と健康・食事の仕事内容・食事の計画

◎いろいろな家庭の仕事と家庭の状況 ・手作り食品と市販食:品の特色。朝食にかかる費用 ・食事つくりの楽しさ

④家庭の仕事と社会・自然環境との関係 ・人間と自然    ・季節と出盛りの食品・食生活と水や生活廃棄物

⑤家庭の仕事の社会化 ・食事の準備方法の選択・食事の準備とゴミの ハと種類。安全な食品の選択・調理の技能

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表2 食生活を中心とした家庭生活に関する調査紙

  食生活を中心とした家庭生活に関する調査

      (        )中学校 (〉年( )組( )番  く男・女)

 この調査は、毎日の食生活を中心とした家庭生活についておたずねします。

これはテストではありませんから正解・不正解はありません。もちろん、成績とは無関係です。

したがって、あなたの意見を素直に答えてください。

(1)下の項目の内容について、疑問や興岐を持ったり、納得したりすることがあるか、ないかを   答えてください。答え方は、各問の内容に関して、あなたが日頃の暮らしの中で考える度含を、

  よく考える、時々考える、あまり考えない、まったく考えない、の4段階に当てはまる目盛り   にOを付けて答えてください。

       よ   時   あ   ほ       く   々   ま   と        考   考   り   ん        え   え   考   ど        る   る   え   考        な一 え        い    な        い 1)食生活と健康について

2)食事準慌の仕事内容と計画について

3)食事の高温方法とゴミの分量や種類との関係について 4)手作り食品と膏油の加工食晶のそれぞれの良さについて 5)自然界の営みの申における、自分の立場について

6)蛇□から取り入れる水と、排水□から流す水との関係について 7)ゴミの種類と捨て方、ゴミ回収の日程について

8)朝食の準備にかかる時間について 9)朝食にかかる雨脚について

10)食事作りの楽しさについて H)食事のマナーについて

12)季節と出盛りの食品の特色について 13)安全な食品の選択について

14)家庭生活における食事の果たす役割について        

15>食事後の仕事分挺について

16)調理方法と水や頂墳側題との関係について

十 一一一 十 …一 十 一一一一 十

十一一一 十一。・・ →ボ曹一一一 十

十・一・一 十 。一一一 十 曹一・一 十

十 一一一 十 一一一 十 一一一 十

十 一一一 十 一一一 十 一一一一 十

・←一・一 十 一一。一 十 一一一一 →一

十 一一一 十 一一一一 十 一一一一 十

十一一 十一一一 十 一一一一 十 十一・・一 ÷・一一一一 十 一・一 十

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十 一一一 十 一一一一 十 一 一一 十

十一一 十一一:十 ・・ 十

6−3 結果と考察

1.食生活に関する興味・関心の全体的傾向

授業前・後の全体の調査結果を図1に示し、男女別の結果を図2に示した。

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